15

 さまざまな考えが頭をよぎる中。


 君は、結局ランダムに選ぶことを選んだ。


「この本でよかった?」


 少年達にお釣りを渡しながら尋ねると


「……あ……りがとう……ございます……」

 と少年の1人が、買ってきたエロ本を見て固まる。


 割烹着を着た熟女が、お玉片手に微笑んでいる表紙を見つめたまま、固まってしまった。


「……おい……これ……」

「……こんなの……え?」


 少年達がエロ本を見つめ非常に困惑している。


 君はなんか、いたたまれなくなって、


「じゃ、僕はこれで」


 そそくさと自転車に乗り、住宅街の方へと立ち去った。

 しばらくウロチョロした後、家へと引き返す。


(もう終わってるかな……)


 君は吹き足差し足、身を屈め泥棒のように、門から家の中の様子を窺いつつ、玄関へと向かった。


 玄関の引き戸を少し開け、居間の様子を探る。

 とまだ口論の声がしていた。


(まだかよっ)


 君は、音のしないように引き戸を閉め、吹き足差し足、身を屈め泥棒のように玄関から、門までの砂利道を音を立てず進んで、やっとこさ道路まで引き返す。


「ふぅうう……」


 疲労のため息を君は漏らした。

 とその時だった。


「何をしているんですか?」


 キビキビした口調で、君は背後から声を掛けられる。

 驚き振り向くと、そこには自転車に乗ったお巡りさんがいた。


「はぁ!? お巡りさん!?」

「……何をそんなに驚いているんですか?」


お巡りさんは、あらかさまな疑心の目で以て、驚いた君を上から下までを舐めるように見る。


「なっ何もしておりませんっ」


 君をそう言って頭を下げた。


「ここは君の家?」

「そうです……けど……」

「それにしては、コソコソしてたね」


 お巡りさんは自転車から降り、君の元へやって来る。


「なっなんですか!?」

「最近、ここらでちょっと空き巣被害が多発しててね」

「そっそうなんですか……」

「一応、持ってるカバンの中身だけ調べさしてもらって良いかな?」


 君は全身から汗を拭きだし、体中の震えが止まらなくなる。


「さっきも、この隣の家で下着が盗まれててね」

「いや、これは僕のです。何も入ってません!」

「見るだけなので、ご協力お願いしますよ」

「嫌です!」

「どうして抵抗する!」


 お巡りさんの手が手提げカバンを掴む。


「やめて! これは駄目! やめてぇ!」

「離しなさい! その手を離しなさい」

「何だ、なんかあったのか?」

「中学生が何かしたみたいよ」


 とご近所の人達が、騒ぎに気づいて、ぞろぞろと集まってきた。

 その中には、隣に住んで、君が思いを寄せている同級生のアユミも居る。


「やめてぇ!」

「離しなさい!」


 君は激しい抵抗の結果、そしてお巡りさんの職務への実直さの結果、手提げカバンの取っ手は、ブチッとちぎれてしまった。


 ちぎれた衝撃で中身が飛び出す。


 君の買ってきた、あまりに魅力的な表紙のエロ本は、夕焼け空の元、路上に晒しだされた。

 お巡りさんと、騒ぎで集まってきたご近所さん達、そしてアユミが、何が飛び出してきたのかと覗き込む。


 その、あまりに魅力的な表紙のエロ本に、皆が釘付けになる。


 エロ本は、ロリータもので、表紙には裸のツインテールで八重歯の目がクリクリで可愛い女の子が笑っている。


 君は、アユミが、君とエロ本を交互に軽蔑の目で見ているのに気づいた。


 君は何も言わず俯いて、ゆっくりと自宅の玄関へと歩き出していく。


 そのまま、父と母のいる居間を横切り、母に声を掛けられるのも無視して階段を登り、自分の部屋に入り、ドアを閉め、手首を切った。


   The Bad End.

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

「ミニゲームブック」あまりに魅力的なエロ本 フィオー @akasawaon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ