7

 7年目の誕生日は、左耳のパーツを交換することになりました。


「よし!じゃあ、付け替えていくぞ~!」


『ハイ』


 マスターはいつも通り、テキパキとした動きで交換を終えました。



「これで完了だね!調子はどうかな?」


『はい、好調です』


 周りの音が良く聞こえます。

 それに、マスターの鼓動もハッキリと聞こえます。


「良かった良かった!これで、僕も安心だ!君が元気なら、僕も嬉しいよ!」


『ありがとうございます』


「それじゃあ、次は走る練習だ!行くぞ~!」


 マスターは張り切っています。


『ハイ!』



 わたしとマスターは、研究所内を走り回りました。


「はは!良い感じだね!」


『ありがとうございます』


「走るのにも、ずいぶん慣れたみたいだね……。僕はもう、くたくただよ……」


 そう言うマスターの鼓動は速く、息も荒いように見えました。疲れてしまったのかもしれません……。


『マスター、休憩しましょうか』


「そうだね……。ちょっと休もう……。ふぃー……。やっぱり、まだまだ体力不足だなぁ……」



 それから、マスターは壁に寄りかかって座り込みました。わたしは隣に座って、マスターを見つめました。


『マスター』


「うん?どうしたんだい?ナナシ」


『マスターはどうして、そんなに頑張れるのですか』


「う~ん……。それはね……」


 マスターはしばらく考え込んでから、答えてくれました。



「僕は昔から、勉強が好きだったんだ。新しいことを知るのが楽しくて、気付いたら研究者になってたよ……」


『勉強は楽しいのですか?』


 わたしが訊ねると、マスターは優しく微笑みました。


「あぁ、とても楽しいよ。もちろん大変なこともあるけれど……それでも、自分の知らないことを学ぶのはワクワクするよ」


『そうですか……。わたしには理解できそうにありません』


「そうかい……。まぁ、無理にとは言わないよ……。ただ、もし興味があるようなことがあったら、是非やってみてほしいな!」


 そう言って、マスターはわたしの頭を撫でてくれました。


『わたし、文字の練習を頑張りたいです。そして……』


「そして……?」


『いつか、本を読んでみたいと思います。

 わたしは、もっとたくさんのことを知りたいのです』


 わたしが答えると、「そうか……。じゃあ、楽しみにしてるぞ!」と言って、マスターはまた笑ってくれました。


『ハイ、約束します』


 わたしたちは、指切りをしました。

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