第12話 到着
俺ことムラカミは、光の球体に包まれながら空を高速で絶賛移動中だ。女神であるアリーチェさんに、この異世界に急ピッチで転生させられ、力もついでに授けられ(たぶん)、そんでもって、どこにいくかもわからないまま転送魔法をかけられ、今に至っている。
転生は自分で望んだ事だし良いのだが……。
「それでもこれひどくない⁉ ほんとあの女神なにやってんの‼」
アリーチェさんが、親切丁寧に異世界や、後輩の秦野の様子ついて色々と教えてくれたのはありがたかったけど、制限時間のせいで、肝心の転生作業が超巻きで進められてしまうという暴挙。
「俺、任せて下さい! って言っちゃったけど……、ほんとに勇者達の教育係りとしてうまくやれるのか⁉ いやそもそもですよ、俺は一体どこに飛ばされてんだ⁉」
『ピコン!』
「はい⁉ な、なに⁉」
突如、謎の着信音が聞こえた。すると、
「なっ!? な、なんだこれ!?」
俺の正面に、小さめのウインドウ画面が表示されている。
こ、こいつは一体……、ん? なんか書いてある。
【目的地】勇者達が居住する城
「お、お城?」
俺は、今そこに向かているのか。しかも、勇者が居住する城って書いてある。
「てことは、あの紅蓮髪の少女がいるところに向かってるのか」
いきなりパソコンのポップアップ画面みたいなのが出てビビったが、まあ、今さらこんな事で動揺しても仕方ない。なんせ、俺は一度死んで、また生き返ってんだからな。
「ん? なんか他にもあるぞ? んん~? おっ! こ、これは!」
【ステータス】
「うわぁ~! なんかRPGぽいじゃねえか!」
気持ちがワクワクしていた。だってさ、俺転生するとき、女神ことアリーチェさんから、特別な力をもらってるわけだし。きっとすげえ力が俺に備わっているに違いない!!
「えっと、どうやってみたらいいんだろ?」
こうなんというか、タッチパネル的な感じで操作したらいいのかな。
試しに、【ステータス】を指で触ってみると、画面が切り替わった。よっしゃ! さてさて俺の能力は~♪
名前:ムラカミ ユウキ
年齢:33歳
職:元サラリーマン・保険営業担当・10年目・主任止まり・凡人
力:現状維持
守り:以下同文
素早さ:言わずもがな
魔力:無し
能力:異世界保険
「…………、どういうこと!?!?」
な、なにこれ!? えっちょっと!? お、おかしいよね!? お、俺のステータスおかしいよね!? ぱっと見い、めっちゃ弱いでしょ俺!? それに職のとこ!! 無駄に詳しい!! しかも悪意を感じる!!
「あ、あんのくそ女神!! 全然力を授けてねえじゃねえか!?」
つまりこれって、俺が日本で生きてたときと変わらんてことだろ!?!?
「だ、騙された!!」
異世界へ転生するときは、すごく良い話をされたから、それに感化されて、了承したとこもあるし!!
「うぐぐぐぐぐっ!! ……、はあ~」
まあ、でも、今さらグダグダいっても仕方ないか。
「アリーチェさんも、俺を急ぎで転生させるのに忙しかったわけだし……。でもなあ……、このステータスじゃ……、勇者の教育係りなんて無理なんじゃ……、ん?」
ふと、気になる物が目に入った。
能力:異世界保険
「い、異世界保険?」
なんだこれ? そんなの、日本にいた頃には、ないものだろ? あっ、じゃあもしかして、これが俺の授かった、
『ピコン! ピコン!』
「うおっ!? な、なに!?」
突如、また謎のアラーム音。すると、俺が見ていたウインドウに新たな情報が表示された。
『勇者達が住む城に、間もなく到着いたします』
「なっ!? は、はい~!?」
俺は前方に視線を集中させる。すると確かに中世風のお城が小さく見える。
あそこに、勇者達がいるのか。あの、巨大なオーガを倒した紅蓮髪の少女が。それに、他の、まだ会ったことが無い3人の勇者達もさ。
徐々に城が大きく見えてくる。高速で移動する俺を乗せた光の球体は速度を落とさず、ぐんぐん城に近づいていく。
あれ? いやちょっと?
「どうやって城に入るんだ? ま、まさか突っ込むとか? はははっ! まさかそんな」
『正解』
「マジ⁉ ってあほか!! 正解とか表示してんじゃねえ!! な、なんとかしろよ!?」
『お城のどこかにぶつかり、ちゃんと入れるので、ご安心ください』
「そ、そういう問題じゃねえだろうがああああ!!」
『到着まであと10秒』
「うそ⁉」
ウインドウに向いていた意識を、さっき見てた城に向ける。
あっ、めっちゃ城でかいね。というかもう目の前⁉
『カウントに入ります』
「いやああああああ‼‼」
俺が絶叫する中、またウインドウに新たな文字も追加されていた。
『異世界保険の能力発動されます』
なっ!? い、一体どういうこと!?
俺の疑問とテンパりをよそに、光の球体はお城の壁めがけ、全速力で突っ込んでいく。
「ぶ、ぶつかるぅぅぅぅぅぅーーー!!!!!」
またも俺の絶叫が光の球体の中でこだました。
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