11

 君は、カバンにエロ本を忍び込ましたまま、そしてパンティを穿いたまま、家族団欒で夕ご飯を食べる事となった。


 君の両親は、共に食卓を囲む我が子が。ショッキングピンクのパンティーを穿いているのも知らず、家族団欒を満喫しようとしている。


「こうして、皆で食べるの久々ねぇ」

「そうだなぁ」

「お父さん、泊りがけの仕事や、残業ばかり、御飯は毎回、こうして皆で食べたいわ」


 母が少し悲し気に、微笑み言う。


「ああ、家族って良いよなぁ」


 父も少し悲し気に、微笑み言っている。


「あっお父さん、ビールついであげますよ」

「鍋は皆で囲むとおいしいや」


 とか両親が感慨深く言ってるのを、君は無視して飯をかっ込み続けた。

 噛むのもあまりせず、ドンドン胃の中に入れていく。


 一刻も早くこの場を立ち去りたい。


 そんな気持ちで一杯だった。

 談笑している父と母の声など耳に入らない。

 がつがつ、ただひたすら食べていると、


「家族のためにやってんだろ!」

 父の怒号が聞こえてきた。

「何よ、そればっかり!」

 と母の喚き声。


 きっかけが何かもわからないが、再び父と母の仲が悪くなってしまっている。


 君は箸を止め、様子を窺っていると、

「いい加減にしろ!」

 と父が椅子から立ち上がった。


 その拍子に、カセットコンロの上でグツグツいってた鍋がひっくり返る。

 避ける間もなく、煮えたぎる鍋の中身が君の下半身に掛かった。


「うわぁぁ! 熱いぃ!」


 君は、仰天して立ち上がる。

 中身をすべてぶちまけた鍋が、空になって床に落ちて鈍い音を立てた。


「きゃあああああっ!?」

 母が、仰天して悲鳴を上げる。


「大丈夫か!?」

 と父が、仰天しながらも、

「早くつなぎを脱げ!」

 と的確な指示を君にしてきた。


「早く脱いで冷やさないと! 早く脱いで!」

 と母が叫ぶ。


 君は、

「そんなに熱くない!」

 力の限り、

「そんなに熱くない!」

 と立て続けに2回叫んだ。


 今まで三人で突いてきた鍋だから、その温度は皆が知っている。


「そんな分けないだろ!」

「脱ぎなさい、火傷になるわ!」


 と親が言ってくるのに対し、

「そんなに熱くない!」  

 君は叫び答えた。


 そのうち、聞き分けのない君を無視して、母がつなぎに手を掛けようする。


 のっぴきならない状態に追い詰められてしまった君は、


「ああもうっ、こんな家庭はうんざりだ!」


 君は父を突き飛ばして階段を駆け上った。


 自分の部屋に飛び込み、一階に向かって、

「ひとりにしてくれ!」

 と叫ぶと、急いでつなぎを脱いで、君はスケスケパンティー一丁で部屋を転げまわった。


 下半身は真っ赤になっている。

 空気に触れるだけで痛い。

 冷やしたかったが、下には降りられない。

 ので君は我慢して、耐え続けた。


 そして夜中……。


 皆が寝静まったころ、君は台所に飲み物を取りに行くと、階段の所に手紙が置いてある。


 何だと思って見て見ると、


   お前の気持ちも知らないで、すまん  父


 と書いてあった。


 これ以降、あんなにケンカの絶えなかった君の両親は、全くケンカをしなくなった。


 ついでに、父は週に一度は必ず早く帰ってきて、夕ご飯を家族と食べるようになる。母も、帰って来る日は手間ひまをかけて用意した。


   ◇


 あれからずいぶん経った……。

 この話は、夫婦の絆を修復した子供からの訴え、とかいう味付けをされ、君の両親は親戚に聞かせたりしている。


   The True End.

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