魔法少女


俺のいる世界の地球の日本に魔法少女が現れた。

本当に意味が分からない。


しかも、この世界の魔法関係者が作った変身魔道具ではなく。

異世界の道具で変身しているようだ。


更にこの世界に侵略者も到着している。

ただ、俺の直感スキルと今までの経験上。俺が放置していても問題はない。……と思う。

もちろん、保険はかけておく。


今日本に居る魔法少女が侵略者【ドリーム・ドレイン】とやらに負けた場合は、俺の本来の勇者スキル。【星座の勇者】を使って殲滅しよう。

元の世界では加減を間違えると割と本当に東京都が消し飛ぶから、あまり使いたくないけど。その辺は割り切らないとな。


いざと言う時、避難間に合うかなぁ。シェルターとか作っておくか?

そんなことをぼんやりと考えてながら、俺は今何をしているかと言うと。


「あ~ん、かぷっ、ちゅ~っ」

「美味いか?」

「おいひぃ」


学校が終わり夕飯を作って食べていたら、アンネがアメリアさんとともにやって来た。

アンネが俺の家に来た理由は、俺と夕食を食べたいらしい。


俺は問題ないので、アメリアさんを含めた。三人で夕飯を食べた。


食後のお茶となったのだが。アンネが俺の血を吸いたいと言ってきたので、俺は許可を出した。

何故急に血を吸いたいんだ? とアンネに不思議だったので問いかけると。

疲れたからと言っていた。


どうやら、謎のが多すぎるので魔法少女のことをアンネは調べているようだ。

俺の首筋に噛みついて血を吸うアンネ。


魔法少女の戦闘があった後に残っていた痕跡で、魔法に近いが、魔法とは違う力が発見された。


王族として、見過ごせないのだろう。

日本政府も既にそれが分かっているので、色々と手を打っているようだが。なかなか、魔法少女を補足できないようだ。

女王プロミアの話だとまだ敵の偵察している段階のようだ。


魔法少女側も恐らく、ソレが分かっているから出来るだけ目立たずに行動していると思われる。

と言うのもどうやら、変身アイテムは精霊のような感じらしい。


「リアル魔法少女にも困ったものね」

「何故だ?」

「後始末よ。戦えるみたいだけど。穴をあけたり建物や停電の被害が出るとね」

「ああ、隠蔽作業か」


原則的に魔法関係のことは一般人には知られないように隠蔽作業をすることになっている。

人が多く住む地域にはそういう細工をし易いように色々と仕掛けがある。


例を挙げると一般人のスマホなどが使えなくなる。一般人がその場から自然と離れるように意識を操作するなどだ。

魔法少女の撮影に成功したアンネの侍女はたまたま、本当に運が良かったな。


「どうにか、コンタクトを取れたらいいなって。思っているんだけれど。チラッ、チラッ」

「やらないぞ」


あざとく、俺の方を見ながら、口にチラッ、チラッと言ってくるがやらないぞ。

女王プロミアのことも黙っておく。その方がよさそうだし。直感で。


「ええ、なんで? 報酬はしっかりと出すわよ?」

「報酬の問題ではない。面倒だからだ。それと俺は魔法少女については様子見だ」

「様子見って、気にならない? それに危険な感じがするわよ?」

「だが、俺は様子見だ。理由は直感」


ちょっと拗ねた様子でアンネは俺の血を吸い始めた。


まったく、関東がようやく大人しくなりかけているって言うのに。

俺は心の中で溜息を付いた。








私! 綺羅輝(きら ひかる)! どこにでもいる。普通の女子中学二年生。


って言いたいけど。実際はクラスに一人はいる、根暗な女子中学二年生だ。



私は人見知りで、人と上手く喋れなくて、クラスメイトの陽キャの女の子達がアイドルや恋愛。スイーツの話をしている時も、私はラノベを読むか、スマホを操作しているか。寝たふりをする。


「泣きたい」


学校の帰り道で私は思わず呟いてしまった。

先日、たまたま見てしまったボッチ女子系の日常アニメを見て、心の底から羨ましいと思ってしまった。


ボッチの女の子がちょっとした出来事を切っ掛けに、友達が出来て学校生活が上手くいくお話。


観終わった後にそんなわけあるか! と、私はスマホを床に叩きつけたくなった。


ああ、私に何か特技や才能があればいいのに。


勉強は真ん中より下。運動も真ん中より下。

なーんにもとりえのない私。


身長も低めで身体も貧相。これはクラスメイトの男子達の話を偶然聞いた時に、言われたことだ。


綺羅って貧乳で身体も細っそいからな。


ああ、思い出したら辛くなってきた。


「死にたい」

「ナラ、タベテモイイヨナ」


突然、真後ろから聞こえてきた声に、私は身体が凍り付いたかのように動かなくなった。


そして、両足が突然強い力に引っ張られて、私は道路に身体を叩きつけられた。


「痛っ!?」


何が起こったのか分からなくて、パニックになりながら、私は周囲を見回すと大人の男性くらいの大きさの真っ黒なイソギンチャクがそこには居た。

真っ黒なイソギンチャクの触手にグイっと引っ張られて持ち上げられる私。


「な、なに何なの!?」


突然のことに私はパニックを起こした。

夢でも見ているんじゃないか。これは夢だ! そう思って夢から覚める為に大きな声を出そうとした。

だが、声は出なかった。喉が口が、今はもう完全に動かなくなっていた。



身体が動かない私はそのまま、ゆっくりとイソギンチャクの頭上へ触手でひっぱりあげられた。


そして、視界に映ったのは、無数の細かい牙が乱雑に並ぶ真っ黒なイソギンチャクの大きな口だった。


「コノクニデハ、イタダキマスッテイウンダッタカ?」


どこか、小ばかにするような口調の真っ黒なイソギンチャク。

突然のホラーゲームのようなクリーチャーが現れて私はもう、精神の限界だった。


私の両足から触手が話された。

ゆっくりとスローモーションとなって、私はイソギンチャクの大きな口へと落下する。

大きな声で叫びたかったけど、動かない私の身体。


もう駄目だと思った直後、私は運命の出会いを果たした。


「レインボー・ハンマー!」


可愛らしい叫び声が聞こえた。その直後、真っ黒なイソギンチャクは何かにぶっ飛ばされた。


地面に叩きつけられそうになった私を真っ白なもふもふが受け止めてくれた。



「どうやら、間に合ったようね」

「っ……」

「毒にやられているのね。待ってて直ぐに治療するわ」


真っ白もふもふに驚いていると、身体全身が温かくなる。


これは一体? そう思っていると、身体が動く。

驚きながら、私は自分を受け止めてくれた存在に目を向けると。


「さぁ、これでもう大丈夫そうね。我が主」


私の方を振りながら、見つめてくる乗用車サイズの純白の喋る兎だった。

と言うか、この兎、無駄に可愛らしいボイスね。


さっきから信じられないことが連続で起こったことで、私もなんだか訳が分からなくなってきた、

けど、確かなことは。


「我が主このジェムーを受け取って」


眼の前に現れる七色に輝リンゴサイズのダイヤモンド。


「この世界の人にも使いやすいようにキーワードで操作できるようにしているわ」

「キーワード?」

「ええ、叫んでください。変身! って」


身体を道路に叩きつけられた痛みと目の前に現れたリンゴサイズのダイヤモンドの光が眩しくてかなり辛いと言うこと。

正直、夢なんじゃないかって思っている。


だから、恐らく。初めて私は大声で叫んだ。


「【変身!】」


この日、私は魔法少女になった。

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