第12話決断の時!
沖田さんと改名案を考えた日から2日後の朝。前川邸西の蔵横。近藤さんを始めとする幹部組が集まる部屋に私と中沢さんが入る。中沢さんは朝から私のことを鬱陶しそうに睨みつけていた。中沢さんは転生する前、令和の時代でも「自分よりも強い人としか結婚しない。」と豪語していたく らいだ。自分よりも後に来たのに、強いという理由で幹部と同じ扱いをされている私が気に入らないのだろう。私は中沢に導かれるまま、沖田さんの隣に座った。沖田さんが横を見ながら
「おはょ。よく寝られた?」
と声をかけてくれた。私は嬉しくて笑みで返そうとすると、中沢さんは私の後ろに座って、肩を叩いた。
「幹部が集まる中です。私語は慎んでください」
私は中沢さんの言う通り、静かに沖田さんの問いに答えず口をつむった。土方さんが人数を確認したあと、口を開く。
「2日前に俺達は、改名案を総司と武田に考えてもらった。今日はその内容を発表してもらう」
沖田さんは自分の懐から半紙を出すと、文字で「新選組」と書いた紙を見せた。
「これから私たち浪士組は、沢山の選択を強いられる事となるでしょう。その時、時代の流れと共に新たな選択を選ぶ組として、日本を支えて行ければと思い、「新選組」と名を提案させていただきたいと思います」
「新選組」という名を聞くと、各隊長達は各々納得した様子で互いに新たな名前を口々にした。永倉さんが顎に手を当て、頷く。
「総司も武田殿も良い名を考えたね。響きもいい。僕は賛成だ」
永倉さんの言葉に続くように賛成の声が広がる中、土方さんが咳払いをした。
「却下だ」
土方さんが却下すると、永倉さんがつっかかった。
「なんでですか!こんな素敵な名前なのに」
土方さんは沖田さんの半紙をもう一度見ると、沖田さんの元へと歩み寄り、沖田さんの半紙を手に取った。
「この名前、会津藩士の警備隊の名前と全く同じ名前だ。こんなの勝手に貰えるわけないだろ」
ゲームの展開と違う事に混乱した。「新選組」の名前を考えるのは「雷鳴」の主人公寺本あかりと沖田さんで行い、「新選組」と二人で決めて、それが採用される。しかし、会津藩士の警備隊と同じだと言うのは、本当の歴史通りだ。どうしたものかと考えていると、齋藤さんが手を挙げた。
「その件ですが、俺が前々から手配しておきました」
そう言うと齋藤さんは懐から手紙を出した。齋藤さんはその手紙を土方さんに手渡した。土方さんは手紙の中を開けるとそこには会津藩の長、松平公から「我が会津藩は、壬生浪士組を「新選組」と名を改める許可を与える」との事であった。土方さんは頭を掻きながら頬を緩ませた。
「こりゃ1本取られたな」
土方さんは近藤さんに手紙を渡すと、声を上げた。
「会津藩の松平公からもお許しを貰った。俺から言うことは何もねぇ、後は近藤さんに任せたいと思う」
近藤さんは手紙を一通り目を通すと、首を縦に振った。
「お前達の顔を見れば分かる。お前達、この名前がいいんだな?」
近藤さんをその場にいた全員が見た。互いに見えない糸で繋がっているような信頼感が感じられた。近藤さんは山南さんを呼ぶと、口を開いた。
「山南さん。俺達壬生浪士組は、今日から名を改め、「新選組」とする。書き留めてくれ」
幹部たちは新たな名前を気に入ったようで各々隣の席で座る人同士で名前について話し合っていた。沖田さんがふとこちらに振り返ると、笑って話しかけてきた。
「お手柄だね。剣の才覚だけじゃなくって名前のセンスも有るなんて、流石武田君だね」
沖田さんの茶化すような言葉に私は自然と笑いを零した。
「もー2人で名前を作ったじゃないですか。沖田さんのアイディアあってのものですよ」
そこには10人以上の隊士達が集まっていた事も忘れて、私と沖田さんはただ自然と、笑顔で話をしあっていた。その時自分の心の中に暖かなやさしい気持ちで溢れるのを感じた。話してる内容は面白くもないのに、楽しいという感情と満たされたような感覚がある。その時頭の片隅から、声が聞こえた。
「あかりちゃんはあかりちゃんを幸せにしてくれる人と一緒に居る方がいい」
それは以前近藤さんに言われた言葉だった。あぁ、幸せってこういうことを言うのかもしれない……私は笑顔の中にそれを感じた。私は多分……沖田さんのこの笑顔を見られたら幸せだ。笑い合う2人に近藤さんは後ろ髪を惹かれていた。
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会議終了後、私は稽古場に向かおうと、一人で歩いていた。その後ろから話しかけようと近藤さんが歩み寄るも、それに目もくれず、沖田さんが私に近寄って話しかけた。その顔はお互い気の許した中のように、親密な関係に見えた。山崎さんは近藤さんの様子を見兼ねて、声をかけた。
「近藤さん、どうかされましたか?」
近藤さんは、後ろの山崎さんに振り返り、唖然とする中、頭をかいて愛想笑いをうかべた。
「ザキか、びっくりした……なんだ、今日はいい天気だなと思って空を見ていただけさ」
山崎さんはどことなく敗北感に駆られながらも、笑う近藤さんの横に立った。
「局長、僕は一部始終知っているので、大丈夫です。話相手になりますよ」
近藤さんは肩の荷を下ろし、ポツリと話し始めた。
「なぁザキ。ザキは知らんと思うが、総司は昔、試衛館に来た頃。兄弟子である俺たちを敵のように見ていてな。家族に捨てられた子犬のように毎日威嚇していた。兄弟子達もそんな総士が可愛くなかったんだろ。よく総司のことを虐めていたさ。だが、俺はよくあいつに絡む事にした。あいつには信頼をおける家族の様な存在が必要だと思っててな。弟のように可愛がったさ。その思いが通じた。あいつも俺を兄貴のようにしたってくれる様になったんだ。だが、あいつには他に信じるものがい無さすぎた。俺以外のやつに全然信頼を置いてなくてな。腹の中まで話せる相手が俺以外にいなかった……だが……あいつのあの笑顔。あの信頼っぷり……間違いなく俺が築いた絆と同じ物。いや、それ以上の何かを感じる。まだあいつの中でそれは芽生えていないが、この世界で唯一あいつが心を置ける可能性があるのは、武田観柳斎。たった1人だろう……」
近藤さんはそれだけ言うと私の元まで歩いてきた。
「たけっちゃん」
私はあの夜の答えを話そうと口を開けようとした時。近藤さんは儚い笑みで言葉を散らした。
「君はこの新選組に必要な存在であり、総司にとって最も大切な仲間のひとりだ。これからも俺達新選組と共に戦ってくれ」
近藤さんの背中はどことなく悲しく見えた。その背中はどことなく懐かしく感じる。私はこの感じを知っていた……
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モヤと共に映像がまた流れ込んでくる。
「総二郎にも俺達と共に京の都に来て欲しい!共に御門の為に戦ってくれ!総二郎!!」
ーー……私がもし●●でなければ、共に戦えたのだろうか……
ーー彼が血にうえ、人斬りの道具のように扱われる事は私がさせなかった。
わたしはモヤの中、声を振り絞り叫んだ。
「私も行きたいです……行かせでください……!」
ーー近藤さん。お願い、私を連れてって!!
ーー彼が道を踏み外す前に……!!!
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あのモヤはまた「記憶の欠片」なのだろう。私は過去に近藤さんの悲しみの背中とともに、誘いを断っていたんだと思う……悲しげな背中を目で追いながら心の中で決心を固めた。もう迷わない。沖田さんを幸せにするのが私の幸せ。近藤さんの思いの分まで私は突き進もう。
「ありがとう……近藤さん……」
空は清々しい青空なのに、どこか虚しい色に見えた。
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save point
好感度メーター
近藤→blocking(選択不可)
土方→10%
齋藤→45%
永倉→30%
原田→!!WANTED!!
井上→15%
谷 →5%
尾形→??
?→0%
?→0%
?→0%
(Secret)→30%
!!WANTED!!
root→永倉新八
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼あとがき✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
root近藤を読んでいただきありがとうございました!
悲しい事に、近藤さんは自ら身を引くという形を取りました……散り方は漢気で溢れるように思考してみました。
私の近藤さんの印象は、銀魂の印象がすごく強くて、女にだらしない(というかストーカー)だけど、仲間を信じすぎるぐらい仲間思いで、自分では長としての振る舞いはあまりに合わないと思うものの、気づかないうちに回りが着いてきてしまう人望。何気なくみんなを引き付けてしまう暖かな人だと言うイメージでした。
今回の作品を書くについても、その印象が強くでてしまい、暖かさを重視して描きました。ストーカーはしてませんよ?笑
仲間を信じ、仲間の為なら自分の犠牲もいとわない。そんな近藤さんだからこそ、主人公あかりが1番初めの壁になる相手にふさわしいと感じ、近藤さんルートから始めました。皆さんはどーですか?近藤勲、好きですか?好き!?ありがとうございます!そっちの漢字は私の最推し、銀魂の近藤勲です(笑)偉人の近藤さんは勇さんと言います。皆さん気になった方がいらっしゃいましたら、近藤勇さんをぜひ調べて見てください!
ちなみに「小説家になろう」では、そんな「近藤さんルート」バットエンド編をお送りします。近藤さんrootを選んでしまった主人公の行方はいかに…
さぁ次回のルートはまだセリフしか出て来てないまさかのぱっつぁんルートです。ここからなんとあの有名な池田屋事件を挟んでいきます。今回は戦闘もなく、比較的穏やかなルートで、主人公の蒼井ちゃん(転生後寺本あかり)もあの時間刀を使わなくてよかったのですが……本格的な戦いが増えるため、余儀なく使用を強いられる可能性もあります。
記憶を失いつつ戦う主人公の姿。また沖田さんとの思い出の中で取り戻されていく「記憶の欠片」達……果たして蒼井桜の運命は……!?これからも「攻略キャラクターに負けるわけがないだろ!?」をよろしくお願いします!
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