3

 3年目の誕生日は、右足をグレードアップすることになりました。


「ナナシ!今日で3年目だね!3歳ってところかな……?」


『……ハイ。よろしくお願いします、マスター』


「うん、よろしくね!……片足だけでごめんよ。作るのに時間がかかっちゃったから、左足は来年になりそうだ……」


 マスターは申し訳なさそうな顔をします。


『いえ、大丈夫です。気にしないでください』


「……ありがとう。じゃあ、早速付け替えよう!」


『ハイ』


 マスターは、ワタシの足の内部にある部品を交換し始めました。そして、あっという間に取り付けが完了しました。


「はい、これで終わりだよ。どうだい?違和感は無いかな……?」


 マスターの言葉に、ワタシは椅子から立ち上がって、返事をしようとしました。

 ……でも、バランスを崩して転びそうになりました。


「おっと!大丈夫かい!?」


『ハイ、大丈夫です。少し、ふらついただけです』


「そっか……良かった……」


 ワタシが無事だとわかると、マスターは安心した様子を見せました。


「それなら、早速歩く練習をしてみようか。僕につかまって」


 そう言って、マスターはワタシの手を取りました。そして、ゆっくりと歩き出します。


「ゆっくりでいいんだよ。焦らないこと。まずは一歩ずつ、ゆっくり歩こう」


『ハイ』


 それから、ワタシはマスターに手を引かれながら、研究所の中を自由に歩いて回りました。


「うん、良い感じに動けるようになったね」


『ありがとうございます。マスターのお陰です。感謝しています』


「いやいや、君の努力の結果さ。でも、やっぱり練習は、両足揃ってからの方が良かったかな……」


 マスターは、そう言って苦笑いしました。


『……?』


「まぁ、来年は大丈夫さ!来年には、きっと両脚ともバージョンアップできるはずだ!」


『ハイ、待っています』


「うん、僕も頑張らないと!」


 マスターは、右手を握りしめて見せました。


 ワタシも真似して、同じように手を握ってみます。


 すると、マスターは「ははっ!君もやる気満々みたいだね!」と笑ってくれました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る