とある羊飼いの青年と、その彼を見守る神様の物語。
です・ます調のやわかい文体が印象的な、どこか童話のような雰囲気のお話です。
とても優しい雰囲気のいいお話……のように見えるというか、いや確かに「いいお話」には違いないはずなのですけれど、しかしどうやっても拭いきれない一抹の不安がとても素敵。
読んでいる最中、常にまとわりついてくる何か危うさのようなもの。
よくよく見れば正解は最初から示されているというか、少なくとも「なんの確約もされていない」ことは冒頭の時点で示されているわけで、なのにいいお話っぽいのがなんだかゾワゾワする、その感覚がとても楽しいです。
いや、お話そのものが「いい話」なのはある意味事実というか……彼自身にとっては幸福であったり、また結果的にはいい方に向かっている(=おそらくそれがなければもっと悲惨だった)とも言えるわけで、もうどうやっても安易に良し悪しの判別ができないところが大好き。
ある種、タグが答えといえば答えなのですけれど、とまれ「神」の存在感の異質さが印象深い作品でした。