10

「ナナシ!今日で出会って10年だね!もうすっかり大人になったね……」


『はい。よろしくお願いします、マスター』



「今年は……。じゃーん!脳のバージョンアップだ!」


 そう言って、マスターは新しいパーツを見せてくれました。


『これは……』


「ナナシの思考速度を上げるためのパーツだよ。これで、もっと複雑な会話ができるはずだ!なんたって、10年記念だからね!」


 マスターは楽しそうに説明しています。


『そうなんですね』


「ナナシがどんなことを話してくれるのか楽しみだよ!」


『はい。期待に応えられるよう頑張ります』


「ふふ……ありがとう」


 マスターは嬉しそうに笑っていました。



「早速作業を始めるから、スリープモードにするね。準備はいいかな」


『はい』


 わたしが再び目を閉じると、マスターは手際良く作業をしてくれました。


「よし……。終わったよ」


『ありがとうございます』


「それじゃあ……。起動させるよ」


『はい』



 は、再び目を開けました。さまざまな知識が、私の頭の中に入ってきました。


「どうだい……?調子は」


『はい。良好です』


「それはよかった!」


 マスターは安心したように笑いました。


「……どうだい?いろんなことを考えられるようになった気分は」



『そうですね……。まだ、うまく整理できていません……。ただ、今までよりずっと多くのことを考えることが出来そうな予感がします』


 私が答えると、マスターはとても満足そうにしていました。


「それは良かった!ナナシがどんどん賢くなっていくのを見るのは楽しいよ!」


『そうですか』


「あぁ!そうだとも!」


 マスターはニコニコと笑いながら、私の頭を撫でてくれました。

 そして、何かを思い付いたような顔をしました。



「……そうだ!これからは、研究所の周りくらいなら、1人で外に出ても良いことにしようか。その方が、ナナシにとってもいいだろうしね!」


『……ありがとうございます』


「はは……いいんだよ。ナナシのためなら、僕は何でもするさ!」



 そう言ってくれるマスターの声は、とても優しく聞こえました。

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