第8話 5週目
9月に入り冷ややかな風が吹く中、太陽はまだ弱まることを知らない。今年の夏は長引きそうだ。でも、俺は彼女の病室で難を逃れていた。
「あ、そういえば、広崎さんってサーフィン上手いんですね」
先週、彼女の父について調べているとき、彼女の経歴もたまたま見つけてしまった。
「あー一応国の育成選手でしたねー。病気になってからはサーフィン出来なくなっちゃいましたけど」
父は日本代表で、娘は国の育成選手…すごすぎる親子だな…
俺が感動していると、
「陽介さんはどうして野球を?」
と彼女が聞いてきた。
「小学校の頃、友達とよくキャッチボールして遊んでて。そしたら、地元で野球チームやってるおじさんに声掛けられて。友達とそのチームに入ることにしたんです」
頷く彼女に促されるように俺は話を進めた。
「中学入って、野球部に入って、そいつとバッテリーを組むようになったんです。俺がピッチャーで、友達がキャッチャー」
それを聞くと彼女は口を横に伸ばして笑った。
「そのキャッチャーやってた友達が、私のお兄ちゃん。ですよね?」
「えっなんでそれを…」
「えっと、お兄ちゃんから聞いたんです」
彼女は俺らが喧嘩したことも知っていたけれど、喧嘩した相手である俺のことを彼女に話すなんて少し気味が悪いなと思った。
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