1.お嫁さんになりました!(旦那様と知り合うまでのアレコレ)
私こと山唐花琳(さんとうかりん)(旧姓:佐藤)には高校の時から仲良くしている友人たちがいる。
私を入れての仲良し四人組だ。その中でも、親友といってもいいほど特に気の合う友人がいた。彼女は変わり者で、仲間の中では唯一中国に留学していた。その彼女が帰国して一年も経たないうちに結婚したと聞いたから驚いた。みんな、彼女がこれからキャリアウーマンとしてバリバリ働くものだと思っていたからであった。
でも私だけは彼女の夢を知っていたからそれほどは驚かなかった。
彼女の夢は三食昼寝付きの専業主婦だった。
なんで知っているのかって? それは私の夢もそうだからです! 三食昼寝付きって夢のようだよね!(えばれない)
高校を出て短大に入り、卒業してから私は地元の本屋に勤めた。給料は決して高くはないが、バイトではなく社員として雇ってくれるというので一も二もなく頷いた。そう、私はそこの本屋で高校生の時からバイトをしてきたことが、ここで認められたのだった。
そのことはとても嬉しかったけど、漠然とだが早く結婚したいなぁと思っていた。出会いってどこに落ちてるんだろうと途方に暮れていた。
で、就職してから三度目の正月を迎えた頃、高校の時の友人たちと再会したのである。
「恵美~、なんで結婚式招待してくれなかったのよ。水くさいじゃない」
私はさっそく結婚したばかりだという友人ー狐山恵美(こやまえみ)(旧姓:沢村)に絡んだ。
「ごめんね~、もう本当に突然決まっちゃったから身内だけで式を挙げたの。ところで今花琳ってカレシいる?」
その幸せいっぱいの笑顔に殺意が湧いた。地元の本屋で働いてるだけなのに出会いなんかあるわけない。リア充爆発しろって思った。
「……出会いそのものがないわよ。恵美はどこで知り合ったの?」
「知り合ったのは中国でなんだけどねー」
「ええ!? 国際結婚なの?」
他の友人たちを見たらみんな首を振った。そこまで聞いてはいなかったらしい。
恵美は軽く首を横に振った。
「うーん、なんか平安時代後期に日本に渡ってきた由緒正しい家系なんだって言ってたかな。彼自身は日本人だって言ってたけど。国籍は日本なので国際結婚ではないです!」
「へー、そんなに長いこと日本にいたなら日本人でいいんじゃないの?」
「だねー」
そんなことを言い合いながらお酒を飲む。もう飲まなきゃやってられないわ。ここまで飲むと自転車でも代行を頼まないといけないかしら?
「私のことより花琳だよ。彼の友達を紹介したいんだけど、会うだけ会ってみない?」
ニヤリとして言われた。お主、わかっているなと思った。さすが夢を同じくした同志である。
「えー、私にも紹介してよー」
「いい男いないー?」
「いい男はうちの旦那さんですー。それ以上の男がいたらその人と結婚してるって!」
「それもそうだよねー」
恵美の言うことも一理ある。一番いい男はゲットできるなら自分でゲットするものだ。誰かに紹介するなんてもったいない。
「じゃあ私に紹介してくれる人は?」
「たぶんねー、花琳の好みだと思う」
「そうなの?」
もう二人の友人たちは微妙な顔をした。
「花琳の好みかー。じゃあいいわ」
「マッチョはちょっとねー」
何を友人たちは言ってるのか。筋肉は世界を救うのよ。筋肉は裏切らないのよ。ビバ筋肉!
「マッチョってほどではないけど体格がしっかりしてる人なの。顔もどちらかといえばいかついし。でもすごく優しい人だって聞いているわ。料理も得意なんだって!」
「会おう。……いや、是非紹介してください!」
私はテーブルに頭を擦り付けるようにして頼んだ。
というわけでスケジュールの都合上三月中旬には恵美に場を整えてもらった。そこで彼に一目惚れして逆プロポーズをかましてしまい、六月の頭にはめでたくゴールインした。
性格とかよりも容姿でとかありえないって? 筋肉は最高なのだからしょうがないのです。
もちろんちょっと奇妙な結婚生活はここから始まったのである。
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