第6話 争いの火種

 重たい扉を開けるボノス。


そこに連なる様に六人の騎士

私、そして残りの四人の騎士の順に

第三会議場 騎士の間へと足を踏み入れた。


 いつもなら、ただ和やかに騎士様とテーブルを囲み

紅茶とお菓子を嗜みながら

ただ穏やかに各々の任務や日常について話を交えるだけ。


そう思っていたのに、今日は違っていた。

 

室内は静寂に包まれていた。

座した私の異母姉である第一皇女カムラ・インズ・アレティと

父でありこの国の政務官を務めるピジョン・インズ・アレティ


自身の席へと黙々と向かう騎士達。

誰一人として口を開こうとはしない。

 

各々の席に着き、ただ一人の登壇を待ち続けている。

 

その一人は未だ空席。

 

いつもであれば

 

用意されていない座席。

 

その席があること

ここに私達家族が揃っている事が

 

これが王位継承に関することだと私だけでなく

ここにいる全員に知らせていた。

 

 静寂に堪えきれず

隣に座る姉上を見ようと顔を上げると

 

ギィィィィィィ…


鈍く低く重苦しい音をたてながら後ろの扉が開いた。

 

「ふむ、全員揃っていますね?」

 

ただ淡々とその人物は口を開いた。

 

現女帝

全てを呑み込まんとする漆黒の長髪を高い位置で一つに纏め

肌を殆ど露出させない深い蒼の長いドレスを翻し歩く。


その首もとには現皇帝が身に付けるには

少しばかり質素にも思える紅い宝石が1つのみ。


それは暗く輝きながらも

女帝の肌の白さがその紅き宝石を一際目立たせていた。

 

(あれが皇帝の証。歴代の皇帝が引き継いできた宝玉)


 ふと首飾りが気になった。

母上は昔からあの首飾りをしていた。


皇帝の座についてからは

あの紅い宝石がついてはいたがそれまでは宝石は無くただの首飾りだったのだ。


(…そういえば姉上も…)


ふと思いだし正面の母上から、左隣の姉上を見る。


「まだ、時間はある、はず」


姉上は首もとを押さえていた。

そこには母上とは少し模様の違う首飾り、宝石の無い首飾りがあった。


「私からは1つだけ。私は次期皇帝にシャワーズを推薦しています。

ただ半数以上の騎士方はそれに反対の姿勢をとられているとのこと。

このまま話し合いでは平行線。そこで」


(…姉上が言っていた通り…。)


会場に入る前、姉上はこっそりと話していた。

 

恐らく母上が来ること。

この会合は王位継承争いに発展するということ。


そしてきっと、私たちが2つに別れるだろうという事を。


「政務官ピジョンより提案を受けました。

二人の王女にある目的の元旅にでてもらい

目的を果たし国民から支持を得られた方を皇帝の座を継承します。」

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