40

 40年目の誕生日が来ました。今日はお姉さんが研究所に来てくれました。


「ナナシちゃ~ん!会いたかったわ~!」


 彼女は、会ったとたんに私に抱きついてきました。


『お、お姉さん……。苦しいです……。』


「あら、ごめんなさい……。でも、あなたに久しぶりに会えて嬉しくなっちゃって……」


『そう言ってもらえるのは、嬉しいですけど……。ちょっと加減をしてほしいです……』


「あははっ……。そうよね……。気をつけるわ……」


 そう言ったものの、お姉さんはすぐにまた私に抱きつきました。


「やっぱり我慢できないわ……!だって、あなたってば可愛いんだもの……!」


『もう……。仕方のない人ですね……』


 私は呆れつつも、お姉さんを受け入れました。



 しばらく抱きしめ合った後、お姉さんは離れました。


「さてと……。プレゼントを持ってきたから、受け取ってくれるかしら……?」


『はい。ありがとうございます……!』


 私はお姉さんから、プレゼントを受け取りました。


「開けてみてもいいわよ……!」


 言われた通りに包装を剥がすと、中には可愛らしい猫のぬいぐるみが入っていました。


『わぁ……可愛い……!ありがとうございます……!!』


「ふふん!そうでしょそうでしょ!!自信作なんだから……!」


 お姉さんは得意げに胸を張っています。


『大切にしますね……!』


「ふふっ……ありがとう。……うちの子は男の子だからさ、こういうのをプレゼントしても喜ばないのよ。それに、もう17歳だしね……」


 少し寂しそうな声で呟くお姉さんに、私は『そうですか……』と答えることしかできませんでした。


「まぁ、でも……私も50歳かぁ……。歳をとるわけだわ……。あっという間ね……」


『そうですね……。お姉さんは、ずっと若々しく見えますけど……。でも、無理はよくありませんよ……?』


 私が心配してそう言うと、お姉さんは苦笑しました。


「うん……。わかってる……。パパが亡くなったのも、このくらいの歳だったものね……」



 ……そういえば、マスターもそうでした。人間というのは不思議です。年齢を重ねるごとに、寿命が短くなっていくのですから……。


「その点、ナナシちゃんはいいわよね~!なにせ、ずっと若いままだもの!」


 お姉さんは羨ましそうな目でこちらを見ています。

 ……私はマスターにグレードアップされてから、ずっと15歳のボディのままです。


『……そうでしょうか』


 私は首を傾げました。


「そうよ!少なくとも、私はそう思うわ!」


 お姉さんは力強く断言しました。



 それから、私はお姉さんといろんな話をしました。私の知らない外の世界のことや、家族のこと……。


 お姉さんの話を聞いているだけで、私は幸せでした。

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