17話 学年末試験前
高校2年の11月下旬になった。そろそろ学期末の試験だ。
「わかったわ。それと春休みはいつごろからかしら?」
「3月14日からですが」
「それまで週1で出勤でお願い。勉強していてね。企画、通りそうなのよ。そうなったら君にも参加してもらうから」
「かしこまりました」
伊丹チーフの試みとは動画と音声ファイルの配信だ。
本店トップ3の執事役を集めて動画と音声を取るようだ。
「これって声優とか俳優とかの領域では?」
「うちの広告費削減よ。
君たちの顔面偏差値とイケボと魔法企画の実績からみるに、
失敗する確率は限りなくゼロよ」
バイトのほうでは高校2年3月になると3人で1グループが結成された。
オレ、栗原祐。
2人目は鮎原リク。
3人目は八神けん。
秋葉原本店でトップ3の人気。
主な活動はポスター撮影と執事カフェオリジナル時店の着ボイス。
(おはようとかだけじゃないのか。ってかセリフ甘すぎだろ!!エロボイスなのだろうか。おれまだ17なんだけどセーフなのか、このセリフたち)
突然フロアに出てこなくなったから
「今までは幻だったのか」や「やめてしまったのか」という問い合わせが殺到しているらしい。
伊丹チーフから「学業に専念しつつ活動を続けています」とのことでSNS上で発表された。
SNS上はそれで収まったらしい。
さて、今日は秋葉原の店舗ではなく品川のスタジオだ。本来は歌をレコーデイングする用なのだろう。音楽系の機材がドドドンとある。
台本を渡され、俺を含め、呼び出されたメンバーは目をぱちくりさせた。
「チーフ、これおれがいうんですか?」
「そう!!『あなたが欲しい』ってせりふあるでしょ? きちんと読んで。世の中の女性をきゅんとさせるのよ」
「キュンって」
男子はいまいちその感覚はわからない。オレを含めてメンバーは首をひねった。
「要するにいつものようにしてればいいってことでしょ。『オレは魔法をかけてあげるぜ。夢のような時間にしてみせるから』ってところだな」
「だね。僕は『お姉さん、可愛がってよ』かぁー。さっすがチーフ!!メンバーのカラーもちゃんとセッティングしてあるねぇ。敏腕~」
さすが先輩メンバーさんたち。順応が早い。
関心するやら尊敬するやらだ。
「でしょ。次の企画もよろしくね」
自信満々にいうチーフ。
チーフの自信に満ちた笑顔の裏にはTV出演という秘策があったのだ。
「「「よろしくお願いします」」」
頭を下げ、キラキラスマイルを披露するトップ3の面々。
深夜枠だが全国ネットだ。そこで色々な質問をぶつけられた。
「成功のきっかけは?」
「チーフのプロデュースのおかげです」
「いいですね。ではこの人は困ったなというお嬢様やお坊ちゃまはいらっしゃいますか?」
「そうですね。お嬢様に関しましては大変良くしていただいて。感謝ばかりです。おぼっちゃまに関しましてはお酒が入った状態でおかえりになられるのできちんと外出できたのか心配にはなりますね」
爽やかな答え方である。
「悠斗さんは親子で勤めているそうですが」
「そうですね。父が千葉で勤めております。皆様、会いに行けるようでしたら千葉のカフェでお待ちしております。ただ……必ず会えるかどうかは何とも。やはり毎日ずっと勤めるのは身体がつらいのだとか」
とか話したために身元特定に一役買った。
なんといっても
ボイスが20万ダウンロードを突破する事態になった。
高校の有名人として騒がれることになり、親の税収を超えてしまったことで怒られる羽目にもなった。
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