5

 ワタシがマスターと出会って、5回目の誕生日を迎えました。


「よーし、今年は口のパーツだぞ!もっと話すのが上手になるはずだからね!」


『ハイ、お願いします』


 マスターは、ワタシを休息モードにしました。

 メンテナンスのためにスリープ状態になるのです。


『……』



 しばらくして、ワタシは目を覚ましました。


「パーツを付け替えたから、喋ってごらん?」


 ワタシは、マスターに言われるまま、口を開きました。


『……マスター、こんにちは。はナナシです』


「おぉ~!前より上手く話せるようになったじゃないか!すごいぞ!ナナシ!」


『……ありがとうございます』


「なぁ……!もう少し、喋ってみてくれよ!」


 マスターが、少し大きな声で言った時、突然部屋の扉が開きました。



「もう!パパ、うるさい!勉強してるんだから、静かにしてよ!」


 入ってきたのは、女の子のようでした。

 わたしはビックリして、固まってしまいました。


「あぁ……ごめんよ、ミカ……。静かにするから……」


「次、うるさくしたら許さないからね!まったく、いつまで経っても子供みたいなんだから……」


「はい……」


 マスターがシュンとなってしまいました。……マスターの子供?この子が……?



 その後、その子は部屋から出ていきました。

 部屋には、わたしとマスターだけが残りました。


『マスター、さっきの人は……』


 わたしが言いかけると、マスターは笑って答えてくれました。


「あの子は僕の娘の……『ミカ』っていうんだ……。今は訳あって別々に暮らしてるんだけど……僕の大切な家族だよ」


 マスターが嬉しそうな顔をしています。

 わたしは黙って話を聴きました。


「君が生まれるずっと前から、ミカは僕の家族なんだ。だから、ナナシのお姉さんってことになるのかな?」


 お姉さん……わたしには、お姉さんがいたのですね……。

 マスターはさらに、話し続けます。


『今は15歳……中学3年生だから、受験勉強で忙しいみたいだけど……」


『受験勉強……ですか?』


「うん……。ここは静かだから、勉強するのに貸してあげてるんだ。でも、頑張ってるみたいだから応援しないとね!」


『……そうですね』


 マスターは楽しそうに話していました。

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