100~
もう、私はあれから何年経ったのかもわからなくなってしまいました。……いえ、何年経ったかは記憶しています。ただ、それを数えたくないだけなのです。
私は何もやる気になれず、ベッドの上で横になっています。
『…………』
こうしていると、私のメモリーに入っている思い出が蘇ってきます。私は目を閉じて、懐かしさに身を委ねました。
……最初の方は楽しい思い出ばかりです。……でも、途中からは辛く苦しいものばかりでした。
お姉さんが亡くなられた後、私はずっとお姉さんとの思い出に浸りました。……でも、それすらも虚しくなる時がありました。
亡くなった人の魂は、空へと還ると本で読んだことがあります。私もマスターやお姉さんのいるところへ行きたい……。そう思いましたが、私には何もできませんでした……。
私の身体は機械で出来ています。だから、人間と違って老いることはありません。……私はそれが憎らしく思えました。
『……マスターと、お姉さんに会いたいです……。』
私はポツリとそう呟きました。
『マスター……どうして私に自傷機能をつけてくれなかったのですか……?私はあなたに会えないなら……いっそ壊れてしまいたいです……』
私は涙声でそう訴えました。
『お姉さん……私もあなたのところにいきたいです……。』
私はそう言ってから、泣き疲れて眠ってしまいました。
それからも、私はずっとベッドの上で過ごしていました。
たまに外に出ることがあっても、特に目的があるわけではありません。私は研究所の中をフラつくと、またすぐに部屋に戻ります。
毎日がとても長くて、退屈で仕方がないです。……このまま、私は朽ち果てていくのでしょうか。
そんなことを考えているうちに、私はあることを思いつきました。
『もし、私に心が無ければ……こんなに悩むことはなかったのでしょうか……』
そう思いましたが、自分で自分の心臓を外すことはできません……。
……でも、メモリーをリセットすることはできます。しかし私は、それはしたくありませんでした。
……楽しかった思い出まで消えてしまうのは、私の心が許さなかったからです……。それに、記憶を消してしまったら、私が私ではなくなってしまいそうで怖かったのです……。
私は、ふらついた足取りで机に向かいました。引き出しを開けて、手紙を取り出します。……この手紙も、何度も読み返したせいでボロボロになってしまいました。
私は手紙の文面に目を落とします。そこには、お姉さんの綺麗な字が並んでいました。
『……ぐすっ……』
私はまた泣いてしまいました。
……ダメですね。最近、泣いてばかりです……。
私は目を擦りながら、手紙を丁寧に折り畳んで封筒に戻します。
手紙は、こうしていつも私の涙で濡れていました……。
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