14

 私は、14年目の誕生日を迎えました。


『……』


 この日は、マスターが会いに来てくれると約束していた日です。

 ……マスターはまだ来ていません。


 私は、マスターが来てくれるのを信じて待つことにします。



『マスター……』


 ……それから数時間が経ちましたが、マスターが現れる気配はありません。


 私のことを嫌いになられたのでしょうか?……いえ、そんなはずはありません。

 だって、マスターはずっと、私を大切にしてくれていたのですから。


『……』



 私は、マスターがこれまでに交換してくれたパーツのことを思い出していました。



 まずは、両腕。私はマスターのおかげで、文字を書いたり、細かい作業をすることが上手になりました。

 マスターからもらったノートは、私が書いた文字でいっぱいになりました。ノートをもらえなくなってからは、あまり文字を書くことがなくなってしまいましたが……。



 次に、両足。歩くだけでなく、走ったり、ジャンプしたりすることが得意になりました。

 マスターとは、よく一緒に競走したり、遊んだりしていました。また、背中に乗せると約束しましたよね……。



 口も、バージョンアップしてもらいましたね。喋るのが苦手だった私が、今では普通に話すことが出来るようになりました。これも全部、マスターのおかげですね。



 そして、両耳も……。いろいろな音を聞くことが出来て便利です。遠くの音も聞こえるようになったので、マスターの声や鼓動も聞くことができました。



 また、胴体も交換してもらいました。今では、この身長に慣れましたが、慣れるまではよく頭をぶつけそうになったりしたものです……。



 この鼻も、最初はいろいろな匂いを感じられるようになって、混乱してしまいました。でも今は、すっかり嗅ぎ分けられるようになりました。



 そして、脳のグレードアップ。私はさまざまなことを学習できるようになりました。マスターがくれた本を読むことで、知識を得ることにも役立っています。



 首のパーツの交換は、マスターが喜んでいたことが印象に残っています。首をかしげる動作を、マスターは気に入っていましたね。



 最後に、髪……。髪が長くなったおかげで出来る髪型が増えました。マスターからもらった髪飾りは、今も大切にしています。



『……マスター』


 私は、付けていた髪飾りを手に取り、呟きます。


『マスター……。私を、置いていかないでください……』



 ……この年も、マスターが来ることはありませんでした。

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