第11話 初めての友人との出会い
ー出会いは10年前ー
私がまだ8歳、そうカムラ姉上が母親を亡くした時と
同じ齢になったころだった。
「君がカムラの妹のアモル姫、かな?」
声をかけてきたのはすこし大人びた少年だった。
腰ほどまで伸びた髪を編み1つにまとめて歩いてきた。
一瞬少女かと思ったが、その声は明らかに自分のそれより低く響いていた。
「…貴方は、誰ですか。」
幼かった私には、声をわざわざかけてくるのは侍従か私を取り込みたい貴族か、その2つだった。
だが、どちらとも取れないその人物に対し私は少し尖った言い方をしてしまったのだろう。
その少年は、少し戸惑ったようにはにかみこう続けた。
「次期皇帝候補は中々に対称的なんだな。」
右手を差し出しながら
「俺はカムラの騎士のティラノ。たまに会うこともあるだろうからよろしく。」
正直なところ戸惑ったのは私の方だ。
この国のなかで皇帝候補にただ手を差し伸べることなどあり得ない。
片膝を着く、頭を垂れる
それらを伴わない握手など経験がない。
そして、それらには必ず裏がある。自分への利権や上位者からの恩情。
それの見返りとして手を差し出すのだから。
「……。」
呆気にとられ動かない私を不思議に思ったのか少年、ティラノは続けた。
「いや、対称的というよりは君の方が素直、なのかな?」と
「多くの思惑をみて、多くの争いに巻き込まれ
それでも自分を守るために、自分の感情に素直になったんだろうな。」
少しだけ悲しそうにもみえるそのはにかんだ笑顔。
その瞳は私ではない誰かを写しているようだった。
ここにはいない誰かを。
「それくらいにしてちょうだい。私の大切な妹をからかわないで、ティラノ。」
聞き慣れた穏やかな声。
ティラノから視線を後ろへ動かすと、伝統礼装に身を包んだ姉上の姿があった。
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