第62話


「今、対魔師局と対魔省庁に提供したドローンは従来の一般でも使われているプロペラを使った物。偵察を目的とした中型犬サイズ。主力の半人型のアルケニー」


格納庫の一角に作った休憩スペースの椅子にアンネ達はそれぞれ座り俺の話に耳を傾ける。


「完全な人型ではなく多脚で半人型なのは妖魔の頑丈さを考慮すると重武装でないと妖魔の防御力を越えられない場合があると判断してだな。二足歩行だと重量と機動力がな。サイズは大きくなるが、自分を守る結界も強力に出来るし、武装も重いものを持てる」

「そうね、弱い妖魔なら、拳銃でも倒せるモノもいるけれど。基本的に魔力を使える存在には魔力を使わないとダメージを与えるのは難しいわ」


肉体が無い幽霊のような場合だと魔力が無いと物理攻撃は無効化される。


アルケニーには実体が無い妖魔にも効果がある遠距離武器と近接武器が装備されている。


「で、今回アンネからの頼みで作ったのが完全な人型とドローンを輸送と指揮する為の専用の車両だ」



運用するドローンを運び、ドローンを操縦する者も乗り込む車両。


中型のトレーラーのサイズで、装備などを含めて約八体の人型ドローンを運ぶことが出来る。


人型ドローンは身体を折りたたむことが出来るので、意外とコンパクトに格納できる。

スペースが、かさ張るのは武装だろうな。


それと運転手、ドローン操縦者。他二名の合計四名が乗ることが出来る。


「相変わらず、素人目でも強力な結界が張れそうなトレーラーね」

「ああ、分かるのか?」

「小夜子ほどではないけれど、眼に魔力を集中させればね」

「ふぅむ。これは……」


アンネ達三人は、リモートで近くに移動させたトレーラーを見て唸る。


アンネの私兵として運用されることが前提なので、このトレーラーとドローンの性能はちょっと奮発した。


「あ、それと忍者型のドローンの武装は忍者っぽくて、ロマン装備が多いが本当にいいのか?」

「ええ、もちろんよ」


忍者ドローンはアンネの願いで、手裏剣や忍者刀などを装備されている。


一応、アルケニーが使っている銃火器も使用できるが。


アンネはあまり実戦で使う気が無いみたいだな。


装備の面でアルケニーに後れを取る可能性が高いので、忍者型のドローンは基本性能を高めにしてある。


「それと、ドローン操縦者のドローン操作だが。アルケニーとは違って、完全な思考操作型にしたぞ」

「あら、本当に? それは嬉しいわね」


アルケニーは人がコントローラーで動かしている。


複数動かす時は補助的な思考操作型のヘッドギアを装着していた。


だが、基本的に補助的なモノ。連携には難があった。


それを改善したのが完全な思考操作型だ。SF世界の勇者達の技術を応用して、魔力で動かせるようにしている。


「この忍者型ドローンは、どれくらい強いのだ?」

「うーん、アルケニーより速度などは三割ほど高いかな? ただ、アルケニーは敵拠点の制圧などを目的としていて。忍者型は護衛や索敵だからな」

「そうですか」


アレックス先生の疑問に答えながら、アンネに問いかける。


「もう少しで、完成だが。引き渡しは何時にする?」

「出来たらすぐに」

「分かった」


こうして、アンネの護衛に忍者型のドローンが配備された。


最近、対魔省庁などと距離が近かった俺、そんな時にイタリアの吸血鬼の王族のアンネが忍者型のドローンを護衛に配備。


まあ、俺の知らないところで、政治的なバチバチがそれなりに行われていたらしいね。


縁眼さんとアンネがたまーにバチバチしてて怖かったよ。





「そういえば、アンネの方は最近調子はどうだった?」

「調子?」

「ああ、夏休みが終わってから、学校がまた始まって」

「そうね。問題なく過ごせているわ。あの学校は留学生を定期的に受け入れているから、武の方はどうなの? バタバタしているけど」

「俺か? 今回の一件以外は特に変わったことは無いな。文化祭とか体育祭とか」

「そうそう、日本だとそう言うイベントがあるから良いわよね」


海外にも似たようなものはあるが、ちょっと違うみたいなんだよな。

それに全くない国もあるし。


「体育祭はまあ、外来の参加無理だろうが。アンネの学校の文化祭は行ってみてみたいな」

「私もよ。せっかくの秋のイベントって感じがするし」

「そうだな。魔法で姿を変えればアンネも俺の学校に来れるだろうし」


うん、体育祭に文化祭か。

邪神と戦った世界でも秋頃はイベントがあったな。

主なイベントは収穫祭だ。

大きな国だと鍛冶などの工芸、絵画や音楽などの芸術系の大会もあったな。


世界ごとに時間の進み方は違う。

あちらの世界は多分、数十年。いや、数百年時間が進んでいるかもしれない。


「これから、まだまだ楽しいことがあるんだな」

「? ええ、そうよ。どうしたの、武」

「いや、何でもない」


それからしばらく、俺達は色々と雑談をした。

最近はバタついていたから、穏やかな良い時間を過ごすことが出来た。









「ところで、武私気になったんだけど。あの格納庫の端の方にある無駄に大きいトレーラーとその上にある物体を覆っている灰色の巨大なシートに包まれているモノなんだけれど」

「ああ、アレか?」

「私の気のせいかしら、シートの凹凸から巨大ロボットの脚に見えるんだけれど……」

「ああ、あれか。今回デカい妖魔が出てきたからな、念のために新しく作っているんだよ」


俺がそう言うとアンネは遠い目で何かを悟ったように、「楽しみにしているわ」と、ちょっと投げやりに言った。


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