第8話 まるで子犬に「チビ」と名付けるような愚行だ


 なんとなく猫の人を鑑定してみる。『キュリオ』、ケットシーでレベル13。

 この世界のレベルがどんな扱いなのかはわからない。

 キジトラで精悍なハンターだ。


 ついでに他のメンバーを見ておく。



 犬獣人は『マルティル』、レベル9。

 耳と髪は柴犬色。メンバー唯一のおっぱいさんだ。胸も尻も立派な健康少女。


 ちょっと遠慮気味、みんなの後ろに控えて距離を置いてるので影が薄い。

 このままではお犬様に犬のポジション取られるぞ。もう遅いかもしれない。



 エルフの人は『アイナノア』、レベル22の84歳。

 髪色は漫画アニメのような明るい緑、アップルグリーン。

 瞳は薄いグレーなのかライトブルーなのか、ちゃんと覗き込まないとわからない。




 なんで〈鑑定〉を急いだかというと、下手したらお犬様が『お犬様』で名前登録されてしまう危険性を感じたから。



 お犬様に〈鑑定〉とばして、その結果に仰け反ってしまう。

 まだ名前が確定してないのがなによりだが。


 エルダーエンシェントウルフでレベル248、460歳の大先輩だった。


 お犬様が洞窟に帰ってくるだけで50DPも入るわけだ。

 部位欠損の回復ぐらいできてしまうのも納得。




 名前をつけよう。安易だけど『クロ』でいいかな。


「クロ」


 読んでみるが、声になったのかはわからない。




 食事中のお犬様、命名クロが食事を止めてこちらに来る。

 居住まいを正し、お座りの姿勢から伏せ、あごを地につける。


 だらっとリラックスではなく、凛とした空気。



「クロ」


 もう一度呼んでお犬様の頭を撫でる。



 お犬様から光が溢れる。


 お犬様と心のパスが繋がったような感覚。


 光が収まったとき、お犬様は白く、小さくなっていた。


 なんてこった。




神狼フェンリル】クロは、神々しく輝くプラチナホワイトになりました。


 大きさは中型犬ぐらい。自分から見たら小型愛玩犬サイズに見える。



 魔物の進化がどれぐらい頻繁にあるのかは知らないが、EEW(エルダーエンシェントウルフ)と比べて強さは桁違い。下手すりゃ2桁、100倍ぐらい差がありそうな見立て。


 やばい化け物を生み出してしまった。



『安心しろご主人、ご主人と供の者達に安易に手をだすことはない』



 あれ? 言葉というか考えが伝わる?



『主のしもべ、眷属になったからだろう』



 あの娘達とも話ができるようになるかな?



『わからん。

 魔物同士の念話と人型の会話は神の決めた法則が違うような気がする。


 あと、眷属化や従属は我も含め痛い目に遭ってるから無理強いはできなかろう』



 だよね。

 それにしては、クロはあっさりと従属決めちゃったよね。



『お主の魂の形が面白かったからな。

 悪意など微塵も感じられなかったし』



 魂の形?



『お主、この世界で生まれた存在ではなかろう』



 よくわかるね。



『魂の輝き、力強さが全く違うからな』



 ということは、僕の他に一緒に呼ばれた存在は



『英雄と呼ばれ、人の世界を変えてしまうほどの力を持っている可能性は十分ある。



・・・話はここまでだ』



 だね。陽が落ちたタイミングを見計らって奴隷の回収にでも来たか。

 街に帰ったときちょうど深夜とか丑三つ時になるように狙っているのか。


 クロも奴らには恨みがあるでしょう。

 余裕があれば、もう後は死ぬしかない、「殺せ殺してくれ」って言うぐらいまで痛めつけてから、あそこの穴に捨てて欲しい。


 僕とスライムさんのレベル上げ狙いたいからね。




『了解した』




 キャンプファイヤーの火(俺の唾液)を消して、3人娘の肩を押してトイレ路地に押し込む。



 もう既に船をつけて、入り口前の広場に10人ほど集まっている。

 あのへんまでは自分のダンジョン敷地だからなのか、そういう気配が手に取るようにわかる。



 非道相手に慈悲は無い。ひとりも生きて帰すつもりはない。


 今からクロだけ外にでてもらうには手遅れだから、ここまで引きこんでから出口を押さえてもらうように指示を出す。



『うむ。任されよ』



 暴れるのはここで戦闘始まってからだからね。

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