第24話絶叫

 意識がまだどこかにとんでいったままだ。線香の煙にまかれているかのようにかすみがかっている。

 アパートの駐車場に車を停める。降りると、ワン太郎の吠える声がした。不審者か? と見まわしたが僕意外は誰もいない。どうやらいつもと雰囲気が違う僕を、見知らぬ人間と判断してしまったらしい。とても賢い犬だ。

「ちがうよ、僕だよ」

 アパートの扉と自分とを指さすと、ワン太郎はなぁんだ、と言いたげな顔をして、ふん、と鼻を鳴らした。しかし、扉を警戒したようにじっと見ている。

「?」

 ワン太郎の視線をたどる。

 と、そこには水色のワンピースを着た幼いこどもがちょこんと座っていた。

「――ばぁちゃん!?」

 僕の絶叫に、ばぁちゃんは、えへへ、と、ばつの悪そうに笑った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る