15-1

『……マスター、今日は私が生まれて15年目の記念日ですよ』


 今年で、15年目の誕生日です。……でも、やはりマスターは現れません。



『マスター……。今年で、バージョンアップは終わるって……約束したじゃないですか……』


 私が自分の部屋でうろうろしていると、誰かが入ってきて、声をかけられました。



「……もう、やめてよ!!この、アンドロイド!!」


 声の主は、マスターの娘さんのミカさんでした。私が気づかないうちに、研究所に来ていたようです。


『……ミカさん?』



「パパは、パパは……っ、もう……、いないのよ!!」


 彼女は泣きながら叫びました。私は、その言葉の意味が理解できませんでした。


『どういう……意味ですか?』



「そのままよ!パパは、病気で……2年前に、死んだの!!……私が、22歳の時にっ!……もう、ここにはいないパパを呼ぶのは、やめてよ……っ」


 そう言うと、ミカさんはその場に崩れ落ちました。


 私は、彼女が何を言っているのかわからずに立ち尽くしてしまいました。



「……あなたには、心が無いの?……悲しいとか、思わないの?」


『私は……。私には、感情がありません。悲しみも……喜びも……私には、分かりません……』


「……そう。急に怒鳴ったりして、ごめんなさい……。でも、自分の気持ちがわからないなんて…かわいそうね……」


 ……かわいそう。私は、かわいそうなのでしょうか。……わかりません。



「……そういえば、あなた。パパと、毎年何をやっていたの?いつだったか、私も電話で呼ばれたことがあったけど……」


『……誕生日のお祝いです』


「へぇ……。ねぇ、教えてくれない?あなたの知っている、誕生日のこと」


 ミカさんはそう言って、私に微笑みかけました。……私は、誕生日のことを彼女に話しました。



『誕生日は……。生まれた日を祝うお祭りのようなものだと聞いています』


「そうなんだ……。じゃあさ、誕生日プレゼントってもらったことある?」


 誕生日プレゼント……。私は誕生日に、マスターから新しいパーツをもらっていたことを思い出します。


『ありました。15年経てば、バージョンアップが完了すると、マスターは言っていました』


「バージョンアップ……。……!アレのことかしら……?ちょっと待ってて!」



 そう言うと、ミカさんは部屋を出ていきました。……どこへ行ったのでしょうか。

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