第6話 奈落へ
「はぁー、アンタとユウタ君がデキてたなんてさー。マジで意外なんだけど」
「・・・・」
「どうやってオトシたわけ?」
「・・・向こうから言い寄って来ただけ・・」
「うっそ・・・。本当なの?」
「アタシの何がダメだったんだろ・・・?これでもガンバッたつもりなんだけどなー」
「・・・・・」
普段ではまず感じないであろう、靴箱との距離がやたら長く感じる。
「でさー」
この女は、まだ退屈を極める話をするつもりでいるらしかった。わたしの前に
「・・・なんであの時、のんきに水なんか飲んでたわけ?急ごうとか思わなかったの?」
足を止めた。いや止まったと言うべきか、無意識に足は動くことを拒絶した。加速度的だった自身の足取りは、これ以上コイツと同じ空間に居たくない気持ちと、この僅かな罪悪感を刺激する言葉を聞きたくなかった二つの理由からきていたのだろう。
しかしその
「・・急いでるつもりだったし・・・ちゃんと保健室に向かってた」
愚問によって
「ふーん・・・。てかさ、なんでもっと心配してくれなかったの?
やはりこの女はイカレている。人を殺すと
死人相手に逃走することも、急を要することのいずれも無駄なこと。ただ黙って、大人しく眠っておけばいい存在に
そのうえ、こうして元気そうにわたしを
「・・・・」
その黒く色めき立つ思いの叫びは
その鮮度の良い恐怖が、わたしの口元を監視することで不適切なワードを
「・・・疲れてたから」
そんな苦悩という
「・・・・ふぅん」
呆れたようで、不満そうでもある声色が風に乗ってやってくる。
「まあいいや。アタシもう先いくから・・・じゃあね」
すると納得したのか180度クルリとまわり、歩き去って行く
そしておのずとその背中を目で追ったとき、奴は示し合わせたように振り向いて不敵に笑った。
「あぁそうだ・・・アンタに一つ言っとくけど・・」
わたしには、河上が何を言おうとしているのか分からなかった。けれども、その表情や立ち振る舞いが、女子ランキング3位のモノになったことだけは確かだった。
「アタシさぁ・・・え!?」
しかしその
「キャッ!」
突如として床に現れた巨大な穴は夏の暑さをものともせず、わたしの全身を
そんな色とりどりの思考は床に穴が開き、世界がわたしから去っていこうとし始める瞬間に消えた。なぜならフリーズした体に反して頭は
そこでわたしは落ちながら、過去のモノになりつつある
わたしが生まれた世界、わたしをここまで育ててくれた父、家でいつも
布団が恋しい。父に会いたい。
その
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