第9話 誓約

 私は母上の反応を待った。

この場で正式なレ・ワイズ様の誓約を知っているのは

母上と父上だけだから。

その子は親からそれを聞き伝えていく。

 

「…そんなことが、あるはずは…」

 

「ククルス。あれはレ・ワイズの誓約だ。そして、ハイドは私の……。

私とレ・ワイズの息子だよ。」

 

今までの口を挟まなかった父上が話始める。


「黙っていたのは悪かったと思う。

ただ、これは僕達の未来の為に必要な…」


「五月蝿いわね。」


母は父の言葉を遮った。

とても冷たく淡々と。

先程までの狼狽えた様子など微塵も感じさせない声で。


「それで?ハイド皇太子はどうしたいの。」

 

母は父を一切視界に入れない。


「貴方もこの王位継承権を巡る旅に」


「いえ、私は王位継承権を放棄します。

その上でマタル家次期当主として

この旅への同行を認めて頂きたい。」


 そんな母の

 皇帝の言葉を遮ってハイドは力強くそう紡いだ。


「継承権を放棄するのであれば貴方はただの騎士。

…好きにすると良いでしょう。」


眉間に皺を寄せ、深いため息の後


「では、旅立つ王位継承権を持つものは

カムラとアモルの2名。


そしてカムラを支持する者は起立を。」


そう声が掛かると

直ぐに周囲の椅子がカタカタと音を立てた。

 

「トロイ、ハスグラッジ、ティラノ、ブレイク、マタルそして……ハイド。」

 5名の騎士と元皇子はは第一皇女カムラを次期皇帝に推薦している。

 

「では、ヴァールハイト、ボノス、ロバール、リューゲ、ナーダはアモルの支持ですね。」

 

皇帝は事務的に話を進め事を終えた。

 

そして、もう何も話す事は無いと

言うかのようにこの会場から姿を消した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る