封魔宝寿との話し合い
封魔宝寿が俺と話がしたいと言われたので、地下の秘密基地に宝寿を招いた。
話す内容は、俺達の味方をしたが、まだ立場が宙ぶらりんな封魔家のことについてのことだった。
最低限の調度品が置かれた客室のソファに忍者姿の俺は座り、向かい側のソファに座る宝寿と向き合う。
彼女の服装は前は忍者だったが、今ではくノ一っぽい感じに変わっている。
全体的に太腿がチラチラ見えたり、胸元がちょっと見えて居たり、最近のくノ一っぽいデザインの服装だな。
「確認するが、封魔家は本当に俺の下に付きたいと?」
「はい、家臣にしていただきたいでござるよ」
「正直、家臣とは言ってもな」
家臣にするメリットはない。
そもそも、召喚獣。使い魔。そう言ったモノだけでも、過剰すぎる戦力を保有しているのだ。
忍びの一族が仲間になってもな。
「忍者殿のお力は分かっているでござる。封印されていた妖魔との戦い。日本を統一するだけのお力があると確信しました」
「言っておくが、天下統一なんて時代遅れなことはしないからな」
「もちろんでござるよ。ただ、力を魅せられれば付いていきたいと思うのが人でござる。それに過去のことを考慮すると一族を守る為にも忍者殿の家臣になるのが一番でござる」
「俺を壁にするつもりか?」
魔力で宝寿の身体全身を軽くしめげるように圧力をかけると慌てて宝寿はこう言った。
「め、滅相もないでござるよ。我等封魔家は全力で忍者殿の為に働くでござる」
「働くとは言ってもな」
「御屋形様の為に、既に関西の情報も仕入れているでござる」
「御屋形様って言うな。だが、それは少し興味がある。が、その気になれば今から関西のふざけた連中のところに殴り込みに行けばいいだけだぞ?」
情報を集めながら、一つ一つ潰していけばいい。ま、やらないけれど。
「そ、そのような力技、後々面倒なことになるでござるかと」
「分かっている。だから、対魔省庁や対魔師局が主体となって動いてもらっている」
「そ、某が言うのもなんでござるが。封魔家は忍びとしてとても優秀でござるよ」
「まあ、優秀なのは分かっているが、何時裏切るか分からないしな」
「う、裏切らないでござるよ。その為の用意もしたでござるよ」
「用意?」
俺が聞くと、予め用意していたのだろう。懐から一枚の巻物を取り出した。
「これでござる。この契約書はまだ白紙でござる。ここに風魔一族が忍者殿に一生涯忠誠を誓うと」
「いや、それは使わなくていい」
「な、何故でござるか?」
「こっちを使う」
正直、その契約書はこの世界では強い部類だろうが。契約を解除できなくないので不安がある。
なので俺が取り出したのは、仲間の勇者が作った契約書で、宝寿が用意した契約書よりも遥かに強制力が強い契約書だ。
「そ、その契約書の魔力量! そ、某でも危険だと分かるでござるな」
「嫌ならいいぞ」
「めっ、滅相もないでござるよ!」
「まあ、契約内容は封魔一族は俺に一生涯の忠誠を誓う。他には」
幾つか項目を書き加えて、俺は宝寿に契約書を手渡す。
「そこまで雁字搦めにするものではないってのは分かっているな」
「だ、大丈夫でござるよ。もっと凄い内容になるかと思っていたでござるが」
「万が一の時は根切にすればいいだけだし」
「即答は怖いでござるよ!!」
「うるさい。で、本当にいいのか?」
「は、はい、でござるよ。御当主からは全権を貰っているでござる」
実力があるとはいえ、未成年の少女に全権を渡すってかなりのことだな。
余程、封魔の家は追い詰めれているってことだな。
そう思っていると、どこから取り出したのか、宝寿は細めの筆を取り出して契約書に自分の名前を書いた。
「これからよろしくお願いするでござるよ。御屋形様」
「あっさりとサインを書いたな」
「どの道、このままでは封魔家はお終いでござるからな。あのアルケニーというドローン。あれの六本腕と背中に大量の弾丸を背負ったガンバータイプでござったか? 凶悪な威力のマシンガン六丁の豪雨のような射撃、数を揃えて襲ってくるのは悪夢でござるよ」
宝他は他にも「某達にとってヤバい装備が沢山あるでござるな」と溜息を付いた。
「ま、色々と分かった。それで、他にも話すことがあるんじゃないか?」
「は、はいでござる。実は先日の贈り物以外に封魔家から忍者殿への贈り物があるでござるよ」
「それは?」
「そ、某でござる。その変な言葉遣いではござるが。こう見えても、結構某は着やせするタイプでーー」
少しは予想していた、記憶は虫食いだが。あっちの世界で家を守る為に娘を送り付けてくるのは割と多い。
「妾みたいな立場が御望みか?」
「側室が無理ならば。忍になった時から、そう言うことも覚悟していたでござる。でも、御屋形様のような人物なら、大歓迎でござるよ」
俺は内心、深く溜息を付いた。いや、可愛い女の子が自分のモノ。妾になるのは嬉しいよ。男として。
この話は断ってもいいが。断ったら、追い詰められた封魔家は、対魔師局や縁眼さん達と戦うことになる。
俺がサクッと鎮圧すればいいが、それもそれで後々面倒なことになるだろう。
勇者の魔法が掛かった超強力な契約書で、縛り付けて監視した方がいいな。
「ま、俺の妾になるかどうかは、また別の話だな」
「そ、それはどういう?」
俺は宝寿の背後に視線を送る。
俺のその仕草に何かを感じ取った宝寿は「えっ?!」と驚く。
そして、直ぐに「まさか?!」と冷や汗をかきはじめる。
「俺の婚約者達とじっくり話し合って、許可を取ってからにしてくれ」
ポンッ。と、誰も居ない筈の背後から宝寿の肩は叩かれた。かつて無いほどに顔が強張る宝寿。
「はい、忍者様。これからじっくりと……、アンネ様も交えてお話をしたいと思います」
「……そうね。私も彼女と話がしたいわ」
突然、誰も居ない場所から現れたアンネと縁眼さん。
理由は単純な話で、何となく宝寿が俺のところへ送りつけられるだろうな。と思って二人に話したら「隠れて様子を見させてもらえませんか?」「ええ、私も同じ意見よ」と言われたので、俺がOKを出したのだ。
「忍の高い技術を持つ宝寿家が忍者様のお力になるのはとても心強いですわ。でも、妾のお話についてはじっくりと」
「ええ、じっくりと納得できるまで話し合いましょうね」
俺でも引くくらいの冷たくて鋭い魔力を放出するアンネと縁眼さんに、本来なら戦闘力では後れを取らない筈の宝寿が怯えている。
やはり、不意打ちの二対一はきつかったか。
「それじゃあ、俺は一度退出するな。話し合いが終わったら教えてくれ」
「はい」
「分かったわ」
「え、あ、あのちょっ」
俺は巻き込まれるのが嫌なので、素早く客室から出た。
しっかりと防音がされているので、中でどんなやり取りがされているかは分からないが。
「ま、頑張れよ」
俺は小さなエールを宝寿におくった。
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