第14話 1歩を踏み出す
何度考えたとしても
やはり王位継承権を持つ者が二人ではなく一人であればもう争いなど起こらないのだから。
だが、誰も放棄などさせてくれない。
ならば、私が選択出来るのはこの道だけなのだ。
部屋の扉を開けひっそりとした暗闇の廊下を進む。
目的地は行き慣れた所だ。
きっと目を閉じていても辿り着ける。
「…みんなに謝らないといけないなぁ。
せっかく、私の王位を願ってくれていたのに。」
真っ直ぐな廊下の先の長い階段を上る。
少し肌寒いような気がして腕を擦った。
口から出るのは後悔の言葉。
思い返すセカイに涙が溢れる。
誰も信じれず、全てが色褪せていた世界。
それがたった数人との出会いでこんなにも色付いて
とても離れがたいものへと変わっていた。
「ごめん、ごめんなさい。」
聞いてほしかった訳じゃない。
でも、誰かに、きっとあの人たちに謝りたいと思った。
ずっと傍で
私を護ってくれた人
励ましてくれた人
心配してくれた人
笑顔にしてくれた人
「…お礼が、出来なかったなぁ…」
進む足取りは重い。
でも、立ち止まる訳にはいかない。
この先の場所で待ち受けるのが、私のおわりだとしても。
鍵の掛かった重たい扉。
鍵は王宮の守衛室で厳重に守られている。
だけれど、私はこの扉の開け方を知っている。
昔、姉上がまだ穏やかに笑ってくれていた頃に
「これは、誰にも話してはいけないよ。
限られた人しかここへは入ってはいけないから。」
と話し、教えてくれた。
重たい扉を少し手前に引き、一度上へ持ち上げながら再度引く。
その時、カチャンと静かな音が鳴ればもうすぐ開く合図。
左右の扉を
右側は上に
左側は下へ動かす。
するとガチャンッ!
と短く鈍い音が響く。
扉は開いた。
あとは進むだけだ。
ここで私の世界が途絶えても跡を継ぐものがいる。
だから、踏み出すんだ。
そうして重たい一歩を踏み出した私は気づかなかった。
その様子を冷やかに見ていた存在に。
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