CHICKENはちっちゃくなる

 僕には家族が四人いる。

 父さん、母さん、お姉ちゃん、そして、CHICKENだ。


 僕達の村は、とても貧しくて、全員いつもお金に困っていた。

 だからご飯に食べるのは芋のスープや、虫なんかが食卓に並んでいるのが当たり前だった。


 けれどある時、優しい人が来て、お金をくれたらしく、僕たちは今までより良くなった。

 その際に、我が家に来たのが CHICKENだ。


 こいつは家族の誰よりも早起きをする。

 それまで自分は、村の中で一番早く目覚める自信があった。


「COC-E-COC-CコケコッコーO!」

 そういって、CHICKENはけたたましい鳴き声で夜明けを知らせるのだ。


 そして、僕は人生で生まれて初めての挫折を知った。

 けれど、それは同時に最高のライバルを見つける事ができたのだった。


「やるな! CHICKEN!」

COCEコケ!」

 それから僕らは、最高の親友となった。


 朝はどちらがより早く起きれるか競争し、一緒に同じ飯を食う。

 そして昼は一緒に水を汲みに行き、夜は同じ部屋で寝る。


 僕らは兄妹以上の固い絆で結ばれている。そう言い切れるほどの仲になっていた。


 それでも、喧嘩することはしょっちゅうだった。

 特に母さんが最近生まれた料理である、ターキースープが晩御飯に出た時は、それが顕著に表れた。この日は、僕とCHICKENによる仁義なき争奪戦が、我が家の恒例行事となっていた。けれど、最後には仲直りとして、僕が謝って、スープを飲ませてやる。


 そんな関係が、三カ月ほど続いた時だった。


「CHICKEN……お前最近朝どうしちゃんだよ……」

 毎朝競うように行っていた、早起き競争に、五日続けて勝利したときだった。

 最近、CHICKENが調子を崩していたことには気が付いていた。だから、今日は少し寝坊した振りをして、勝ちを譲ってやろう。

 そう考えていた。しかし、いつまでたっても、CHICKENの鳴き声は聞こえてこない。

 これは少しは怒った方がいいなと考えがえていた。

「CHICKEN、そろそろ起き――」

COCOCEコケ……」

 すると、嘴の先から、泡を吹き、白目をむいているCHICKENがそこにいた。

「おい! 大丈夫か!」

 こういう時の対処は両親から聞いている、まずは沢山声をかける。しかし、CHICKENはそれ以上に泡を吹き出した。

「おい! しっかりしろって!」

「ふぁぁ…… アンタ、どんだけ早い時間だと思ってるのよ……」

「姉ちゃん!」

 散々大きな声を出したからだろう、いつもはねぼすけな姉も目覚めたみたいだ。

 少なくとも姉は自分よりも頭が良い。

「で、それだけ騒いだ理由があるんでしょうね。ないなら――」

「違うんだ! CHICKENが!」

 いつもは喧嘩ばっかりしているが、こんな時に一番頼りになるのは姉ちゃんだ。

 服の裾を掴み、CHICKENの元へと引っ張ってきた

「ちょちょっと! 何――」

 抗議の声を挙げようとしたさなか、姉ちゃんも事態が呑み込めたようだ。

「これ、いつからこうなった?」

「朝起きて見たら、なってた……」

 そこまで言って涙が溢れそうになるのを咄嗟に堪える。CHICKENの前でそんな子供っぽいことはできない。そんな僕を見て、姉ちゃんはぎゅっと僕を抱きしめてくれた。

「よし、私が婆様の元に連れてくから、一回アンタは寝ときなさい」

「何言ってんだ! 俺も付いてく!」

「騒がしいアンタがいたら、出来る儀式もできなくなるね。だから家で大人しく帰りを待ってなさい」

「……はい」


 そうして、姉はCHICKENを抱えて、村一番の物知りである婆様のところに連れて行ってくれた。

 きっと、元気に帰ってきてくれる。


 その日食べたターキースープは、今まで一番固くて、味気無かった。


 そうして二日がたった。その日、姉に連れられ、CHICKENが帰ってきた。

「CHICKEN、お帰り!」

KOKE-KOコケコ!」

「なんかお前、ちょっとしない間に痩せたな! 一杯ご飯食べよ!」

KOK-E-KOKコケコッ-KIOコー!」

「鳴き声もちょっと変わってるし! でも、元気で良かった……」


 僕はまた、CHICKENとの暮らしが始まった。

 婆様がいうには、あちこちに連れまわしたりしたせいの、運動疲れだそうだ。そしてCHICKENの声を聴いたところ、あんまり夜遅くまで喋るのは疲れると言っているらしい。僕にはわからなかったから、朝の早起き競争以外はしなくなった。


 それでも、僕らは変わらずに友達だった。


 ただ、その日以降、数カ月に一度、婆様の元に連れていかれることが増えた。健康チェックだと言って、帰ってきたときに、でっかくなったり、あちこち走り回ったりするのは不思議だったが。


 けれど、僕は満足だ。

今日も僕はCHICKENに七面鳥汁ターキースープを食べさせてあげるのだ。


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