第17話 ダマブア防衛戦 ~ガルア~
ガルア視点
ガルアはハルカに思う存分暴れてこいと言われ、とても喜んでいた。
体長30mを超える巨大な真紅の竜であるガルアの眼下にはおびただしい数の魔物がいる。
魔物を踏み潰し、尻尾で凪ぎ払い、爪で切り裂く。
ギュルアァァァァァ!
こんなに暴れられるのは久しぶりだ。
ハルカに出会う前、住んでいた火山には敵がおらず、とても暇だった。
たまに火山から下りては、獲物を仕留めていたがそれは食事のため。
戦いに明け暮れていたのは、いつだったか。
ガルアは竜の中では、かなり若い方だ。
竜の寿命は非常に長く、一説によれば一万年以上も生きるとも言われている。
ガルアも生まれてから数百年は経過していた。
そのため、暴れまわっていた頃の記憶は過去の記憶と化している。
ハルカと出会ってからも、狩りをすることはあっても、思う存分に力を解放することはなかった。
だが、それでもハルカと一緒に見るものは、全てが新鮮で何よりも温かかった。
ハルカを乗せて飛ぶ世界は広く、今まで自分が見てきた世界は何てちっぽけだったんだと思い知らされた。
そして、ハルカやハルカの仲間達から掛けられる言葉がとても優しく、心地よかった。
ハルカ達の言葉は、全てがわかるわけではないが、なんとなく言っていることは理解できた。
ハルカが何者かはわからないが、役目を任された以上、自分よりも遥かに強いハルカのために、自身に出来ることを全うする。
ギュルア!
魔物を踏みつける。
今、自分に出来ること。
魔物を凪ぎ払う。
今、自分がやるべきこと。
魔物を切り裂く。
それは、暴れることではない。
ハルカの前に立ち塞がる敵を少しでも減らす。
暴れられるから嬉しいのではない。
ハルカから必要とされたから嬉しいのだ。
ギュルアァァァァァ!
ガルアは自身の魔力を操り、魔力を溜める。
そして、溜まった魔力を解き放つ。
ガルアの口から超高温の炎が吐き出される。
自身の周囲を円を描くようにブレスで魔物を凪ぎ払う。
ガルアの周りの魔物が殲滅される。
ここにはガルアよりも強い魔物はいない。
自然界の頂点たる存在の竜。
誰もガルアに敵うはずがないのである。
ギュルア!
ガルアは次の獲物を探す。
ゴゴゴゴゴゴ
ガルアは耳障りな音を捉える。
音の出所を探す。
キラン
突如、紫色の光が見えた。
それは数ヵ所で同時に起きたようだった。
ガルアの視線の先、少し離れた奥地に巨大なゴーレムが現れた。
そいつはガルアの大きさにも負けない程大きい。
相手にとって不足なし。
ガルアはそのゴーレムに向けてブレスを放つ。
少し離れていたからか、直撃を受けたにも関わらず、あまり効いてないようだ。
ならばとガルアは翼を広げて飛び立ち、巨大ゴーレムに突進する。
巨体と巨体がぶつかり、巨大ゴーレムが後ろに倒れ、ガルアも勢いのまま魔物の海に飛び込んだ。
巨体の下敷きになった魔物は、そのまま潰されていた。
ガルアと巨大ゴーレムは立ち上がると、体と体でぶつかり合う。
数回、近距離で打ち合い、ガルアの太い腕と巨大ゴーレムの岩のような腕が組み合う。
力比べが始まり、両者の力が均衡する。
均衡を破ろうと巨大ゴーレムが胸部にある赤いコアを光らせる。
ガルアは巨大ゴーレムの次の攻撃を予想し、至近距離で食らってはまずいと考え、翼を広げて巨大ゴーレムを持ち上げた。
そして、そのまま着地してゴーレムの体をうつ伏せに地面にめり込ませた。
巨大ゴーレムの胸部は地面を向いており、地面に向けてゴーレムの攻撃が発射される。
その攻撃で周囲の地面を中心に爆発が起きた。
爆発の余波でガルアも吹き飛ばされてしまう。
ガルアは起き上がり、相手の様子を確認する。
巨大ゴーレムも起き上がると胸部にある赤いコアを怪しく光らせた。
ガルアも迎撃の準備をする。
巨大ゴーレムの赤いコアからビームが発射された。
ガルアも炎のブレスで対抗する。
ガルアと巨大ゴーレムの中間地点で、ブレスとビームが拮抗する。
力が拮抗したと見るや、ゴーレムは出力を上げるためにコアを光らせた。
ビームがガルアに迫る。
ギュルアァァァァァ!
ガルアが雄叫びをあげる。
炎の勢いが増して、押し返し始めた。
巨大ゴーレムも負けじとコアをさらに光らせる。
両者の力は均衡したが、ゴーレムのコアに限界が訪れる。
ミシッ ピシッ パリンッ
巨大ゴーレムのコアにヒビが入り、砕け散った。
そして、炎が迫り、巨大ゴーレムは炎のブレスに呑み込まれた。
直撃を食らった巨大ゴーレムは原型を留めておらず、ガラガラと音をたてて崩れていく。
ガルアは勝利の雄叫びをあげる。
ギュルアァァァァァ!
ガルアの周りに再び雑魚魔物が集まってくる。
ガゥゥ…… ギュルア!
ガルアは、やれやれと首を振り、再び魔物を倒し始めた。
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