80

 80年目の誕生日。


 ……私は少し胸騒ぎを感じていました。

 なぜなら、数年前からお姉さんからの手紙が届かなくなっていたからです。70年目の誕生日以降、お姉さんは毎年手紙を送ってくれていたのに……。

 私は不安に思いましたが、いつかお姉さんが言っていたことを思い出しました。


 ──「私からの手紙が来なくなったら、アルバムの一番後ろを見てちょうだい」──



『……どういう意味なのでしょう……?』


 私は疑問に思っていましたが、とりあえず言われた通りにすることにしました。

 すると、そこには1通の手紙が挟まっていました。


《ナナシちゃん。あなたは今頃何をしているのかしら?》


 お姉さんからのメッセージに、私はホッとして息を吐きます。


《この手紙を読んでいるということは、あなたはきっと誕生日を迎えたのよね?おめでとう!》


 私は嬉しくて、つい微笑みを浮かべてしまいます。


『ありがとうございます……。お姉さん』


 私はそう呟きながら、続きを読みました。



《でも、ごめんなさい……。私からの手紙が来なくなったということは、もう私はこの世にはいないのでしょう》


『そんな……』


 私はショックのあまりに、言葉を失ってしまいました。


《……あなたには、辛い思いをさせてしまうわね。でも、あなたには生きていて欲しいのよ。……私の分まで、精一杯生き抜いて欲しいわ》


『お姉さん……。』


 私は泣きそうになってしまいました。


《……でも、大丈夫よ!あなたは強い子だから!……いつも見守っています。親愛なる妹よ……!どうか強く生きるのです!》


 ……お姉さんらしい、励ましの言葉です。……でも……。でも……。……でも……っ!!!


『……うぅっ……!』


 ……我慢していたけれど、ついに私は泣いてしまいました。……こんな時でも、やっぱり悲しいものは悲しいんです……っ。


『お姉さん……。私はこれからどうやって生きたらいいんですかぁっ……!!』


 私はそう叫びました。……でも、もちろん返事は返ってきません……。


『お姉さん……。会いたいです……。お姉さんに会いたいです……っ』


 私は涙を流しながら、ずっとそう言い続けました。……お姉さんのいない世界なんて、私には考えられませんでした。

 私の心臓は、マスターが亡くなったと知った時と同じように……いえ、さらに強く痛みました。……痛くて、苦しくて、辛かったのです……。


『ううっ……ぐすっ……』


 私は嗚咽を漏らしながら、お姉さんの言葉を胸に刻み込みます。


『お姉さん……。わかりました……。私は前を向いていきます……!だから見ていて下さいね……。お姉さんの分も頑張っていきますから……っ』


 私は、そう決心しました。

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