第17話 救出

 彼女の手から、巨大な火球が俺に放たれようとしていた、その時だった。


 ピシピシ、ガガゴンンン‼‼


「「なっ⁉」」


 俺と紅蓮髪の少女は、同時に声を発した。


 突如、地割れの様な音と共に、彼女の足元が崩れた。大きな火球をだしたときに、足場がその力に耐えられなかったのだろうか。

 足場を失った彼女が、一瞬だけ、ふわっと浮いたように見えた。

 だがすぐに、彼女は足元に出来た大穴に、吸い込まれるかのように落ちていく。


 その様子を捉えた瞬間、俺は全力で彼女のもとへ駆け出していた。


 バランスを崩した彼女が、巨大な火球を誤って天井に向けて放つ。頭上から聞こえてくる、瓦礫が崩れるような盛大な音を耳にしながら、自分の右手をめいいっぱい、下に落ちていく彼女に伸ばす、が―。


 届かない。


 くそっ!!


 そう思ったときだった。


 ガクン! と、右手に感じる重量感。

 

 えっ!? わわっ!?


 大穴の付近で、体を踏ん張り、留まる。俺の右手の先には、


 ピンク色のパンツの、紐を強く握っていた。そして、


「つっ、う!? あ、あんたって人はッ……!!」


 真っ赤な顔をした彼女が、パンツのもう片方の紐を握りしめていた。


 俺は、今の状況を冷静に分析する。


 ピンクのパンツ=ロープ(がわり) 


 俺、天才かよ。


 ビリッ!


「「あっ」」


 ビリビリビリッ!


 パンツはもろくも破れてしまった。ですよねっ! 


 「きゃっ!?」


 また、下に落ちていく彼女。


 そう思った時には、体が勝手に動いていた。俺も、空いた穴に飛びこんでいた。めいいっぱい伸ばした右手が彼女の左腕を捕まえる。

 

 一気に引き寄せ、抱え込む。

 

 ルビーのようにキレイな瞳が、俺の目と鼻の先にあった。

 

さっきまで怒っていた鋭い目つきとは違う、俺を不思議そうに見つめる瞳。


「大丈夫だから」


 自分の口から、自然とそんなことを口にしていた。彼女の赤く透き通った瞳がより大きく見開く。

 小柄で、紅蓮色の髪がとても似合う彼女に相応しい、コロコロと丸くて愛らしい瞳だった。

 うん、そっちの方がとっても似合ってる。最初にその瞳を見たかったなあ、なんで初っ端から恐くて鋭い瞳を見る羽目に、……いや原因は俺か。


 心の中で反省しながら、俺は彼女を抱えながら下へ落ちていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る