第5話 キマシタワー!

 目が覚めた。

 今現在、洞窟の中だけど直線通路の出口の先が明るいので夜は明けていると思われる。




 洞窟の壁を背に座ったまま寝てたんだけど、どうしてこうなった。


 お犬様が肩から背中を押し付けるようにくっついて寝てるのはまだいい。


 あぐらをかいているその中にすっぽり嵌っている猫様はなんだ。


 俺の足の平を枕に、土踏まずのくぼみに頭を納めて安心しきっている犬耳はなんだ。



 エルフの人は、体をくっつけるわけでもなくちょっと距離を置いている。

 残念だ?




 どれほどの時間、ここで繋がれて放置されていたのかはわからない。

 少なくとも、同じ境遇で死者が出るほどには過酷な環境だったはず。


 そんなこと考えてると動けないんだよなあ。

 こんな石の洞窟でも、安心して寝られるならそっとしておいてあげたい。



 お犬様は起きてるようなので、わしわししておく。



 そんなことをしてると3人とも起きたので、やっと立ち上がれる。


 洞窟の外に出る。

 朝日とそよ風と解放空間の心地よさに生きてる喜びを感じる。大げさ。


 斧を持ち上げ体をひねったり、軽くストレッチをする。


 3人と1匹というのか2人と2匹というのか、全員出てきた。

 俺のこと慕ってくれても、何も出ないぞ。




 水場は確保したいな。

 目の前を流れてる川は、流れが遅くあまり綺麗な水に見えない。

 手で掬ってみると一応泥は混じってなくて透明に見える、その程度。


 モンスターの生命力を信じて、少々の不衛生は我慢して飲むしかないか。

 3人娘もこれ飲んでるみたいだし。




 お犬様はお散歩に出かけたようだ。

 お土産に少し期待しつつ、自分でもなんとかする段取りで動きたいところ。



 三日月湖の探索は後回しにして、まずは拠点(仮)を調べたい。


 広間に戻る。

 昨日のBBQ跡も解体で散らかしたイノシシも綺麗さっぱり無くなっていた。


 いや、BBQ跡と言えば斧鉄板の枕にした石だけはそのまま残っていたが。


 イノシシに関しては、昨夜食べ切れなかった部分は夜中にお犬様が片付けたのかと思っていたけど、改めて見てみると血の跡すらきれいさっぱり無くなっている。


 火種は、「消えろ消えろ」と言いながら斧で叩いて広げてたら消えた。

 物理的な消火活動ではなく、発動者、俺の意思で現象操作して消滅させたような手ごたえがしたが。気のせいかもしれない。




 この洞窟、なにかありそうな気がするんだよなあ。


 お犬様その他を拘束していた鎖は岩壁にがっちりと打ち込まれ固定されている。

 あのお犬様が暴れても逃げられないように備えるんだから、まあそれなりには頑丈にするよねえ。


 こんなものがあるからこの部屋が奴隷部屋みたいな雰囲気になるんだ。

 外してしまおう。


 打ち込まれているのは杭ではなくネジ状。ネジの頭はプラスマイナスではなく輪っかになっていて、棒とか通して力を伝えるタイプ。

 頭が出ているから、つまんでまわせばネジはゆるむ。


 お犬様を拘束していたネジは女の子の足ぐらいある立派なものだった。

 その他多数も10cm以上。1本は鎖をねじってまわして抜いたけど、残りはミノさんのステータス任せ力技で引っ張り抜く。

 

 そういや俺も『美濃』さんだった。だからか?

『美濃 太郎(みの たろう)』って、ミノタウロスと名前が似てるからか!!??


 今気付いた衝撃の事実。




 金属部品、ガラクタを1箇所に集める。

 そこで壊れてない『隷属の首輪』を拾う。使用されなかったのか、間に合わずここで命を落とした誰かの形見なのか。

 どちらにしても胸糞悪い。



 対象がいない状態だと鎖は簡単に着脱できる。

 鎖を外してポケットに仕舞う。



 ん? ポケット?


 腰ミノのタセットにそんな収納ついてたっけ。

 手触りで探ってみるけど何かを収納できるようなポケットも無いし、ついでに仕舞ったはずの首輪も無い。


 でも、ここにあると知ってて手を伸ばせばそこにある。

 不思議な感覚だ。





 それはともかく、の掃除はこんなもんかな。


 この洞窟、ダンジョンだよね。

 根拠は無い、ただの直感だけど。


 ミノタウロス・アイで塵ひとつ何も見逃さないように壁・床・天井を調べる。

 言ってもコンタクト入れて矯正視力両目で0.8と変わらない。

 視野は広くなってるのかな?


 

 部屋の片隅から、ゆらゆらとなにか湯気のようなものが立ち昇っているのが見えた。

 ダンジョンコア的なもの見つけたかもしれない。


 湯気に手を差し出してみる。

 俺の薄いラノベ知識だと、触れた人がコアを支配してダンジョンマスターになれるとかなんとか。





 ピリッ!!!!


 っと来た!



 目が覚めるような鋭い痛みが指先から走った途端、光が溢れた。



『生体認証完了。ダンジョンマスターとして登録しますか?』


 機械声アナウンス、キマシタワー!!!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る