第34話
「おいおい、ふざけんじゃねえぞ」
全てではないが倉庫内には自分達が集めた手練れ以上の傭兵達が揃っていた。
過去には一緒に仕事をしたこともあれば、敵対したこともある傭兵もいた。
奴等の実力は知っている。だからこそ、信じられないと全身ラバーのような材質のボディスーツの傭兵、ロッズは叫ぶ。
「こちらの牽制攻撃も本当に牽制でしかなかったですね」
無頭の蟻のゴーレム使い、スミスが険しい表情で淑女妖精、ダンティと名乗った男を見据える。
自分達が集めた傭兵達を蹴散らすダンティを彼等も黙ってみていたわけではない。
「せっかく集めた傭兵達が全滅ですか」
銀の盃の魔法使いのバルドがゴミを見る眼でぬいぐるみたちに運ばれていく傭兵達を見送った。
「ダンティですか、やはり聞いたことのない名前だね」
古い羊皮紙の本を開いたり、閉じたりしながら、メガネをかけた男は隣に立っているライへ視線を送る。
このまま、戦うか? と彼は問いかけた。
この中で一番目の前の存在が強いと分かっていたのはこの時点では彼だったが、この世界での常識的な範囲内でダンティの強さを判別してしまったのが彼の失敗だった。
「強いと思うけれど、一人も殺さないとか優しいね」
「ええ、慈悲の心は必要と思っているわ」
小柄な少年のような姿をしているが長年傭兵として戦ってきた男は目の前で涼しい顔をしているダンティに不敵な笑みを浮かべる。
「そう、ならさ」
ライの両腕は一気に丸太のように膨らんで、黄金の毛で覆われ、両手には鉄ですら切り裂けそうな鋭い爪が現れる。
「僕達の為に死んでくれないかな?」
その言葉を合図に、傭兵達の中心人物の男達は本格的にダンティとアーシャへ攻撃を仕掛けた。
男達も傭兵達がやられるのを黙ってみていたわけではない。
ダンティへの牽制攻撃とダンティの力量の把握。
「出し惜しみするなよ!」
一応、同盟を組んでいる男達へ、金色の狼男と姿を変えたライがダンティに突貫しようとしたところで、一発の銃声が倉庫内に鳴り響いた。
「あぶねぇ、ずっと見ているだけじゃなかったの? 皆殺しのアーシャ」
「いや、流石にダンティばかりに働かせるのはどうかと思ってさ」
「アーシャさん、別にわたくしにすべてを任せてくれてもいいのよ?」
「そう言うわけにはいかないさ」
過去に殺しきれなかった犯罪者達を睨みながら、アーシャはダンティへと近づいていく。
「ダンティ、アンタが強いのは分かっている。だが、そこに居る連中は今までの傭兵とは違うぞ」
「あら、具体的には?」
ダンティがアーシャに問いかけるとダンティ達が開けた穴とは反対側から大きな音が鳴り響いた。
「少し離れたところに隠していたのでね。到着が遅れたが、私の軍勢がようやく来たよ」
「はは、自己紹介をしたらどうだ? ネクロフィリア」
「私は死体に性的興奮は感じませんよ? 美しいと思うことがあるだけですので」
破壊された壁から這い出てきたのは衣類をなにも身に着けていないマネキンのような生きた肉人形の群れだった。
「相変わらず、狂っているな。スミス」
ダンティ達から視線を外さないが、ロッズは人間の死体を素材にしたゴーレム使いのスミスを嘲笑う。
「母親の子宮に入るために身体全身をゴムのようにした男に言われたくはありませんね」
「あ? ママの子宮を馬鹿にするのか?」
二人のやり取りを見てダンティが困った表情を浮かべる。
流石に目の間の二人の言葉には色々と困ったようだ。
「とりあえず、こいつらは全員変態だ」
「あの二人と一緒にしないでくれ」
クリスの言葉に同意するように頷くバルドとライ。
「ま、そろそろ再開しようか。こっちもその女の為に新しい切り札を持ってきたんだからな」
「オッサンはかなり強いけどさ。これで終わりだと思うなよ」
ライの言葉と同時に動いたのはゴーレム使いのスミスのゴーレムの軍勢。
その中でもスピードに特化した十体の細身のゴーレムは弾丸以上の速度でダンティへ襲い掛かった。
マネキンのようにのっぺりとした顔のゴーレム十体の手にはコンバットナイフが握られている。
一般人なら次の瞬間には細切れにされていただろう。
ダンティはゴーレムの動きを完全に見切っていた。
だが、同時にダンティの心の奥でゴーレムを破壊することを躊躇した。
ダンティは理解してしまったのだ。ゴーレムの素材は若い人間の肉だということに。
ゴーレムを破壊することは死体の損壊。と武の使い魔の中でも心優しいダンティは破壊することに感じた。
「安らかな眠りを」
ダンティが躊躇したのは極々僅か。本来なら致命的な隙になる時間。
けれど、ダンティ程の強者であるから問題はなかった。
覚悟を決め、ダンティがゴーレムを破壊しようとした動く瞬間。
ダンティはほんの微かな風の匂いに気づき、ゴーレムを破壊することを止めた。
過去に一度、似たような経験をしたからだ。
――ヒュッ! という風を切る音が瞬間的に連続で十回、大型倉庫内に鳴り響いた。
その音が終わると十体のマネキンのような肉のゴーレムは音も無くバラバラになり床へと散らばった。
水分を含む生々しい音にダンティとアーシャは内心眉を顰める。
十体のゴーレムの動きよりも遥かに高速で動く存在をその場に居た全員が認識していた。
パカリッと言う音馬の蹄の音がダンティの右側から鳴り、ダンティはそちらの方へ顔を向ける。
そこに佇んでいたのは騎士だった。
芸術品のような馬鎧を装着した馬に乗り。
使い込まれた鈍色の鎧と新緑のマントを身に着け、サーベルを手にした騎士がそこには居た。
「戦への横槍。大変失礼いたします」
「貴方様は?」
「我が名はレイド。妖精騎士レイドと申します。勝手ながら貴方様の剣と盾としてこの場に馳せ参じました」
突然現れた謎の騎士に全員が動きを止める。
「妖精騎士レイドって、あれか? 第二次世界大戦で連合軍の戦車を三十台以上を暴風で上空に吹き飛ばしたって」
クリスの言葉にアーシャが驚く。
「あの疾風のレイドか?!」
「あら有名なの?」
ダンティの言葉に全員が無言の肯定をする。特にライ達傭兵達は警戒心を一気に引き上げる。
「騎士レイド」
「はっ」
「何故?」
「……亡き主君の言葉を思い出し、誠に勝手ながら馳せ参じました」
ダンティは何故妖精騎士レイドが自分を助けてくれたのかは分からない。
けれど、何か深い事情があるのだろう。
「分かりました。好きになさい。けれど、死ぬことは許しません」
「はっ!」
ダンティの言葉にレイドは歓喜の声を上げた。
その声に「ふざけるな!」と怒りの声を上げたのはゴーレム使いのスミスだった。
「私の作品をおお!!」
ゴーレムの軍勢がレイドへと襲い掛かる。
そのスミスの動きに合わせて、他の傭兵。ダンティとアーシャも動こうとした瞬間だった。
「レイド! 一人で先走らないでくれる?!」
女子の声がする前に、強い魔力を感じたクリスは、手にしていた羊皮紙の本を開いて魔法を発動させる。
同時に本のページが風化して塵に変わり、レイドへ襲い掛かっていたゴーレムの群れを薙ぎ払うように発射された砲弾のごとき巨大な水弾を破壊する。
これ以上、戦力の消費を避けたかったクリスだが、新しく現れた存在に舌打ちをした。
「あら、貴方達は喫茶店の」
ダンティは近づいてきていたレイド達四人にはちゃんと気づいてはいた。
でも、まったく気にしていなかった。理由は敵意が無いからだ。
だからこそ、助太刀と言われてダンティは理由は分からないが善意を持って助けに来てくれた者達への態度ではなかったと己を恥じた。
「セシリーと申します。ダンティ様」
「アースと申します。勝手ながら」
「ルビアと申します。我々もお手伝いをさせていただきます」
現れた三人の妖精族も全員がそれぞれが鎧を身に着けていた。
レイドとの違いは妖精馬に乗っていないことだろう。
「わたくし、貴方達に助けられるようなことをしたかしら?」
「高貴なお方をお助けするのは騎士の誉れ故」
レイドがそう言うと他の三人の妖精騎士も頷く。
ダンティが予想外のことに困惑していると
「おい、どういうことだよ。妖精騎士が四人も来るなんて聞いてねぇぞ」
「わたくしも予想をしていなかったわね」
その言葉は自分の味方。ライ達へ向けてだったがダンティが答えた。
何より、高貴なお方。という言葉にダンティは居心地が悪くなってしまう。
「まあ、良いわ。手伝ってくれるなら歓迎するけれど。決して大怪我。ましてや死んだりしないように」
ダンティの言葉に「「「「ははっ!」」」」という掛け声と発する四人の妖精騎士。
数の優位があっさりなくなり、強力な妖精騎士が参戦してライ達とアーシャは困惑しながらも改めて臨戦態勢に入った。
「その金色の狼男はわたくしが倒すわ。貴方達は他のをお願い」
「承知!」
一番危険だと判断したライへ、ダンティは両手でハートマークを作りこう叫んだ。
「愛をお届け!」
極太のハート型の魔力のビームのような砲撃が発射されたのを合図に激闘が始まった。
☆
え、どういうこと?
上空で大型倉庫で戦っているダンティを観察していたら、なんか妖精騎士を名乗る妖精が四人登場した。
しかも全員かなり強い。
少なくてもアーシャさんを狙ってきたあそこに居る傭兵達よりも一回りは強い。
「妖精騎士レイドって、突風とか暴風って呼ばれている騎士よね?」
「はい、特徴は一致していますね」
アンネと合流したアンネの専属侍女のアメリアさんが苦い顔をしながら、屋根を吹き飛ばされた大型倉庫での戦いを眺めながら苦い顔をしていた。
「知っているのか?」
「噂に聞いただけよ」
俺の問いにアンネは答えてくれた。
第二次世界大戦で連合軍がドイツを攻撃しようとした迂回部隊が彼等の故郷に踏み入り、結果的に森を焼いたらしい。
当時のお偉いさんが妖精達のことをよく思っておらず、そのまま妖精王と妖精騎士達と戦うことを選び最終的には連合軍側が勝ったのだが。
アメリカに住んでいた妖精や精霊達がアメリカから逃げ出し、自然災害が増えたり、雨が減って降水量の減少や農作物の不作が続いたり。
国民に疫病が流行ったり、故郷を焼いたお偉いさんの一族に強力な呪いがかけられたりと散々な目にあったようだ。
「昔、お父様が妖精騎士レイドをスカウトしたのだけれど、拒否されてね。そのまま決闘して、引き分けで帰ってきたわ」
「引き分け? アンネのお父さんって吸血鬼の王だよな?」
「ええ、もちろんお父様の力を考えれば妖精騎士レイドでも引き分けと言うのは多分お父様が引き分けにしたのでしょうけど」
当時を思い出すかのようにアンネは言った。
実際に会ったことはないが、吸血鬼の王と呼ばれるくらいだ。基本的なステータスで言えばドラゴン以上だろう。
切り札の一つや二つは当然あるだろう。
「お父様はドラゴンを飼育するのは大変だから諦めたと言っていたわ」
「ドラゴン並みね」
「実力者だと思うわ。それもあそこにいる妖精騎士の四人は連合軍に大きな被害を出しているから」
そんな実績のある妖精騎士が何故ダンティの為に助太刀を?
うーん、後でしっかりと話を聞かないと絶対面倒なことになりそうだなぁ。
「武、なんでダンティにあの四人が助太刀にやってきたのか分かるかしら?」
「……あ、もしかして?」
「え、心当たりがあるの?
「心当たりはあるにはある」
「それは?」
まあ、別に隠す必要もないかなぁ。多分、あの四人の妖精騎士が急にダンティへ助太刀しにきた理由を考えるならそれくらいしかないわけだし。
「あー、実はダンティは淑女妖精で」
「信じられないけれど、知っているから。それで?」
「実は妖精王になる準備が出来ているんだよ」
「「…………」」
アンネとアメリアさんはどこか悟ったような眼をしながらゆっくりと深呼吸をした。
「ダンティって武が使い魔として作った妖精のよね?」
「ああ、そうだ」
「武様、ダンティ様を作ったのは何時の頃ですか?」
「九年か八年前だな」
うろ覚えだが、それくらいの筈だ。
勇者として召喚されて、一年くらいは自分の強さを実感出来なくて、ようやく力を付けて自身が付き始めた時に使い魔を作ったはずだ。
「妖精王ってそんな簡単になれるモノだっけ?」
「いえ、武様のお力が異常なのです」
「え、酷くね、二人とも」
「人間が作った使い魔の妖精が十年に以内に妖精王になれるほどの力を手に入れたなんて公表してごらんなさい。絶対に誰も信じないわよ!」
アンネの力強い言葉に俺は「ああ、そうなのか」と納得した。
――ズドンッ!
「おっ、派手にやっているな」
白くてキラキラとした魔力が大型倉庫の周辺にまき散らされる。
そこに淡い緑、青、緑、琥珀色の魔力の光も花火のように光っては消えていく。
うーん、綺麗だけれど。どうしてこうなった?
☆
ダンティの魔力砲撃の威力は掠っただけでも大ダメージを受けると確信できるほどの威力だった。
アーシャを狙う傭兵のライ達は素早く散開する。どうにかしてダンティを倒したい。
本来の目的はアーシャを殺すことだったが、眼の前にいる理不尽な存在は自分達が全員で協力をした上で、切り札を使わないと勝てないと理解していたが、それがかなり難しいことも理解していた。
ダンティは意図的に拡散魔力砲撃で傭兵のライ達の連携が取れないように邪魔をする。
そこにそれぞれの傭兵達の前に立ちはだかるのがダンティに助太刀に来た妖精騎士のレイド達だった。
ちなみにアーシャは不規則に発射された拡散魔力砲に驚いて出遅れて、ダンティが破壊した倉庫の壁の穴の入り口で困った表情で立ち尽くしていた。
☆
「御老人が私の相手か?」
「【大地よ、そのモノを捕まえよ】」
四人の妖精騎士の中で一番重厚で装飾も少なく実用性を追求したデザインの鎧を身に着けたアースは【銀の盃】に所属している魔術師バルドの言葉を無視して、即座に地面から大量のコンクリート製の手がまるでゴムのように高速で伸びてバルドに襲い掛かった。
「いきなりとは! もう少し話をしてからでもいいのでは?」
「不要だ。時間稼ぎに付き合うつもりはない」
バルドは自分に襲い掛かってくるコンクリート製の腕を火属性の魔力爆発で吹き飛ばす。
爆発、その煙の中から大量の手は何事もなかったかのようにバルドに襲い掛かる。
「硬い!」
「私の土の魔法は簡単には破壊できないぞ」
「それなら、これはどうだ?」
バルドは手にしていた銀の盃の中に貯めておいた魔力を使い、アースの魔法で作られた無数のコンクリート製の腕をまとめて吹き飛ばした。
「やはり聖杯を模したモノか」
「ウチの組織が作った逸品だ。あの元シスターに使うから、あまり消費したくはないが。さっさと終わらせるぞ」
「いや、もう終わった」
「なに? ――っ?! 腹が!!」
「既に我が魔力を帯びた砂はお前の腹の中に入った。お喋りが過ぎたな」
複数の方向からコンクリート製の手による攻撃。注意が複数に向かせることで微細な砂の粒子をバルドの口や鼻から体内に侵入させる。
「ダンティ様はあまり人が死ぬことを望んでいない御様子。ダンティ様に感謝するがいい」
「ジジイ!! ――ゴフッ!!」
まるで熟した果物が地面に叩きつけられたような音がバルドの腹部で鳴り、バルドはそのまま地面に倒れ込んだ。
「おや、貴方達は」
バルドが倒れると直ぐに子供くらいの大きなぬいぐるみがアースの隣にやってくる。
そして、手を振ってから倒れているバルドを回収していった。
「あのぬいぐるみ。とんでもない強さだ」
アースは金色の狼男のライと戦うダンティに視線を向け、一礼をした。
ダンティはそれに気づき、待機するようにと念話を送ってきた。
アースはその指示に従い、ダンティが破壊した壁の近くまで移動するのだった。
☆
「バルドの野郎。口ほどにもない」
そう呟いたのは高速で倉庫内を跳ねまわっているのは傭兵のロッズだった。
彼の夢は母の胎内に帰ること。その為に魔法の才能を全て注ぎ込んでいる。
その夢を破壊したのがアーシャだった。
彼はアーシャを殺して、ロッズの母親の身体の足りない部分を補う素材にしようと今回の襲撃に参加した。
「跳ね回っているだけの貴方がそんなことを言うのは可笑しいですね」
「ハッ、今すぐに切り刻んでやるよ!」
弾丸の速度の攻撃に対応できる能力。
それは魔法を使って戦う者達にとっていつかは必ず習得しなければならない技能。
大半の者が習得できない技能でもある。そして習得した者だけが一流と呼ばれる。
一流の魔法使いの戦いは高速戦闘になることが多い。
歴史を紐解けば、地球上で生身の人間では目に追えないような戦いも過去に何度も行われている。
「……やはり、気色悪い人ですね」
ロッズは目の前にいる妖精騎士を観察した。ルビアは赤い肌の美女だ。
身に着けている鎧も古くからあるデザインの鎧ではなく。日本のゲームやアニメに出てきそうなへそ出しの軽鎧だった。
「いいねぇ。その肌。その肉、その腹ぁっ!!」
切り刻んでママの素材に!! ロッズは倉庫内を跳ねまわりながらルビアに突撃した。
そんなロッズをルビアは武器を抜かずに両腕を広げて迎え入れた。
「正気か!?」
無防備すぎる行動に驚愕するロッズ。
そんなロッズにルビアは獰猛に笑い、こう告げた。
「相性が良いんですよ。私達」
ロッズとルビアがぶつかり合う衝撃。ロッズのナイフはルビアの腹部に刺さっている。
だが、血は流れていない。
「――っ、てめぇ! 肉体が」
「ええ、一見すると肉体がある妖精に見えますが。私実は実体のない妖精なんです」
すっとロッズの肉体はルビアの体内にめり込む。
「実体がないのが分かると皆さんは、私を精霊と勘違いされるんですけれど、私は妖精ですよ」
「くそっ! 放せ!!」
「炎の妖精なんで、ゴムっぽい貴方を燃やすには相性は抜群ですよね」
もがくロッズを無視して、ルビアは躊躇なく身体全身の熱を一気に上昇させる。
ロッズは自分がこれからどうなるのか理解しロッズは叫んだ。
「汚い叫びですね」
ルビアはロッズの頭を自分の身体に押し込み体内で燃やしながら拘束すると、ダンティに深く一礼をしアーシャとアースが居る破壊された壁の穴の所へと歩き出した。
☆
「あの傭兵二人の敗因は経験と相性、それと戦う相手の情報を持っていなかったことだな」
ま、アーシャさんは一匹オオカミで、いきなり強者が助太刀に来ること自体が予想外だっただろう。
俺の言葉に妖精騎士アースと妖精騎士のルビアの戦いを見てドン引きしていたアンネとアメリアさんが頷く。
「武様は妖精騎士二人の攻撃を防げますか?」
「妖精騎士アースの敵の体内に魔力を含ませた微細な砂を取り込ませて爆発させる攻撃は、魔力による身体能力向上が得意ではないあの銀の盃を持つ魔法使いだからこそ効果的だった。俺に同じことをしても意味ないかな」
魔力強化をしていない状態でもパッシブスキルの身体能力向上と強化。更に素のステータスが高いから、仮に体内で高威力の小型爆弾が爆発してもノーダメージだ。
そもそも、状態異常無効化スキルで無効化するかな?
「あのルビアっていう妖精騎士は?」
「仮に体内に取り込まれても、内側から力づくで吹き飛ばすかな」
「怖いわね」
「それが一番手っ取り早い。ロッズと言ったか? あの傭兵、物理攻撃や物理防御はかなり高いぞ。それに身に着けているスーツも魔法防御がかなり高い装備品。良く考えていると思うが、今回は相性悪かったな」
物理攻撃が効きにくい相手に物理攻撃をするつもりで突撃したんだ。
あの傭兵が特殊な眼や相手を見る為の道具でもあれば不用意に近寄らなかっただろうけど。
「実力の半分も出せずに倒されたな」
実力者同士の戦いって、意外とアッサリ終わるんだよね。
俺は残りの二人の妖精騎士とダンティへ目を向けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます