11

 わたしが生まれて11年目の誕生日を迎えました。この日は、マスターが忙しい中、時間を作って会いに来てくれました。


『マスター、お久しぶりです』


「やあ……!久しぶり……!」


 マスターは疲れた顔をしています。


『お仕事お疲れ様です』


「はは……ありがとう……」


 マスターは力なく笑いました。



「それで、どうだい?最近は……」


『はい。異常ありません』


「そっか……」


『どうされました?マスター』


 マスターが元気が無いように見えますが……。気のせいでしょうか?私が尋ねると、マスターが答えました。


「いや、大丈夫さ……。ちょっと寝不足なだけで……」


『そうでしたか』


「心配かけてごめんよ……」


『いえ』


 マスターが謝ることではありません。私がそう言うと、マスターはまた困ったように笑っていました。



「……あぁ、でもプレゼントはちゃんと用意してあるよ。ほら、首の部品さ。付け替えてあげよう」


『はい。お願いします』


 私がそう言ってうなずくと、マスターは私を休息モードにしました。



 しばらくして、私は目を覚ましました。


「よし……!これでオッケーだよ!」


『はい。ありがとうございます』


 マスターが、新しくしてくれた部品は、以前のものよりも高性能でした。


「前より視野が広がったと思うんだけど、どうだい?」


 ……確かにそうかもしれません。以前よりも、周りがよく見える気がします。


『はい』


「……そうかい!なら良かった!……ちょっとお願いがあるんだけど、いいかな?」



 マスターからのお願い……。何でしょうか。


『はい。どのような内容でしょうか』


「はは……そんなにかしこまらなくてもいいよ。簡単なことさ。……首をこう、傾けてみてくれないか?」


 私はマスターがやって見せたように、真似してみました。すると……。


「そうそう!そんな感じ!……やっぱり、ナナシは可愛いな……」


『え……?』


 ……よく分かりませんが、マスターが嬉しそうにしているので、きっと良いことなのでしょう。



「あぁ、ごめんよ。気にしないでくれ……。ふふっ、可愛い……。………うっ!」


『……!』


 マスターは笑っていたかと思うと、突然胸元を押さえて苦しみ始めました。


「ぐぅ……!あぁ……!……はぁ、はぁ……」


『マスター……!』


「だ、大丈夫……。少し、息苦しくなっただけだよ……。すぐに収まるから……!」


『……わかりました』



 ……マスターは、しばらくすると落ち着きました。


「ごめんよ、心配かけて……。最近こういうことが多くてね……。やっぱり、歳のせいなのかな……」


 マスターは確か、51歳だったはずです。

 ……そういうこともあるのでしょうか。私には、そこまではわかりませんでした。


「じゃあ、そろそろ行くよ……。またね、ナナシ」


 そう言うと、マスターは帰っていきました。

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