第22話メッセージ
目覚めると、部屋の中のなにかが違っていた。
なんだろう。いつもと同じに散らかっている。昨夜は動画見ながら寝落ちして、だのに、ベッドで寝ている。すぐに思いついた違和感はそのくらいだ。
オカルトに耐性がついたしオカルトそのもののばぁちゃんがいるからと、夏によくやるホラーな番組を見たらば、やっぱりムリで、むしろばぁちゃんのほうがおもしろがって、延々と上映会をさせられた。のが、昨日の夜だ。床にころがってからの記憶がない。
「まぁいいや。ばぁちゃんおはよ」
ばぁちゃんは朝、僕が起きるとテレビを小さな音で見ている。いつ起きるのか、そもそも眠らないのかもしれない。番組が珍しいんだそうで、ばぁちゃんのベッドにしているソファに鎮座して、リモコンも使わずザッピングしている。霊的なものと電波的なものは相性がいいんだそうだ。
そのばぁちゃんは、僕が起きると振り返って、おはようゆうちゃん、と返してれる。
その姿がない。もちろん、テレビもついていない。
「ばぁちゃん?」
バスタオルが四隅をそろえてたたまれている。その隣に座っている。僕に見えなくなっただけかと、そのあたりに手を伸ばしてみたけれど、なにもない。
「トイレ? まさかな」
声をかけながら風呂場やトイレ、荷物のかげまで確認した。いない。僕の後ろについていたとしても、すぐにばれる狭さだ。
僕は気落ちしてソファに座った。ばぁちゃんがいつも座っている真ん中をあけて、たたまれたバスタオルの反対側に。
なにかメッセージのようなものは残っていないだろうか。そのあたりを探した。何も出てこない。考えてみれば僕がどうぞと意識して手渡した、それも特定の物じゃないとさわれないんだった。それなら電化製品は、とスマホを手にした。なにもない。スマホもパソコンも珍しがっていただけで操作はわからないようだった。当然だ。ばぁちゃんになじみのある家電はテレビくらいで、それだって薄いのとリモコン操作なのに驚き騒いでいたのだから。
「なんだよ。七夕まではいるって言ってたじゃんか」
今日のお供えのエクレアはばぁちゃんのリクエストで買ったのに。
くさくさした気持ちになった。それでも一日が始まる。やることは残っている。
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