第9話 セーフエリアとは一体(哲学)

 一応、フロアボスっぽく通路の正面最奥に陣取る。

 灯りがちらちらと近づいてくるのが見える。



 クロは黒くなって、というかステルスっぽく気配を消す。




 奴らが部屋に入るタイミングでこちらも立ち上がる。



 俺のことをどう見たのか、侵入者の動きがあわただしくなる。

 何人か引き返していく。援軍を呼んでくるのだろうか。



 このタイミングでクロがいっしょに洞窟の外に出ていったけど、よく気付かれないな。


 通路は、俺じゃなくてもすれ違うのに少し気を使うぐらい狭いのに。




 侵入者の一人が、のっこのっこと踏み込んできた。


 勇気あるなあ。

 大柄レスラーに立ち向かう小学生のガキ大将ってぐらい体格差あるのに。



 部屋に来てるのが5人、援軍で3人追加、いかにもボスっぽい奴隷商人は引き返して洞窟の入り口で待機。入ってこないのが船頭含めて3人ってところ。




 のこのこ前に出てきた刺青スキンヘッドの悪役レスラーに、ゴルフスイングで斧の刃を立てず腹の部分をしたたかに打ちつけ、打ち上げる。


 じゅっって音がした。


 ああ、踏み込んでくるタイミング悪かったね。

 今、斧刃は肉が焼けるぐらい熱かったわ。



「おぉぉおおおあああぁぁぁ!!!!!!!」


 牛頭鬼が吠える。

 咆哮に〈恐怖〉の状態異常が乗り、全員戦意喪失してしまった。


 まあ女子供を奴隷にするような奴らだ。格下相手にいたぶるような真似しかできないんだろう(一方的な言いがかり)。



 全員まとめて、窃盗強姦なんかの軽犯罪(?)なんかで済むわけが無く、日本の法なら死刑確定の殺人集団、レッドネーム(〈鑑定〉スキルさん調べ)だ。





 歯や顎を砕くように狙い、武器を構える手を落とし、膝を狙い足を斬る。



 あっという間に阿鼻叫喚の地獄絵図だ。


 セーフエリアとはいったい・・・




 まず、護衛っぽい腕っぷしに自信がありそうなのから穴に捨てていく。


 ゴミ捨て穴、1m立方では小さかったな。

 食べ残しの骨とか捨てるつもりの穴だったのに一瞬で溢れたわ。すでにふたり目がはみ出てる。


 今『拡張』できないのは、このエリアに侵入者がいる、戦闘中だからか。


 入りきらない分はそのまま穴の上に積み上げていく。




 こっそりと、まるで《転移》してきたかのように被害者の数が増えていく。


 クロが外から持ち込んできてくれているんだな。

 視界の隅にちらちらとクロの姿が入る。クロ大きくなったなあ。


【神狼】化クロ平常時?の3倍以上、虎とかライオンのサイズ。

 お犬様状態エンシェントウルフ時から見て7割ってところか。




 熱い唾液、牛のよだれを穴の上から「ぺっ」って吐く。

 阿鼻叫喚の音量が上がるが知ったことか。


 人の肉の燃える臭い、胃がきゅってなる。なんともいえない強い忌避感。

 せっかく薄れて清涼になったセーフエリアの空気がけがされる。


 でも、臭いも悲鳴もゴミ穴エリアから少し離れたらほとんど気にならない。


『セーフエリア』という名前の空気清浄機、すごく頑張ってる。




 気になってるのはスライムさん。自己判断で避難させておく。


 今のところ側溝というか下水管の支流のほうに退避しているようだ。


 穴の底まで炎のよだれが届く頃にはもう少し離れてるかな。

 離れていてほしいところ。





 金持ってそうな、なよっとした身なりのいいのが3人ほどいたので残している。


 3人娘、こいつらに思うところあるかな。




 さっき解体用に出した片手剣をエルフアイナノアが、短剣を猫娘キュリオが持っている。


 いかにも奴隷商っぽい奴らをそちらに蹴り飛ばす。


 手足を砕いているので抵抗することは無い。

 たぶん、攻撃するための魔法やスキルは《セーフエリア》だから発動しない。


 管理者マスター権限で俺と眷属だけ自由に動け、一方的に攻撃できる。

 ずるい!


 お犬様は暴れることができても、スライムさんは眷属じゃなくダンジョンモンスターだから攻撃には参加できない、みたいな?





 なにやら言い合ってたけど、両者の声量が最高潮に達したところでグサリ一発。


 あとは一方的だ。元々抵抗出来ないようにしていたけど。


 女性は怒らせたら、敵にまわしたら残酷だなあ。



 犬っ娘マルティルは攻撃に加わらず一歩後ろから見てるだけ。



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