14

 さまざまな考えが頭をよぎる中。


 君は、結局若いお姉さんものを選んだ。


「この本でよかった?」


 少年達にお釣りを渡しながら尋ねると


「ありがとうございます!」

 と少年の1人が急いでカバンに本をしまい込む。


 そして君に、お礼の飲み物を渡して、そそくさと自転車に乗り、住宅街の方へと立ち去って行った。


 君は、その後ろ姿を見送った後、しばらく空地の端でボケーッとして時間を潰す。


(もう終わってるかな……)


 やがて君は家へと引き返していった。


 そして吹き足差し足、身を屈め泥棒のように、門から家の中の様子を窺いつつ、玄関へと向かった。


 玄関の引き戸を少し開け、居間の様子を探る。

 とまだ口論の声がしていた。


(まだかよっ)


 君は、音のしないように引き戸を閉め、吹き足差し足、身を屈め泥棒のように玄関から、門までの砂利道を音を立てず進んで、やっとこさ道路まで引き返す。


「ふぅうう……」

 疲労のため息を君は漏らした。


 とその時だった。


「何をしているんですか?」

 キビキビした口調で、君は背後から声を掛けられる。


 驚き振り向くと、そこには自転車に乗ったお巡りさんがいた。


「はぁ!? お巡りさん!?」

「……何をそんなに驚いているんですか?」


お巡りさんは、あらかさまな疑心の目で以て、驚いた君を上から下までを舐めるように見る。


「なっ何もしておりませんっ」


 君をそう言って頭を下げた。


「ここは君の家?」

「そうです……けど……」

「それにしては、コソコソしてたね」


 お巡りさんは自転車から降り、君の元へやって来る。


「なっなんですか!?」

「最近、ここらでちょっと空き巣被害が多発しててね」

「そっそうなんですか……」

「一応、持ってるカバンの中身だけ調べさしてもらって良いかな?」


 君は全身から汗を拭きだし、体中の震えが止まらなくなる。


「さっきも、この隣の家で下着が盗まれててね」

「いや、これは僕のです。何も入ってません!」

「見るだけなので、ご協力お願いしますよ」

「嫌です!」

「どうして抵抗する!」


 お巡りさんの手が手提げカバンを掴む。


「やめて! これは駄目! やめてぇ!」

「離しなさい! その手を離し――」


――バンバンッ! バチバチ! バンバンバンッ!


 火花を散らしながら激しい破裂音が、お巡りさんの背後で起こった。


「なんだ!?」


 君とお巡りさんが混乱する中、煙玉が放り込まれる。

 真っ白な煙が君達を包みこんだ。

 驚きで、お巡りさんの手がカバンから離れる。


「早く逃げて、お兄さん!」


 エロ本を買ってあげた少年達だった。


 君は、一目散に走りだす。


「あっ待てぇ!」


 追いかけようとするお巡りさんに、大量の爆竹と煙玉が投げ込まれた。


 激しい破裂音を背後に、君は必死で走る。


 逃げ切れることができた君は、夜になるまで身を隠してから帰宅。


 さすがにもう、口論はしておらず、父と母は居間にいて、台所には誰もいない。

 君は、ささっと横切り、階段を登り自分の部屋に入る事に成功した。


   ◇


 あれからずいぶん経った……。

 あの少年達の事は、未だに思い出される。


 あのエロ本はまだ彼らの誰かの手元にあるのだろうか?

 僕の、あの子にそっくりだった表紙のエロ本は、もうない。

 でも彼らのは初めてのエロ本だ。特別なものだろう。


 お姉さんモノでよかったのだろうか?

 巨乳、ナース、女子高生……、自販機にはいろいろあったなぁ。


 もう今の時代、エロ本というものは廃れてしまった、

 規制は酷くなり、今の少年達のエロ事情は大丈夫なんだろうか?


 そして彼らは今、立派な「大人」になっているのだろうか……。


   The Heartful end.

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