19

 19年目。この年はミカさんと電話でやりとりしました。


 彼女は、この研究所に来るのが難しいとのことだったので、電話番号を教えてもらっていたのです。ちなみに私は、研究所の電話を使っています。


《ナナシちゃん、誕生日おめでとう!……19歳だっけ?》


『はい。おかげさまで、元気にやっています』


 私は、お姉さんとの会話がとても楽しく感じていました。


《よかった!……でも、ごめんね。そっちに行けなくて……》


 そう言うお姉さんの声は、どこか沈んでいるように聞こえました。


『いえ、気にしないでください……。お仕事が大変なのでしょう?』


 私はできるだけ明るい声で答えます。


《ええ……。でもね、私だってあなたに会いたいのよ。あなたの誕生日なのに、祝えないのは悔しいの……。……ねぇ、ナナシちゃん。寂しくない……?》


 ……私は、返答に困ってしまいました。確かに私は、お姉さんと会えなくてとても寂しかったんです。

 でも、それを正直に伝えるのは、恥ずかしくてできませんでした。



『……大丈夫ですよ』


 私は嘘をつくことにしました。……すると、お姉さんは悲しそうな声を出します。


《……本当?無理してない?》


『はいっ!』


 私は明るく振る舞います。


《……。わかったわ!私も頑張らないとね!……あ、それとさ!プレゼントは届いたかしら?今日届くように、手配したのだけど……》


 お姉さんの言葉を聞いて、私はハッとしました。……確か、荷物が届いていたはずです


『は、はいっ!届きましたよ』


 私は慌てて返事をします。


《ふふっ!なら良かった!ねぇ、開けてみて!気に入ってくれるといいんだけど……》



 私は箱を開封します。……そして、中身を取り出すと、私は驚きのあまり固まってしまいました。


『こ、これは……』


 中に入っていたのは、お姉さんが作ってくれた服でした。


《どうかしら……?前にあげたのは既製品だったけど……。今度のは私なりに頑張って作ったのよ!あなたが着ているところ、見てみたいな〜!……あ、写真送れるよね!?見たい!お願い!……ダメ……?》


『え、えっと……』


 私はどうしようか迷いました。……でも、断る理由は特にありません。


『……わかりました!後で写真を撮って、送りますね……!』


《やった……!約束よ!絶対だからね!……それじゃあ、また連絡するわね!バイバーイ!》


『は、はい!さようなら……』


 私は通話を切りました。



『ふぅ……。さて、着替えてみましょうか……』


 私は、もらった服を着ることに決めました。


『……どうでしょうか?』


 私は姿見で自分の姿を確認してから、お姉さんに送りました。

 お姉さんからの返信はすぐに来ました。


〈すっごく可愛い!!さすが、私の妹ね!!〉


『……ふふっ』


 私は嬉しさのあまり微笑んでしまいます。


 ……お世辞だとわかっていても、やはり嬉しいものでした。

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