メイキング②

 四泊五日の旅、お疲れ様でした。

 それから、撮影に協力してくれてありがとう。

 とうちゃんは、今回の撮影を振り返ってみてどうだった? 感想とか聞かせてくれるとうれしいな。

「そうね……ありきたりな言葉になってしまうけれど、とまたこうして、たくさん会話ができて……とても楽しい撮影と旅行だったわ」

 へへへ……ありがとう。アタシも楽しかったよ。

 ところでさ、結局、藤佳ちゃんがついたウソってなんだったの?

「ふふふ……全てを明かしてしまうのは面白くないから一つだけ……真理乃との仲を引き裂いてきた人達に対する感情は嘘だと、言っておくわ。“恨んでいる”なんて全くの嘘。真理乃とまた、再会できる自信はあったもの」

 へへっ……そこはなんとなく、なんじゃないかなと思ってた。

 あとは……アタシに何度も会いに来ようとしていたってのもウソだよね? 再会できる自信はあったと、言っているくらいだからさ。

「ふふっ……それはどうかしらね?」

 あはは……藤佳ちゃんのその感じも結構、好きだな。

「ありがと。私も好きよ、真理乃の全てが」

 も~……藤佳ちゃんって、そういうことも案外さらりと言うよね……まぁ、そんなところも、好きだけど。

「ふふふ……」

 へへへ……

 さてと、イチャイチャは一旦、このくらいにして……最後の仕上げを始めるね。

「えぇ、後は真理乃にお任せするわ」



 ……お母様、お父様、おばあ様、くん、最後まで見てくれてありがとう。

 正直、これが優秀賞に選ばれるとは思っていないし、そもそも皆があざみ祭に来てくれる訳ないからさ……それぞれに、この映像を送っておくね。まぁ、それでも見ない可能性はあるだろうけど……。

 もし、最後まで見ずに、また、アタシ達の仲を引き裂こうとするなら、それでも構わない。だってそんなことして、後悔するのは皆の方だから……。


 あのね、アタシが記憶を失っている間に、おじいちゃんと藤佳ちゃん、それから彼女のお姉ちゃんも密かに、皆が今まで行った悪事を暴いてくれていたの。証拠もバッチリ揃えてるって。

 それから実は念のため、おじいちゃんの別荘の、階段を始めとした複数個所にね、カメラをこっそり設置していたの。もし、アタシに何かあったら、おじいちゃんにそれらの回収をお願いしていたことも思い出して、カメラの映像を確かめてみたら……バッチリ映ってたよ。くんが、藤佳ちゃんを突き落とした瞬間が……。

 ……別にね、その証拠の数々を今すぐ、警察に持って行くなんてことはしないよ? 一応、皆に、感謝していることもあるしさ。

 けれどまた、藤佳ちゃんに何かしたら……その時は分かっているよね?


 最後に、この映像を撮影しようと思った、本当の理由を教えてあげる。

 これはね……アタシ流の、意思の主張と、ちょっとした復讐みたいなものだよ。アタシと藤佳ちゃんを陥れた人達に対する、ね。

 これを見て、少しでも理解してくれていたらうれしいな。アタシの、藤佳ちゃんへの想いや、お母様達に味わわされた、苦しみをさ……ううん、やっぱり別に理解してくれなくてもいいや。

 けれど……二度と、アタシの夢のジャマしないで。藤佳ちゃんと、彼女の大切な人達を傷つけるようなまねはやめて。

 もし次に同じようなことをしたら……アタシは絶対に、アナタ達を許さない。











 …………なんてね。

 皆を悪役に仕立てて、ごめんなさい。


 冒頭のメイキングで、“ほぼアドリブの、ノンフィクション風ドラマ”だと説明したけど、本当はここまで大体のシナリオはあったの。冒頭と、このメイキングも含めて、一つの物語なんだ。


 あ! でもね、アタシが四つ、藤佳ちゃんは三つのウソをつくっていうのは、シナリオに含まれていないんだ。本当に、当日までどんなウソをつくのか互いに分からない、完全なアドリブ部分なの。

 これを見てくれた人達に向けて、謎解き要素的なものを入れられたら、楽しいかな~と思ってさ。

 答えはあえて明かさないでおくから、アナタなりの、嘘と真実を見つけてね。



 あ、でも……お母様達は全部、分かっちゃうよね?


 何が本当で、何が嘘なのか。




 七日間のノンフィクション【END】

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七日間のノンフィクション 双瀬桔梗 @hutasekikyo_mozikaki

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