第4話

「まぶしい。ここは?」


 見覚えのある天幕が見えた。わたくしはベッドに横たわりながら、周囲を見渡す。使い慣れた鏡にタンス、化粧道具がここにある。間違いなく、わたくしの部屋だった。


「わたくしは、いったい、どうして? ハデス様に胸を……」


 すると、トントントンとタイミングよく、ノックのする音が聞こえた。


「ラダマンです、お嬢様よろしいですか」


「どうぞ」


 そして、老齢の執事ラダマンが部屋へと入ってきた。


「お嬢様、さきほど、ドレスが到着しました。どうぞこれを」


 わたくしに手渡されたのは、ハデス様が選んでくれた白のドレスだった。


「ど、どういうこと……」


 ……まさか……そんなことがあるわけないわ。


「どうしました、お嬢様?」


「ラダマン、教えてくれないかしら……」


 今日は、何年、何の日であるかをラダマンに確認すると……


「本日は……花嫁の日ですね」


「う、うそっ!!」


 思わず、令嬢らしくない声をあげてしまった。


「いやはや、今日のお嬢様は、元気がおありで何よりです」


 ハデス様の別荘へ向かう前日、ドレスを受け取った日に、時間が逆行している。


 あの出来事はすべて、夢だったの?


「それとお嬢様、差出不明なのですが、こちらも届いております。危険があるやもしれませんので確認させていただきましたが、それが、なんとも見事なドレスでして、どのようにいたしましょうか」


 わたくしに手渡されたのは、植木鉢と赤いドレスだった。


 やはり、あれは夢だったのかしら。この植木鉢とドレスを受け取った覚えが全くないわ。それに、この植木鉢は……


『簡単よ、儀式を行いなさい』


 でも、まさかね。

 しばらく、考え込んだ末……わたくしは決心した。


「アダマン、頼みがあるの、今から……」


「分かりました。お嬢様、いえ、……さま」

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