第23話 20週目
今日は通院の日でないけれど、俺はちょっぴりオシャレをして彼女の病室へ向かっていた。手に持ったスーパーの袋には、グミではなくケーキが入っている。俺が病院に着くころには日が沈み、街は赤と緑にライトアップされていた。そう、今日はクリスマスイブなのである。
「こんばんわ~」
俺が病室へ入ると、サンタの赤い帽子を被った叶汰が立っていて俺は吹き出した。
「ちょ、笑うなよ~」
「お兄ちゃん、この帽子すごい似合いますよね」
「本当は陽介に被せるために持ってきたのに」
そう言って叶汰は口を尖らせた。
「俺よりも叶汰のが似合うよ絶対」
笑いながら俺がそう言うと叶汰はより不服そうな顔をした。
「もう! こうなったら力づくでお前に被せてやる!」
叶汰はいたずらっ子な顔で俺に襲い掛かってきた。俺らは平和過ぎる取っ組み合いをした。
「落ち着いてください、ほら、陽介さんが持ってきてくれたケーキ食べましょ!」
俺らはぴたっと動きを止めて椅子に座った。広崎さんはビニール袋の中を覗くと目を丸くした。
「フルーツタルト!」
「ショートケーキが2つしかなくて、1つはフルーツタルトなんです」
「私、フルーツタルトめっちゃ好きなんです!」
「そうなんですか! なら良かったです」
そんな俺たちの会話を見て叶汰が
「ひゅーひゅー! 良いカップルだな~」
と囃し立ててきた。広崎さんは耳を真っ赤にして
「ほら、ケーキ食べるよ!」
と言った。
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