第29話

・登場キャラクター


・小宮善次郎&小宮富子


縁眼家の遠縁の資産家の老夫婦。


過去に魔法犯罪者の被害にあったことがあり、その影響で被害者の支援などを行っている。


武も感心するほどの善人。


武こと忍者のことは噂程度しか知らず、魔法には殆ど関わっていない。


過去にも複数の養子を育てたことがあり、シャナも娘として愛情を注いでいる。


・シャナ


アメリカで活動していた反社会的魔法犯罪組織【光の鳥】の元生物兵器。


戦闘力はドラゴンをも倒すことが出来るほどだった。


元人間で普通に生物兵器として活動すると寿命が三年ほどだったが、武のチートな錬金術スキルなどの力で人間と変わらない身体能力と寿命となった。


実年齢は肉体が変質し過ぎでおおよそ一桁としか分からなかった。


身長は百八十センチ。


現在の性格は天真爛漫で元気に暮らしている。能登シャナと名付けたが。小宮夫婦の養子となったので、苗字を小宮に代わっている。


・イオン・フロキス


父親のディスマス・フロキスの仕事で日本に来たプラチナブロンドの美少女。


日本語が上手く喋ることが出来ず、小学校のクラスメイト達と仲良くできずに悩んでいたところ麻山が手助けした。


麻山を姉のように慕っている。性格はやや控えめだったが、今は前よりも積極的に人と話すことができるようになった。


ミノタウロスの復活に居合わせ、ミノタウロスが武にボコボコにされているのを見て可哀そうになり、武に許してあげてほしいと頼む。


ミノタウロスはイオンに恩を感じており、現在守護獣として専用のぬいぐるみに封印され、イオンを守護している。


・ミノ(ミノタウロス)


アリアドネの糸に魂を憑りつかせて、現代まで復活のチャンスを伺っていた神話時代の怪物。


神話時代の英雄並みの力を持つ武には敬意を持っている。


殺されるところをイオンに助けられたため、イオンには恩義を感じ、勝者の武の提案もあり守護獣としての仕事を真面目にしている。今は守護獣生活を満喫している。


・麻山美波


ミノタウロスの復活に居合わせて魔法の存在を知る。


武は麻山の今後の安全のことも考えて、記憶を消すことも考えたが、麻山の強い要望により記憶を消すことは止めた。


イオンと共に、魔法についての勉強も始める。祖父母が亡くなり水泳部も辞めて、目標が無くなったところでイオンと自身の護衛の使い魔のスキュラ(クトゥルー)を生み出し、武と一緒に新しい道を歩み始めた。



スー(クトゥルー)


本来なら武の世界に存在しない筈の創作の存在。


概念として存在していたところに、別世界のクトゥルーの身体の一部が素材として使われた神器級の吸魔の杖を使用したことにより、武の世界でクトゥルーの存在が産み出されるきっかけとなった。


武の膨大な魔力と高位の素材アイテム、麻山の強い使い魔の誕生を願う心が奇跡的に組み合わさった結果、魂が誕生し使い魔としての肉体を手に入れた。


創作物の人類に敵対的なクトゥルーとは違い。武と麻山の影響を受けている。


神の力は持っていないが、クトゥルーはクトゥルー。持っている化物クラスの力は本物。


普段は姿を消して、ミノのように武が作ったデフォルメされたイカのぬいぐるみに入って宙を浮いている。


ちなみに、創作物でクトゥルーが眠っているとか、封印されているとされている海底都市のルルイエは現在行方不明。


クトゥルー曰く「多分世界の海底のどこかに沈んでいる」とのこと。





☆避暑地へ



夏の暑い時期に避暑地へ行くのは金持ちだけの特権。だと思っていたのだけれど。


「日差しは暑いけど、山に囲まれていい感じに風も吹き抜けるからかなり涼しいな」

「はい、涼川は名前の通り涼しい場所ですよ」


縁眼家の黒塗り高級車から降り、俺がそう言うと改めて縁眼さんがこの土地のことを教えてくれる。

もう一台の黒塗りの高級車から麻山、イオンちゃんとミノも降りてきた。


「標高も高すぎず、低すぎず。なだらかなところも多くて、整備もしっかりされています」

「そうか。それは楽しみだな」


小宮夫妻の所有する小さめの屋敷の駐車場には小宮夫妻と前よりも肉付きが良くなったシャナが此方へやってきた。

何度も俺に駆け寄りそうなシャナだったが、小宮夫人がしっかりと手を握っていたので、駆け寄りそうになるたびに自制していた。

小宮夫人の淑女教育は実を結んでいるようだな。

強引に走ったら小宮夫人がコケてしまうから、シャナも小宮夫人をしっかりと気遣っている。うん、人を思いやれる心が芽生えている。良かった。


それと小宮夫妻の後ろにはアンネの配下の侍女二人が控えている。何かあれば直ぐにフォロー出来る位置だな。

アンネも良い人材を派遣してくしてくれた。


「ようこそ、御出で下さいました。皆様方」

「お久し振りです、善次郎おじ様。富子おば様」


小宮善次郎さんへ、縁眼さんがそう返事をして。俺も「お久し振りです」と挨拶をする。

麻山とイオンちゃんも「よろしくお願いします」と頭を下げている。


「はい、初めてのお嬢様方もよろしくね」

「立ち話もなんです。こちらへどうぞ」


小宮富子さんと小宮善次郎さんにそう言われて、俺達は小宮夫妻の所有する屋敷へと移動した。


それから、客室へ移動して、ソファに座ると全員が簡単な自己紹介を改めて行った。


シャナは真面目な話が終わると直ぐに俺に飛びついてきて、小宮富子さん。夫人に叱られていた。


それから、直ぐにイオンともお喋りをし始め、姿を現したぬいぐるみに入っていたミノとスーにも話しかけていた。


ぬいぐるみが宙に浮いている光景に小宮夫妻はちょっと驚いていたが、事前に話をしていたので。直ぐに気を取り直していた。


俺と縁眼さんはちょっと真面目な話をしたかったので、麻山に頼んでイオンちゃんとシャナとミノとスーを連れて庭園の見学へ行ってもらう。


「元気そうでよかったです」


騒がしく客室から出ていく麻山達を確認して、俺がそう言うと小宮夫妻はニコニコしながら頷いてくれた。


「最近ではじっと椅子に座って四十分も勉強ができるようになったのですよ」


小宮夫人の言葉に俺は驚く。シャナは最初十分も椅子にじっと座って勉強などは出来なかった。そうか、そこまで出来るようになったか。


「それは本当に良かった。シャナは学校には通えそうですか?」

「はい、ただ。実年齢が凡そしか分からなかったので、検査などをして小学校高学年へ通わせるつもりです」

「保護しておいて、何から何まで頼ってしまって申し訳ない」


善次郎さんの言葉に頭を下げると善次郎さんに「いえ、お若いのに大変な仕事をなさっている。それに比べれば」と言われてしまった。


縁眼さんも俺に気にしないように言う。本来、シャナの保護は国がやるべきことだ。それを勝手にとは言え、自費でやっている。

助けた以上は自分で、と思ってのことだが。


その後、俺は縁眼さんも交えて小宮夫妻とシャナの教育方針。ちょっと大げさな言い方だがについて話し合った。


シャナの精神やこれからの勉強を考慮して、来年は小学校に通わせることになった。

通う学校は魔法関係の学校だ。


今のシャナは魔力は少量。肉体が育っているが腕力も人並み。一般的な学校生活は出来る。


それと不必要かもしれないが、こちら側の人間ではある以上は魔法の知識は必須だという話になり、シャナが通う学校は魔法を学ぶことが出来る学校となった。


「シャナの金髪は学校でも目立つでしょうか?」


俺の問いに答えてくれたのは縁眼さんだった。


「髪の色でいろいろ言われることは無いと思いますよ。シャナちゃんの通う学校は私も通っていた学校で、魔法関係者は国際結婚することも多いのでハーフの子も結構いますよ」

「そうですか、意外ですね」

「はい、私の代にも三人ほどハーフの子と留学生が二人来ましたね」


小宮夫人の言葉に俺は少しだけ安堵する。シャナは金髪だけではなく、長身でもある。それが原因でイジメられたりしないかと考えたけれど。


「安心しました。教えてくれてありがとうございます」

「いえ、お気になさらずに」


夫人の言葉に俺は軽く頭を上げて、ここ最近のシャナのことを小宮夫妻から聞くのだった。


孫の成長を自慢するような小宮夫妻に俺はちょっとだけ嫉妬心が芽生えたが、二人の話上手でついつい長い時間話を聞き続けてしまうのだった。




午後に避暑地の涼川に到着して、小宮夫妻とすっかり話し込んでしまった。


庭園を見学した後、川に行って遊んできた麻山たちと合流したが、本格的な涼川の観光は明日になった。

有名どころの観光地に比べると見るところは少ないが、土地に合わせた遊ぶところもしっかりとある。

元々ゆっくりくつろぐことを目的にしているので騒がしい場所は少し離れた街へ行かないとないみたいだが、今回は別に問題は無い。


「二人とも楽しめたか?」

「はい、近くの川でシャナちゃんがお魚を捕まえてびっくりしました」

「おおぅ、そうか」


素手でポイポイと魚を取ったらしい。やはりシャナは無意識に身体能力を使いこなせているようだな。元生物兵器の経験が出ているのだろうな。


ちなみに、川での漁の許可証もあるので問題ないらしい。土地も縁眼家の所有で川の環境の維持などもやっているらしく。人数分くらい魚を取っても怒られないそうだ。


「シャナちゃん、良く取れましたね」

「私もびっくりしたよ。反射神経が凄かったもん」


驚く俺と縁眼さんに麻山がその時のことを身振り手振りで教えてくれる。

シャナはエッヘンと胸を張るが、プルンプルンしている。何がとは言わないが。


「武よ。この幼子はもしかして名のある戦士の子供なのか?」


ふよふよと浮きながら、デフォルメされた茶色のウシのぬいぐるみが俺に問いかけてくる。


隣にはイカのデフォルメのぬいぐるみ。スーも浮いてこちらを見てくる。

このミノとスーはシャナがとても気に入っていたが、どうやらロックオンは解除されたらしいな。最初は追い回されたらしいが。


「まあ、そんなところだな」

「そうか、鍛えれば名のある戦士になるな」


強い奴と戦うことが基本的には好きなので、ミノもシャナを気に入ったらしいな。

天真爛漫だから、真っすぐな性格のミノとも相性がいいのだろう。

スーは無言だ。強さにそこまで興味が無いのだろう。麻山の隣へ移動した。


「ミノさん、こっち」

「うわっと」


イオンがミノを抱き寄せた。ミノがシャナと仲良くなって嫉妬しているみたいだな。


「あ! イオンがミノをぎゅっとしてる! あたしも!」

「わわっ」


イオンがぎゅーっとミノを抱きしめていたら、それを見つけたシャナがイオンを後ろからギューッとし始めた。

きゃいきゃいしながら、じゃれつく二人を微笑ましく眺めながら、俺達は明日の観光のことを話しあう。


「明日はみんなで人通りの多いところへ行こうか? シャナの勉強の為に」

「そうですね。お土産などを売っている場所もありますから」

「お土産ですか? 小夜子先輩」

「はい、この土地ではリンゴやブルーベリー、ブドウ、梨などの果物を作っていまして、その加工品がお土産として結構有名ですよ。そのお金持ちに」


土地的に魔法的な警備もしっかりしているから、メディアなどの紹介はされないようになっているんだな。

金持ちとしては、本当に知られたくないところの情報は教える訳ないか。


「そう言えば、ここに来る途中の道に牧場の看板がありませんでしたか?」

「ええ、涼川牧場ですね。乳製品も美味しいですよ」


麻山の言葉に縁眼さんが頷いた。牧場があるなら、見学できないかな?

シャナに動物と触れ合える機会を上げたいが。


「見学できるか聞いてみましょうか、武様」

「そうだな。明日はゆっくりと街を見てまわって、明後日に牧場へ行くか?」


俺の問いに頷いた縁眼さんと俺達の話を聞いて、嬉しそうにはしゃぐシャナ達。

二人に振り回されて、ちょっとミノが疲れているが、我慢してくれ。


この後、ちょっと中途半端な時間ではあったが、夕食までカードゲームやボードゲームで遊ぶことになった。

小宮夫妻も時折参加して、かなり盛り上がっていた。


普段は一人でいることが多いシャナは同世代の女の子が居るのが嬉しいらしく、イオンと積極的に話してくっついていた。


「武お兄ちゃん。このこのお野菜の天ぷらおいしいよ!」

「ああ、そうだな」

「みなみお姉ちゃん、これなに?」

「これ? マイタケの天ぷらだね。マイタケ食べたことない?」

「うん」


夕飯はこの地域で取れた野菜の天ぷらなどが中心だった。

素材の質も高く、作っている人の腕も良いので出された夕食は全員が綺麗に食べていた。

シャナとイオンちゃんも好き嫌いせずに食べていたのは驚いたが、小宮夫人。いや、富子さんの話だと引き取って最初から好き嫌いせずに何でも食べたらしい。

イオンちゃんも好き嫌いは少ないらしく、納豆などの強い臭いの食べ物以外は食べられるとか。


夕食後は風呂に順番に入り、早めに寝ることにしたのだが。

そこで問題が起こった。


「武お兄ちゃん! いっしょに寝よう!」


俺とシャナが一緒に寝るのはアレなので、即座に縁眼さんや麻山とイオンちゃんを巻き込んで雑魚寝することになった。


「あらあら、甘えん坊ね」


と、富子さんと善次郎さんが微笑ましそうにしていた。

割り当てられた部屋ではなく使われていない大部屋の方へ移動して、そこにあった和室用の布団を持ってきて全員で川の字? いや州の字? みたいな感じで眠ったのだが。


翌朝。


「武先輩、大丈夫ですか?」


麻山の声で俺は目を覚ますと俺はシャナにレスリングみたいに、上から抑え込まれるような形で眠っていた。


「大丈夫だ」

「その苦しくないですか? シャナちゃん起こしますか?」

「いや、そのうち起きるだろう。イオンちゃんは?」

「まだ、眠っていますね」

「うん、ならもう少し寝かせてあげよう。あ、でも時間は平気か?」


俺の声に縁眼さんがスマホで時間を確認してくれた。


「大丈夫ですね。まだ、時間はあります」

「そうか、ならもう少しだ「ウシー」ぐぇっ」


ギューッと突然シャナに抱きしめられて、俺は変な声が出た。シャナに締められているとミノがふよふよしながら近づいてきて、シャナに感心するよう口を開く。


「武よ、なかなか苦しいだろう。シャナのそれは、ただ抱きしめるだけではなく自然と抱きしめた相手の肉体にダメージを与える締め上げ方をしてくるから、やはりその娘は戦士の才能があるな」


いや、恐らく。生物兵器として作られた時に脳内に入れられた戦闘技能が身体が覚えているだけだと思うぞ。


と言いたかったが割とそれどころではないので、俺は仕方が無くスルリとシャナの拘束から抜け出す。

するとイカのぬいぐるみがこちらに浮かびながら近づいてきた。


「父よ、大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫だよ。スー、ちょっと危なかったが」


身体を伸ばして、リラックスしようとすると体の感覚が変わって違和感を覚えたのか、再び近くに居た俺に寝ながら抱き着いてくるシャナ。


肉体は大きいがやはり、小さい子供なんだぁ。と俺は感じるのだった。


「キリがなさそうなので起こしますね」

「ああ、仕方が無いが、そうしてくれ」


避暑地での二日目がこうして始まった。





にぎやかなに朝の身支度をして。


「じゃあ、先に行っているな」

「はい、分かりました。武様」

「シャナちゃん! 全部脱いじゃ駄目!!」

「うぅー」

「シャナちゃん、オメメあけて」


俺はぬいぐるみのままのミノとスーの二人を連れて顔と歯を洗いに行った。


その後、屋敷の食堂でみんなと朝食を取った。

ミノとスーの二人、一体と一柱? はぬいぐるみなので俺が魔力だけを補給するだけだが。

そこで不満が出た。


「ぬぅ、昨日の夕飯の時は平気だったが、やはり食いたいのだが」

「そうですね。食べなくても平気ですが、父がいるなら、身体を呼び戻して食べたいです」

「分かった、小さめで実体化させるから、俺の頭の周りを飛び回るな」


俺の頭の周りをぐるぐると飛び回る二つのぬいぐるみを捕まえて、俺は二人の身体を呼び出してやった。


仕方が無いので善次郎さんにお願いして二人分を追加した。

人型、俺と身長が変わらない牛男と頭一つ分小さなスキュラ。上半身美少女で下はタコに驚いていた。


とりあえず、全裸に近い二人に服を着せて。朝食を食べさせる。

するとシャナとイオンちゃんが二人にあれやこれやと朝食の話をし始める。


「やはり、お若いのに凄いですね。武さん」

「ありがとうございます、個人的にはまだまだですが」


善次郎さんが手放しに誉めてくるので、気恥ずかしさを感じてしまう。


「今日は街へ行くと予定でしたね」

「はい」

「夏休みで人が比較的多い時期です、大丈夫だとは思いますが気を付けてくださいね」

「はい、シャナとイオンちゃんもいますから」


縁眼家の護衛が来ているとも縁眼さんは言っていたが、俺もしっかりと気を付けておこう。

ま、観光地だからスリとか居るかもしれないが。それなら狙うのは俺や麻山、縁眼さんだろう。

居たらこっそり捕まえておこう。


小宮夫妻に見送られて、俺達は涼川に定期的に来ている縁眼さんに案内を頼む。

歩きながら、商店が並ぶ場所へ移動中に何人かの別荘に来ている人たちとすれ違ったが、全員が縁眼さんにしっかりと挨拶をしていた。


こういうところを見るとお嬢様だな。

全員縁眼さんのことが分かった上で頭を下げていた。


「うーん、セレブですね」

「麻山」


驚きながらそう呟く麻山に俺は苦笑いを浮かべてしまう。

そうだよなぁ。普通は驚く。


それとシャナとイオンちゃんはすれ違った人達を笑顔にしていた。

挨拶を返すシャナとイオンちゃんの二人に年配の方はメロメロだったな。


あ、ミノとスーの二人は姿を消しているので人には見られていない。

並みの魔法使いではミノとスーを発見できないだろうな。


「商店街かと思ったら、ショッピングモールなんだな」

「はい、この辺りは縁眼家やその関係者が住んでいたので、資金などはこちらが払って作ったそうです。その、ちょうど商店街が廃れる問題が多かったので、このままだと地域全体が危ないとなりまして」

「力のある地主だからできることだな」

「はい、そのー、まだこのあたりの住人の多くは縁眼家の領民。みたいな考えがありますから。個人で土地を持つ人も少ないので」

「民主主義国家としてはどうなんだろうか? とは思うが、上手くいっているなら。良いんじゃないか?」


どんな社会制度でも金持ちが有利なのは変らない。


特権階級だけのことを考えているなら問題だろうが、どうやらこの地域は縁眼家の繁栄を考慮した上で、住人を手助けしているなら問題ないだろう。


「ショッピングモールは元商店街の人達に?」

「はい、殆どがそうですね。観光客向けのお店を前面に押し出していますね」


なるほどね。観光客が入ってくる高速道路側の入り口にはお土産屋を反対側の入り口の方は地域の住人向けにはスーパーとかがあるのか。

地図で見ると結構しっかりと区画整理しているな。


「じゃあ、色々と見てまわるか」

「はーい」

「うん、パパのおみやげ何が良いかな」


果物の加工品や牧場の乳製品。それと山菜や野菜の加工品もあるな。


「思ったよりもパッケージもおしゃれだな」

「ええ、しっかり作らないと、有名どころに食われてしまうので」

「あまり目立つと困るが、寂れすぎてもってところか」

「はい、魔法関係の土地ですからどうしてもその辺りが」


縁眼さんは少し困った表情でそう言った。

そうだな。必要以上に人を呼んで魔法のことがバレたら問題だ。


一昔前ならネットが無いから色々と都市伝説的な感じで終わらせられたけど、今はネットが普及して魔法を隠しにくくなっている。

大規模な認識を逸らしたりする結界を作るには龍脈が流れていたり、その力が溜まるパワースポットでないと難しい。


「ま、お世話になっているから、少し多めにお土産を買おうかな。アンネの分は使用人の方達の分を増やせばいい」

「結構な人数ですよ?」

「ま、金はあるから平気だよ。ちょっとは使わないと駄目だろうしな」

「すみません。ありがとうございます」


と言うわけで、シャナとイオンに果物のアイスクリームを買ってあげる。


我にも! ワタシにも! とミノとスーが騒ぐので適当にアイスクリームを購入して一旦イベントリに入れて、屋敷に戻ってからと黙らせた。


それから、各お土産屋をまわり、大量にお土産を購入して片っ端から小宮夫妻の屋敷に送る。

事前に小宮夫妻には連絡をしているから、大量に届いても驚かないだろう。


色々と味見したり、お土産買ったりしながらショッピングモールを見てまわる。


シャナは人とのコミュニケーションや一般常識を覚える必要があったので、あまり遠出は出来ていないかった。

なので結構はしゃいでいた。

見るものすべてが新鮮なんだろう。


お土産やに売られている食べ物だけではく、ご当地アクセサリーや木刀とかも手に取ってはしゃいでた。


ちなみに全部俺がお買い上げをした。

事前にそれとなーく、縁眼家の本家の長女で次期当主が来る。みたいは話を聞いていたお偉いさん達が、俺にも恐縮した形であれやこれやと色々と説明してくれた。


「へー、蕎麦もブランド化をしているんだな」

「はい、この辺りは水量は豊富でしたが山奥で気温も低めお米が作り難く、蕎麦を作ることが多かったのです」

「なるほど」


良いね、蕎麦は結構好きなんだよね。

山掛け蕎麦とか、月見蕎麦に天ぷら蕎麦。


蕎麦のはお土産と自分用にかなり購入することにした。


ちなみにお昼はショッピングモールの食堂で食べたのだが、俺が山掛け蕎麦を選んだからか、シャナとイオンちゃんも蕎麦を頼んでいたのだが。蕎麦をすすることが出来ずに悪戦苦闘している姿がとても可愛かった。


最後は定員さんにお願いしてフォークでパスタのように食べさせることになった。



午後になった。流石に一日中ショッピングモールで買い物をし続けるのは難しい。

事前に小宮夫妻から、ショッピングモールでお土産を買った後は、観光客向けに整備されたキャンプ場遊びに行ってはどうか? と提案されたのでみんなで行くことにした


キャンプ場は縁眼さんの家の所有している土地を整備して作られたキャンプ場で、監視員を配置し、観光客が楽しめるような川と水深の場所を開放しているようだ。


利用者が奥に行かないように柵やフェンスで禁止エリアに行けないようにしている。

私有地なので、入ったら不法侵入で捕まるので、基本的には誰も入らないだろうが。看板には熊が出ますとか書いてあるし。大丈夫だろう。


キャンプ場は格安の入場料と故意に禁止エリアへは入りませんと言う契約書にサインをした。


「シャナ、イオンちゃん。この契約書という紙はね。危ない場所に入らないって、約束するための紙なんだよ。約束は破っては駄目だよ」

「うん、分かった」


と言うわけで、全員が手続きを終えてキャンプ地へと入った。


今日はこの後、川遊びをしてちょっと早めにバーベキューで夕飯を食べることなった。小宮夫妻も後で合流できると言っていた。


俺はタープテントを二つ、アンネが紹介した侍女二人と組み立てて、折り畳み式の机とテーブルをセット。

バーベキューする場合は指定のキッチンエリアがあるからそこで移動する。


「よっと後はこれと。これを配置してっと」

「先輩~!」

「お、来たか」


川遊びをするということで、俺も含めて水着ではないが濡れても平気な恰好に着替えた。

半袖半ズボン。


最初は水着にって話だったんだが、無邪気で人見知りをほとんどしないシャナが水着の姿で元気に動き回ったら色々問題では? と危惧した小宮夫妻の話を聞いた縁眼さんと俺が急遽変更した訳だ。

ちなみにアンネが自信満々に送ってきた水着は旧スクール水着だった。

どうやってシャナに合うサイズの水着を見つけてきたのかと思ったら、有名なスポーツメーカーのフルオーダーメイド品だった。

変なところに金掛けているな。と呆れてしまった。


「バーベキューをするまでには時間がある。遊ぼうか」

「うん!」


シャナの元気な声を合図に俺達は川で遊ぶことにした。

それとこのキャンプ地に面している川はそこまで水深が深くはない。

具体的には大体大人の膝くらいだ。


あくまでも水遊びを想定している。それとキャンプ場では監視委員もしっかりといる。

川で溺れて溺死する可能性も低いな。


なんとなーくセレブが遊ぶ場所のようにも思ったけど、セレブならプライベートビーチ的な場所でのんびりしているか。


とーりあえずー、ざっと鑑定と分析スキルでこのキャンプ場に居る人間を調べておく、念のため。

半数は魔法関係者か。小宮夫妻のように知っているけど関わっていない人も多いけど。ここに居る人たちも似たようなモノだろう。大半が魔力がかなり少ない。


残りは本当に一般人だな。偶然この場所を知ったとか、誰かの紹介で知った感じ。


「問題なさそうだな」


俺はシャナや縁眼さん達と川でのんびり遊ぶことにした。



川遊びはかなり楽しめた。

泳ぐことも出来なくはないが、水深が低いので水の掛け合いとなった。


少しして、何人かの子供たちがイオンちゃんに声をかけてきたので、そこからキャンプ場に来ていた利用者の子供たちと遊ぶことになった。


最近の子供らしくタブレットとか持ち込んではいたが、意外と外遊びする子も多いようだ。

俺が持ってきたフリスビーや柔らかい大きめのボールなどで思ったよりも楽しく遊べたのは驚いたな。


子供同士の喧嘩の一つでも起こるかと思ったがそういうこともなかったし。

それと利用者の家族たちとも交流することにもなった。

縁眼さんのことを知っている人達は自分の子供たちが俺達の所に突撃したことにかなりビクついていたが、特に問題もなかった。


せっかくだから、三時のオヤツを保護者たちの許可をもらってみんなで食べた。

シャナの身長については、「シャナのお父さんとお母さんは背が高くて、それでシャナも背が高いんだよ」で納得していた。

保護者の方達もシャナの髪色で親が海外の方だと分かったのだろう。それで納得していた。


夕方になり、子供たちと保護者の方達はそれぞれのテントなどに帰ることになり、小宮夫妻も合流して俺達も夕飯の支度にとりかかる。

キャンプ場の竈があるエリアで、バーベキュウを始める。


「うぅ、目がいたい」

「はは、頑張れ」


初めて玉ねぎを切るシャナに切り方を教える。それとイオンちゃんも麻山や縁眼さんに野菜の切り方を教わっている。

父親が留守にしがちで家政婦を雇っていると聞いていたので、料理をしたことが無いと言われれば確かに納得だ。まだ小学生に包丁を持たせるのは結構怖いな。

それと小宮夫妻はニコニコしながらシャナたちが料理をしているのを眺めている。


最初は手伝おうとしてくれたのだが、せっかくだからやってみたいとシャナが言い出して、自然と俺たちがフォローをして。と言う感じになった。


ただ、シャナとイオンがスープを作る時は俺がお願いして小宮夫妻に作り方を教えてもらった。

ちょっと教えたくてうずうずしていたので、それとなく声を掛けたら喜んでこっちに来たから、やっぱり教えたかったんだろうな。


こうして、夕食は楽しいバーベキューとなり。もしかしたら、この世界で初めての……なんというか、普通の夏っぽいことをした気がする。


俺の家は比較的裕福だったが、両親が仕事人間だから、こういうことも殆どなかったし。

というか、やべぇ。俺両親の顔がすぐに思い出せない。はぁ、あっちの世界での影響も多少はあるのだろうけれど、家に帰ったら少しアルバムと両親に連絡をするかな。


「美味しいですね。武先輩」

「ああ、本当に美味しいな。肉もタレも」


あ、そこの肉焼けているな。


「シャナ、イオンちゃん。そこのお肉は焼けているぞ」

「あ、ありがとうお兄ちゃん」

「ありがとうございます、タケルさん」


俺は網の上に減った分の肉を補充する。

縁眼さんも上品ではあるが先ほどのから結構肉も野菜も食べている。

やはりあの眼のお陰で結構カロリー消費が高いみたいだな。常時発動。いや、待機モードで常にエネルギーをちょっとずつ消費している感じかな?

俺みたいに現代核兵器並みの魔力量なら、大したことは無いのだろうけど。


「よし、これでいいかな」

「武さんは料理が上手ね」


大きな竈の網の上で焼かれていた肉や野菜を手早くひっくりかえすと富子さんからそんなことを言われた。


どうやら、俺の料理の腕はスキル補正を抑えてもかなりのモノらしく、二人の吸血鬼の侍女から「お上手ですね」「手際が素晴らしいです」と褒められていた。


「ありがとうございます、両親が仕事で家に居ないので自炊をしていたら」

「そうなの?」

「はい、それと個人的に料理は好きなので」


あっちの世界で勇者をしていたが、故郷の味は勇者たちのほぼ全員が懐かしがっていた。

ファンタジックな世界から来た勇者の仲間たちのは再現できなかったものも多いが、地球勇者達の料理は比較的作れたからなぁ。

流石にアンドロイドの勇者の鉱物の金属やエネルギーは生産勇者達でも無理だったが。

代わりとなる物は作っていたな。


「色々と試行錯誤しましたからね」

「まあまあ」


味噌と醤油は本当にね。下手したらとんでもないことになったし。

全力で思い出さないようにしてもちょっと心に来る失敗をした味噌もどきとか醤油もどき。死ぬかと思ったな。


……食事中だから完全に忘れよう。


「最近は多くなりましたね。男性でも料理をする方は」

「そうですね。俺の知り合いにも結構料理が好きな奴が多かったですね」


善次郎さんがしみじみとそう言った。善治郎さんの年齢的には料理は女の仕事。みたいな感じだったんだろうな。

善次郎さんは男が料理をすることに忌避感は無いみたいだな。


「出来ないと割と大変でしたから」

「なるほど、苦労したんだね」

「苦労? なのでしょうか。うん、まあ、その親がいるので」


俺はイオンと麻山と話しているシャナを見た。

助けたことは後悔していないが、今後のことを考えないと。シャナの将来のことを。


「まだ、君もシャナも未成年だ。シャナを我が子にした以上は、我々が死んだ後も良いように手配している。あまり気負わないようにね」

「あ、ありとうございます」

「いや、大人が考え、行うべきことを君はやっている。お礼を言うのは大人である私達だよ」


小宮夫妻は本当に善良な方だな。

色々とあちらの世界で人の心を見てきたから、迷ったりはしない。


「はい、了解です」


これからも、色々とありそうだが。

勇者として俺のやりたいようにやればいいだけだな。


「お兄ちゃん、そろそろこのお鍋いいかな?」

「あ、忘れていな。そろそろ良いはずだぞ」


最近話題のキャンプの鍋の使った料理。上手くいっているといいんだが。

俺は分厚い鍋掴みを手に嵌めて、鍋をキッチンの台の上に運んだ。


その後、鍋を使ったキャンプ料理は無事に完成しており、シャナとイオンちゃんはとても喜んでいた。




上手いこと、シャナが俺と風呂に入ろうとするのを阻止して眠った翌日。

昨日のキャンプの夕食の残りをイベントリから取り出して、食堂で昨日人目があって食べられなかったミノとスーに食べさせていると。


「今日は牧場だよね!」


と、歯と顔を洗ってきたシャナが元気よくそう言った。

確かに許可が下りれば涼川牧場の見学に行くはずだが。


「ああ、今日は大丈夫だそうだよ」

「許可が下りたのですか?」

「ええ、流石に急すぎるかと思ったけれど、元々大きい牧場で機械化と式神と人で効率化しているの。見学会も結構しているから大丈夫よ」


善次郎さんと富子さん二人からそう言われて、俺もちょっと楽しみになってきた。

機械化と式神と人ね。

あっちでも機械に強い勇者仲間が機械とゴレームを使って効率上げていたな。懐かしい。


と言うわけで、今日は涼川牧場へ見学しに行くことになったのだが、朝食を食べ終えてさぁ、行こうか。と準備をしているところで小宮夫妻にではなく、縁眼さんに来客があった。





小宮夫妻の屋敷の応接間。品の良い西洋風の内装で六人ほどが余裕を持って部屋でくつろげる空間だ。


その応接間にソファとテーブルを挟んで縁眼さんと突然やってきた人物。

対魔師局の対魔師チームのリーダーの一人。米沢さんがやって来た。


夏用のスーツを着て、髪を纏め上げ、身だしなみをしっかりとしている。

眼鏡をかけているが視力が悪いわけではなく、メガネが魔道具のようだ。


座っているだけで、隙が無い出来る女の雰囲気があるな。


あ、ちなみに俺は応接間の隣の部屋で全力で姿を消して壁の向こう側を透過魔法と盗聴の魔法で縁眼さんと米沢さんの会話を盗み聞きしている。


姿を消して縁眼さんの傍に居ることも考えたけれど、念のために隣の部屋で話を聞かせてもらうことにした。

それとシャナ達は涼川牧場へ行っている。俺の影分身もしっかりと傍に居るので護衛も大丈夫だ。


シャナが時折俺の顔を見て不思議そうな表情をしているので、恐らく影分身だと本能で気づいているのかもしれないな。


「それで今日はどのようなご用件でしょうか? 対魔師局の方が事前の連絡なしでこちらに来るとは珍しいので」

「はい、直接会ってお話ししたいことがありまして」

「お話ですか?」

「はい、実は数日中に、この方が日本へ来るようなのです」


米沢さんは魔力を帯びた封筒を持ってきたビジネスカバンから取り出して縁眼さんに手渡した。


封筒には盗難防止の魔法が掛かっているな。


おっ、縁眼さんの視界が送られてきた。


良く見えるぞ。これは事前に話し合って、縁眼さんの視界を俺にも見せてもらっている。


「えっと、この書類の方は欧州……え?」

「気づかれましたか?」


書類に張られた女性の顔写真を見て、俺も縁眼さんも驚いた。


なぜなら、その顔写真の女性はシャナにそっくりだったからだ。


「アーシャ・コムストックさん? と言う方ですか。職業は悪魔祓い師ですか」

「はい、彼女は欧州でも有名な元修道女でした」

「元、ですか?」


縁眼さんの言葉に米沢さんが頷いた。

つまり、今はアーシャと言うシャナに顔が似た女性は修道女ではないと。


「八年前のことです。アーシャ・コムストックさんが暮らしていた修道院のある街で若い女性が行方不明になる事件が起こりました。その後の捜査で、その一連の事件の犯人が【光の鳥】だと分かりました」

「光の鳥ですか」


縁眼さんは意図的に眉を顰める。あまり聞きたくない名前だとアピールだな。


「その事件の被害者の一人が彼女の妹、リリー・コムストックさんです」


八年前ね。あー、つまり、このシャナに顔が似ている女性のアーシャさんの妹のリリー・コムストックさんがシャナの母親の可能性が?


シャナが人間なのは間違いない。両親は不明だが。男か女か分からないような人型の生物兵器ではあったが、生み出されて何かしらの方法で肉体だけを急成長させられた。


そこから、科学的、魔法的に色々な生物の細胞を融合させられて、ドラゴンをも倒せる戦闘力を獲得。


で、俺に倒されて人間に戻されたわけだが。

チート能力が無ければ、現時点での世界の技術では元に戻せなかっただろう。


「リリー・コムストックさんは死亡が確認されたようです。これはアメリカへ行った忍者が手に入れアメリカ政府へ渡した【光の鳥】の資料から分かっております」

「そうですか、それで?」

「私共としては、リリー・コムストックさんの娘である可能性のある、小宮シャナさんに会いたがっているアーシャ・コムストックさんには穏やかに日本に滞在してもらうため、我々は小宮シャナさんのDNA鑑定を貴女方に要請をしたいと思います」


DNA鑑定ね。あまり愉快な話ではないな。


「鑑定ですか、それに穏やかにとは?」

「アーシャ・コムストックさんは、魔法犯罪者を過激な手段で倒すことで有名です。それが原因で教会から破門されております」

「過激な手段ですか」

「はい、ですが話が出来る方でもあります。アーシャ・コムストックさんの目的は忍者が保護をした亡き妹の娘の可能性のある、シャナと言う少女です。我々としても忍者とはことを構えたくはありません。ですので、アーシャ・コムストックさんの目的であるシャナさんが遺伝子的にリリー・コムストックさんと繋がりがあるのかどうかの確認しておきたいのです」

「DNA鑑定でリリー・コムストックさんとの遺伝子的な繋がりが無かった場合は?」

「事実を全てお話しした上で面会などはお断りさせてもらいます。赤の他人ですから、強引なことをなさる場合は対処します」

「分かりました。対魔師局はシャナちゃんの為に力を尽くすと?」

「はい、現在彼女はこの国の国民です。それに、忍者へのアピールでもあります」

「言っていいのですか?」

「はい、我々は忍者と敵対するつもりはありません。不快に思われるかもしれませんが、あまり忍者の手を煩わせるのは避けたいと思っております」

「分かりました。ではシャナちゃんがリリー・コムストックさんと遺伝子的な繋がり。親子関係があった場合は?」

「面会を求めることになるかもしれませんが、拒否した場合はそちらの意志を尊重します」


一瞬だけ、縁眼さんが俺の居る方の部屋を見た。


DNA鑑定か、でも、シャナの将来のことを考えるとそこまで悪くはないのか?


アーシャ・コムストックさんがどんな理由でシャナに会いに来たのか今は分からないな。

引き取りたいのか、一目会いたいのか。


これは少し、お話をした方が良いかな?

うーん、やはり色々と大変なことが起きたか。


でも、まあ、今日明日何か起こるわけではないから、問題は無いな。


この話が終わったら、牧場見学に合流しよう。まずは楽しい思い出をシャナ達と作らねばな。



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