17

 私の17歳の誕生日にも、ミカさんは来てくれました。


「ナナシちゃん、おめでとう!これ、プレゼントよ!」


『ミカさん、ありがとうございます……!』


 私は彼女から包みを受け取ります。中には綺麗な髪飾りが入っていました。


「それね、私が作ったんだ~」


 ……ミカさんはとても器用な方なようです。マスターに似たのでしょう。

 私のために作ってくれたなんて……。私は申し訳なくなってきます。


「気にしないでいいのよ?私が好きで作っただけだから!それに……」


『?』



「きっと、パパも喜んでくれると思うの!だって……」


 ミカさんは私の手を取ります。


「あなたがこの先どんな道を選ぼうとも、パパとの思い出が消えることはないでしょう?」



『……っ!!』


 ……私は、何も言えませんでした。


「パパはね、あなたのことをずっと愛していたわ。私なんかよりも、あなたを愛していたの……。それは、あなたが一番よくわかっているはずよね……?」


『……はい』


「パパはね、あなたを作ってから、明るい顔をするようになってきたんだよ……。あなたと一緒にいる時のパパは、本当に楽しそうだった……」


 ミカさんは優しく微笑みました。


「……あなたは、パパの希望そのものなんだ。あなたがこれからどう生きていくのか、楽しみにしているわ」


『はいっ!!』


 私は、マスターの分も精一杯生きていこうと心に誓いました。



「……さて!早速、髪飾りを付けてあげるわ!じっとしててね〜」


 ミカさんは慣れた様子で髪を結ってくれました。


「ふふっ……。こうしてると、本当の姉妹みたいね」


『姉妹……』


 私は彼女の言葉を聞いて、以前マスターが言っていた言葉を思い出しました。



 ──「君が生まれるずっと前から、ミカは僕の家族なんだ。だから、ナナシのお姉さんってことになるのかな?」──



 ……私は、ミカさんのことをお姉さんと呼びたいと思いました。


『あの……』


「ん?」



『お、おねえ……さん……』


 私は恥ずかしくなって、ミカさんから目を逸らしてしまいます。


「……ぷっ!あははっ!!」


『なっ……!なんで笑うのですか!?』


「ごめんなさい、あなたがあまりにも可愛いからつい……。あはははは!!」


『うぅ……』


 私は顔が熱くなるのを感じました。……でも不思議と嫌ではありません。



 ミカさんはひとしきりくつくつと笑い終えてから、私に尋ねました。


「……それで?どうして私をお姉さんって呼んだのかな……?何か理由でもあるの?」


『それは……』


 私は少し迷ってから、こう言いました。



『……私、あなたともっと仲良くなりたかったから……。……ダメでしょうか?』


「……っ!!ああ、もうっ……!!」


 ミカさんは突然、私を強く抱きしめました。


『きゃあっ!?ミ、ミカさん……!?』


「あーもう可愛いなぁっ!私の妹は!」



 ミカさんはそう言って、さらに強く私を抱き締めました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る