寄道・アイスキャンディー・メモリーズ
「そう言えばお前って、何で氷菓子好きなんだ?」
「何でって、好きだからだよ」
「グレシアさんの好みをアレコレ追及しないで下さい」
「してねぇだろ」
「してねぇよ」
「されてないよ。ごめんごめん。好きになった理由を訊いているんだろ?」
「まぁ確かに。ローラスに言われて気付くのは癪ですが、何故好きなのかは聞いていませんでしたね」
「なんでそんなに俺のこと嫌いなの?」
「そういや、確かに急だったよな。お前が氷菓子ばっかり食いだしたの。六年前ぐらいとかからか。丁度……あぁ」
「何ですかその反応」
「そうだね。その頃に、丁度私の母親が死んでね。父親はそもそも物心付いた頃から居なかったからさ、父親代わりに母と懇意にしていたディグが私の身元を代わりに引き受けてくれたのさ」
「へぇー」
「へぇとは何です! グレシアさんのお話ですよ!? 盛大な拍手をなさい!」
「要らないよ」
「……まぁ、そういう経緯だったな」
「何で忘れているんだ君が」
「で?」
「そうそう。それでね、彼が何度も私の知識欲を満たす為に散歩に付き合ってくれたんだけど、彼が初めて買ってくれたのが屋台の氷菓子だったんだよ」
「そうだったんですね……」
「拍手してないじゃん」
「黙れ」
「……」
「……」
「当時の私は母親を亡くしたこともあって、精神状態がかなり不安定でね。何を食べても、何を飲んでも味を感じない始末さ。酷いだろう?」
「そうだな。お前がそんなに母親想いだったとはな」
「ローラス!! グレシアさんに対し何たる無礼……!」
「別にいいよ」
「グレシアさんの言葉に免じて、今日だけは許してあげましょう」
「毎日許してあげて」
「毎に……明後日までは許してあげましょう」
「アリアにしては頑張ったね」
「ありがとうございます」
「でも、初めて買ってもらった氷菓子はね、味がしたんだ。私はそれが忘れられなくてね、何度も何度も氷菓子を買ってもらった。探偵になった後も、自分で何度も買ったんだ。気付いたら好きになってた。それだけさ」
「自分では作らねぇのか?」
「勿論作れるよ。ただ私が氷菓子に対して特別美味に感じるのは、単に味や温度や食感だけではなく、屋台のものという付加価値が影響しているんじゃないかなと思ってね。仮説は大当たりでさ」
「へぇー」
「お前……」
「訊いたにしては薄い反応だね」
「いや、もっと軽いエピソードが出てくると思ったら、思ったより重い話が出てきてなんか違ぇなって」
「……」
「……」
「……」
「チッ、煙草切れた」
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