第19話 雷の勇者

 い、一体何がおこったんだろう?


 私は、恐る恐る、自分の部屋にある窓から外の景色を眺める。するとそこには、


「わ、わわっ!? み、ミディアさんのお部屋が、く、崩れてる!?」


た、大変です!? な、何があったのでしょう!? は、はやく助けに行かなきゃ!! ま、まさか、魔物に襲われている!?

 

 パチン! パチ! パチ! パチン!


「つっ!? し、しまった!?」


 興奮したせいか、私の力が、ぼ、暴走し始めました。体から、弾ける、雷。銀色の眩しい光が、私の体を包み込み始める。


「くっ、お、落ち着いて、落ち着いて!」


 し、深呼吸、深呼吸。


「すーはー、すーはー……」


 パチ、パチ、パチ……。


「よ、良かった、な、なんとか収まりそう。で、でも……」


 これじゃあ、ミディアさんのところへ行けない。いつも、部屋に籠っている、私のまま……。


「ど、どうしよ……、ううっ」


 目が、涙で滲む。悔しくて、悲しくて、辛い。


「私も、勇者なのに……」


 魔物とも戦えず、いつもミディアさんに、負担をかけてしまって……。


 そう思うと、心の中がぞわっと震えた。もし、ミディアさんが、魔物に負けてしまったら…………、もう会えない。


 優しいミディアさんを、失いたくない。


バチン! バチン! 


「うっ!? だ、だめ、また、力が!! でも! きょ、今日は、頑張らなきゃ! 絶対に!!」


 私は、もう一度、窓の外を見る。


 ミディアさんの部屋がある崩れかかった塔。


 まだ、間に合うかもしれない。


「行こう、ミディアさんのところへ!」


 そう思った時だった。


 ミディアさんの部屋がある塔の壁が、突如ぶち抜かれる。激しい炎とともに。そして、こちらに、なにか飛んでくる、なぞの物体。目を凝らすと、それは、


「えっ!? ひ、人!?」


 ど、どうしよ!? こ、こっちに、飛んでくる!? 


「わわっ!? ぶ、ぶつかる!?」


 私は慌てて窓から離れる。そしたら、


 盛大な破壊音とともに、謎の吹っ飛ばされた人物が、私の部屋に侵入してきたのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る