2

「ナナシ!今日で2年目だね!2歳ってことになるのかな……?僕は42歳になっちゃったけど……」


『……はい。よろしくお願いします、マスター』


 2年目の誕生日を迎えました。

 去年より少しだけ、身体の動きがスムーズになった気がします。


「君は本当に凄いなぁ……。僕も負けてられないや!」


 マスターはそう言って笑いました。


『?』


「よし、それじゃあ今年の分のパーツを取り替えるね!」


 そう言って、マスターが新しいパーツを取り出します。


「今年は左腕の部品にしてみたんだ!」


『……』


「どうかな?」


『……ハイ、問題ありません』


「そうか、よかった……。それじゃあ、文字を書いてみないか?両腕の バージョンアップも済んだことだし……」


 ……文字。見たことがあります。


「ほら、ここにペンがあるから、使ってごらん」


 ……そう言われても、使い方がわかりません。


「えっと、じゃあ、僕の名前を呼んでくれるかい?」


『マスターの名前は、ヒロト、ですね』


「そうだね。じゃあ、僕がお手本を書いてみせるから、それを真似して書いてみるんだ」


『ハイ』


 ワタシが返事をすると、マスターは紙にペンを走らせました。


「これが僕の名前だ」


『……』


 マスターが書いた文字を、見様見真似で書き写してみました。すると、マスターが嬉しそうな顔をします。


「すごいじゃないか!ちゃんと書けてたよ!」


『……ありがとうございます』


「じゃあ、今度は自分で書けるように練習だ!このノートをあげるから、これに好きな字をたくさん書くといい」


『ハイ』


 それからワタシは、毎日マスターと一緒に文字を書く練習をしました。



***

 そして、数ヵ月後。


 文字を書いていたワタシは、マスターから尋ねられました。


「どれどれ、ノートを見せてくれないかな……おぉ!すごく上達したね!もう、ひらがなは完璧なんじゃないかい?」


『はい、マスター。ワタシはひらがななら、ほとんど書けます』


 マスターは、「おお~!やっぱり天才だ!」と言っていました。


 天才……。どういう意味でしょうか?

 ワタシにはよくわかりませんでしたが、マスターが喜んでいたので、良いことなのだろうと思いました。

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