第9話 6週目
今日は昼ご飯を食べてから病院へ行ったから、彼女の病室に着いたのは17時頃のことだった。
彼女の病室の前に立つと、何やら中が騒がしく、何かあったのかもしれない、と心配になった。
「だ、大丈夫ですか!」
俺がドアを力強く開けると、彼女は驚いてメガホンを持った手を挙げた。
「はっ! えっと、大丈夫です」
テレビからは「打ったー!!」という実況の声が聞こえた。
「えっ? 嘘! 打たれた!? 勝ち越しされた!? うそ〜〜」
実況の声と共に彼女は頭を抱えた。テレビではプロ野球の中継が流れていた。彼女は『シャイニーズ』と書かれたユニフォームを着ていた。相模シャイニーズのファンなのだろう。テレビを覗くと、9回表、相模シャイニーズが、四万十サニーズにツーランホームランを打たれ、勝ち越しされた映像が流れていた。
「大丈夫じゃ、なさそうですね」
「大丈夫じゃないですよ! あ〜もう! 9回表に勝ち越しされるといっつも負けるんです! もう終わった〜〜!」
彼女はもうお手上げというようにさっきまで起こしていた体を倒した。
「1点差じゃわかりませんよ。四万十サニーズはめちゃくちゃサヨナラ負けしてるんですから。もう少し打って欲しいところです」
俺は彼女を横目にそう言った。
「もしかして、四万十サニーズの…」
「残念ながらそうなんです」
「うわ〜〜余計に悔しい」
彼女は唇を尖らせた。
「まだ勝負が決まったわけじゃないですから」
俺らは中継を見続けたが、結局白星は四万十サニーズについた。
「次は絶対勝ちますから。覚悟しといてくださいね?」
「望むところです」
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