第5話
あなたはゆっくりと目を覚ます。見上げると三枝の顔が目に入る。
三枝「あ、起きた? 気持ち良さそうに寝てたわね。どれくらい寝てたかって? んー、1時間くらいね。あまり寝過ぎるなら起こそうと思ったけどその必要はなかったわね。どうしたの? 顔が赤いけど熱でもある?」
三枝、自分のおでこをあなたにくっつけてくる。あなたは恥ずかしさで余計に体温が上がる。
三枝「ん? 余計に顔が赤くなったし、体温が上がってる? わわ、ちょっといきなり押しのけないでよ! びっくりするじゃない。え? びっくりしたのはこっちだ、顔が赤かったのは寝顔を見られて恥ずかしかったせい? しかもその後おでこをくっつけてきたからなおさら酷くなったから顔が赤かっただけだって……ぷっ、なにそれ、おっかしいわ。あたしとあんたの長い付き合いなんだからそんなに恥ずかしがることないじゃないの。それよりぐっすり眠れた?」
恥ずかしがりながらも頷くあなた。
三枝「ふふ、よかったわ。んー、それじゃ今からどうする? 時間は夜九時かあ……時間過ぎるのあっという間だなあ。ねえ、これからなにする? ん? 先にお風呂に入ってきたらって? ああ、そうだね、一日動いたから汗かいてるだろうし。じゃあお言葉に甘えて先に入るね」
風呂場に向かう三枝。ふとなにかを思い出したように立ち止まり、こちらを振り返る。
三枝「そういえばお風呂って鉄板のネタがあったよね」
そう言ってにやっと笑ってあなたの元に近付いてくる三枝。耳元に口を近づけ甘ったるい声で囁きかけてくる。
三枝「ご飯にする、お風呂にする、それともわ・た・し? あはは! めちゃくちゃ照れてる~。これお約束みたいなものだからさ、二人だけの状況だしやってみたくなっちゃった。え、そんな馬鹿なことをしてないでさっさと風呂に入ってこい? はいはい、照れ隠しかなにか知らないけどまくし立てるように喋らない。さてからかいがいのあるあんたを充分に堪能したところでゆっくりお風呂は楽しませてもらうとしますよ~」
三枝は楽しそうに風呂場に向かっていく。
*
三枝「やー、喋った、喋った。お互いにお風呂から上がっていろいろ話しこんでたら時間確認するの忘れてた。今何時?」
あなたと三枝は時計を確認する。部屋の時計はちょうど0時を指し示していた。
三枝「うわ、もうこんな時間。もう少し話をしていたいけどもう寝ないとね。ん? あ、あたしが寝る場所をわざわざ用意してくれたの? え、自分はリビングで寝るからお前はこの部屋のベッドで寝ろって。ええー、あたし一人で寝るの~。女の子一人ほったらかしとか酷くない? なになに。男女が同じ部屋で寝るのはいろいろとまずいだろって……もお、お堅いなあ。そんな気なんてお互いないでしょうに。はいはい、分かったわよ。あんたの言いたいことも分かるしさ。じゃあ私はここで寝させてもらうわよ、おやすみ」
三枝、若干ふてくされたようにベッドに寝転がり毛布を被る。あなたはその様子を見届けて部屋を出る。
*
リビングで寝ているあなた、物音が聞こえて目を覚ます。
三枝「あ、起きた? やっぱり寂しいからこっちに来ちゃった。なにをやってる、部屋に戻れって? 嫌よ、私はさみしいと死んでしまうんです、なのであんたには添い寝を命じます。なによ、その呆れ顔、戻れって言ったって私は言うこと聞かないからね。勝手にしろ……おお、ついに観念した。じゃあお言葉に甘えて」
あなたの寝ていた布団に潜り込んできた三枝。背中にぴったりくっついてくる。
三枝「ふふ……暖かいわね。あたし、親が二人とも仕事で忙しくてさ、一人で家で過ごすことが多くて……いや、親二人のことが嫌いなわけじゃないよ。二人ともあたしに対して優しいし、話も聞いてくれるし。ただ……もう少し一緒に居て欲しいなって思っちゃう時があってさ。わがままだって分かってるんだけどね。嫌な子供だよね、あたし。必死に頑張ってくれてる二人にこんな感情抱くなんてさ。え……嫌な子供なんてことはない、そういう状況で寂しいと感じるのは普通のことだと思うって……ありがとう。ふふ、ありがとう。やっぱり優しい人間だわ、あんた。……ねえ、しばらくの間、こうしててもいい?」
三枝の言葉に頷くあなた。彼女はあなたの言葉に甘えることにしたのか自分のおでこをあなたの背中にくっつけてくる。そのままあなたの胸を両腕で抱くようにして体を密着させてきた。この状態で三枝があなたに話しかけると耳元で話しているような形になる。
三枝「しばらくこうさせて。……こういうの落ち着くなあ。やっぱり誰かといるのがあたしは好きみたい。一人でいるのはやっぱり寂しい。え……お前のしおらしい一面が見れたから今日はいい日だって……もう、そういうことは言わなくていいから! あたしも恥ずかしいのよ! こういうことを正直に打ち明けるのって! あー! クスクス笑うなあ! あたしはからかうのは好きだけどからかわれるのは大嫌いなのよ!」
そのまま恥ずかしさを隠すように三枝は背中に頭突きしてくる。
三枝「はい……? 痛いからやめてくれって……嫌! あたしをからかった罰よ! ちゃんと謝るまでやめないから! はいはい、すいませんでしたって……それ絶対反省してないでしょ!」
ぎゃーぎゃーとわめき立てる三枝。やがて疲れたのか黙り込む。一呼吸おいて三枝はあなたの耳元で小さな声で話出す
三枝「はあ……まあいいわ。こんなことで騒ぐのも馬鹿馬鹿しいし。だからその……さっきも言った通り、今日は一緒にいて欲しい。さっきはしばらくって言ったけど……今日はこのまま一緒に寝てもいいかな?」
無言で三枝の言葉に頷くあなた。
「ありがとう……今日はぐっすり眠れそうだわ。それじゃおやすみ」
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