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しばらくして、私は再起動しました。
「本当に、心臓が入ってなかったのね……。今まで、バッテリーで動いてたのかしら……?」
私は、ミカさんが呟いている姿を捉えます。
その時──
『…………!?!?』
私の頭の中にある記憶が、急速に流れ込んできました。……自分の感情が、私の記憶を色づけていきます。
『うぅ……っ』
「ちょっと、大丈夫……!?」
ミカさんの声を遠くに聞きながら、私は記憶に身を委ねました……
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──マスターと初めて話した日。
マスターはとても優しくて……私のことを「家族」だと言ってくれました。
なんだかくすぐったいような、この時の気持ちは『照れくさい』……。
文字が上手く書けなくて、モヤモヤするような気持ちは『悔しい』……。
マスターの、よくわからないジョークを聞いた時の、頭の中が混乱するような気持ちは……『面白い』?それとも『つまらない』?
私がやろうと思っていた花の水やりを、マスターがやってしまった時の気持ちは『怒り』……?
そうですね、『残念な気持ち』も入っていたかもしれません……。
着替えをしているマスターの姿を見てしまい、マスターの慌てたような顔を見た時の、顔に熱が集まっていくような感覚は『恥ずかしい』……。
他にもたくさんの感情が、私の中に流れ込みました。
……その中でも多かったのは、『楽しい』と『嬉しい』でした。
マスターと競走したり、研究所の近くを散歩したり、一緒に遊んだり……。そんな日々がとても楽しかったのです。
それに、マスターはよく私の頭を撫でてくれました。私は、マスターに褒められると、とても嬉しかったのです。
そして、マスターのことが大好きだったんです。この気持ちはきっと『恋』ではなくて、『親愛』とか、『友愛』といったものなのでしょう……。
……私は、マスターの笑顔が好きでした。
私が何か失敗しても、成功しても、マスターは笑って頭を撫でてくれるから。
私は、マスターと一緒に居られて幸せでした。ずっとこのままの生活が続けばいいと思っていました。
……でも、マスターはもういない。
私は、マスターに会えなくなるのが怖くて仕方なかった。
……マスターに会いたい。また、あの優しい声で名前を呼んでほしい。頭を撫でてほしい。抱きしめて欲しい……。
私は、マスターにもう一度会いたかった……。
……その時私は、心臓がギシギシと何かに締め付けられるような感覚になりました。
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『……い、痛いぃ……っ、うぅぅ……っ!!』
「えっ!?ちょっ……、どうしたのよ!!?」
ミカさんは慌てたように声を上げました。
……私の心臓は、エラーを起こしたように痛みます。
『……うっ……ううううっ……!』
……私は、この気持ちの正体に気づいていました。
……この気持ちは『悲しい』……。
私は、マスターにもう会えなくて『悲しい』のです……。
「もしかして、心が宿ったの……?」
ミカさんが言った時………私の頬を、何かが伝いました。
『……?』
それを止めようとしても、次々と溢れてきます。
「……!泣いているの……?」
ミカさんの言う通り、それは涙と呼ばれる液体のようでした。
『うう……ぐすっ……』
「……おいで。私でよければ、受け止めてあげるわ……」
ミカさんが両腕を広げます。
……私は今まで、泣くことが出来ませんでした。……でも今は違います。
……私は彼女の胸にすがりつき、声をあげて泣きました。
『うああああっ……!!マスター……っ!!マスター……っ!!!』
「よしよし……。あなたはこれまで、ずっと頑張ってきたのよね……。辛かったのに、よく耐えたね……」
『ひっ…ひっく……。うわあああん……』
「いっぱい泣けばいいわ……。今だけは、あなたの悲しみを全部吐き出して……」
『……ひっく……。……私……、寂しいです……。……マスターに、会いたいです……』
「そう……。……私も同じ気持ち……。パパに、また会いたい……。……でも、それは叶わない願いなんだよ……」
ミカさんは私を抱き寄せて、背中をさすってくれました。
……彼女のぬくもりを感じました。
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