第10話 7週目
俺はあえて昼ご飯を食べてから家を出た。今日もきっと彼女が野球観戦をするだろうと思ったからだ。あまり人と野球観戦することがなかったから、先週はなんだかとても楽しかった。
彼女の病室を覗くと、やはり彼女は現地にいるかのような姿でテレビを前にしていた。今日は相模シャイニーズと越後ウルフズの第二試合目である。昨日の試合でシャイニーズはウルフズに敗れているから、今日の彼女の応援にはよりいっそう力が入っていた。
「え、うそ、今のはストライクだって!!」
「差し入れ…ここに…」
「ありがとうございます、ってか今それどころじゃ! えっ嘘でしょ!!」
1回表、相模シャイニーズのエース東堂が早速崩れ、ノーアウト満塁から押し出しで一点を許してしまっていた。
「とどっちゃんでも勝てないの? もう終わったじゃん!」
『とどっちゃん』というのは東堂の愛称である。少し丸くて優しい顔をした柔らかいルックスも高い人気を誇っている。彼女が着ているユニフォームには『TODO』と書かれているから、彼女も『とどっちゃん』ファンの一人なのだろう。
「まだ1回表です。諦めるのは早いですよ」
俺はそう言って頭を抱える彼女の隣に座った。
「とどっちゃんが押し出しなんてもうダメですよ! 今日は負けましたね」
ファンの勘は意外と当たるもので、1回表に東堂が崩れ9失点をし、その点差が縮まることなく試合は終わった。
「今日の試合はなーんも面白くありませんでしたー」
「そう言う割には最後まで楽しそうでしたけど?」
俺はむくれる彼女を横目にそう言った。
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