13
私が生まれて13年目になりました。
私はもう、自分の誕生日を覚えていられるようになっていました。
……この日は、どれだけ忙しくてもマスターが必ず会いに来てくれる日だから。
私はいつものように、マスターが来るのを待っていました。
……でも、いつまで経ってもマスターは現れません。
『マスター……?』
私は不思議に思っていました。マスターはどうして会いに来てくれないのか……。何かあったのではないか……。
そう考えると、いてもたってもいられず、研究所の外へと飛び出しました。
***
私は研究所の周辺を走り回りました。でも、マスターの姿は見つかりません。
……どこにいるのでしょうか。
『あそこなら……』
私は、研究所の裏にある森へ入りました。
……ここは、マスターが教えてくれた場所です。ここには、たくさんの木の実が生っているそうです。
私は、マスターの言っていた木のところへ行きました。
『マスター……。どこですか』
1人呟きますが……。返事はもちろん返ってこず、ただ風が吹いているだけです。
私は諦めて、研究所に戻ることにしました。
***
研究所の近くまで戻ると、誰かが中へ入っていくのが見えました。
『……!マスター……?』
私は思わず駆け寄りました。でも、そこに居たのはマスターではありませんでした。
「……何?」
『……ミカさん……』
居たのは、マスターの娘さんのミカさんでした。
「あぁ……あなた、パパが作ったアンドロイドね。……まだ動いてたんだ。……何か用?」
『いえ……』
「そう。なら早く、自分の部屋に帰りなさい。……私は今、忙しいの」
『……はい』
……私は大人しく部屋に戻ることにしました。
私は、自分の部屋で考えていました。マスターのこと……。なぜ、会いに来てくれなかったのかを。
……でも、いくら考えても答えは出ません。……仕方ないので、スリープモードに入ることにしました。
***
……次の日の朝も、また次の朝も、マスターは会いに来てくれません。
……マスターは、私に会いに来てくれると言ったのに……。
『……マスター』
……結局その年は、私の身体がバージョンアップされることはなく、マスターに会えることはありませんでした。
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